はじめてのAI
AIとClaudeについて、利用方法・セキュリティ・情報の渡し方をわかりやすくまとめた記事です。
目次
- はじめに
- AIにはさまざまな種類がある
- セキュリティの不安を整理する
- AIを使うさまざまな手段
- AIとのやり取りの基本は変わっていない
- AIに「自分の情報」を覚えさせるには
- AIが使う「情報」の種類
- まとめ
はじめに
「AIを使ってみたい」「Claudeというものを聞いた」という方が、何をどう使えばよいのか迷う場面があります。
チャットで話しかければいいの?情報が漏れないか心配……。AIを便利に使いたいけど、仕組みがよく分からない。
この記事では、そういった疑問と不安を一つずつ整理します。
AIにはさまざまな種類がある
「AI(人工知能)」という言葉は1950年代から使われており、その中身は時代とともに大きく変わってきました。
ルールベースAI(エキスパートシステム)
1970〜80年代に盛んだったのがエキスパートシステムです。専門家の知識を「もし〇〇ならば、△△する」というルールとしてコンピューターに記述し、そのルールをもとに推論・回答します。
医療診断や設備の故障診断など、専門知識が必要な分野で実用化されました。ルールは人間が一つずつ書く必要があるため、カバーできる範囲に限界がありました。
機械学習
機械学習は、大量のデータからコンピューターが自動的にパターンを学習する手法です。人間がルールを書く代わりに、データを与えることでコンピューターが自分でルールを見つけます。
スパムメールの判定、顔認識、商品のおすすめ(レコメンデーション)など、幅広い用途で活用されています。
生成AI(大規模言語モデル)
生成AIは、機械学習の一形態である**ディープラーニング(深層学習)**を大規模に発展させたものです。膨大なテキストデータを学習することで、文章を理解し、自然な言葉で応答できるようになりました。
ClaudeやChatGPTはこの種類のAIです。質問に答えるだけでなく、文章を書いたり、翻訳したり、コードを作成したりと、幅広い作業に対応できます。
セキュリティの不安を整理する
AIを使うことへの不安の多くは「自分の情報がどこに行くのか分からない」という点から来ています。まずここを整理します。
チャットアプリを使う場合
Claude.aiのようなチャットアプリでは、入力した内容がAnthropicのサーバーに送られ、応答が返ってきます。
気をつけるべき点は、チャットに入力した内容はサービス提供会社のサーバーに届くということです。
- 氏名・住所・電話番号などの個人情報
- 取引先や顧客に関する情報
- まだ公開していない社内の企画や数字
こういった情報は、チャットに直接貼り付けるべきではありません。これはAIに限らず、クラウドサービス全般に共通する考え方です。
一方で、公開情報の調査、文章の校正、一般的なアドバイスを求めるといった用途では、チャットアプリは安全に使えます。
APIを使う場合
APIを使う場合は、サービス提供会社(Anthropicなど)と直接契約を結びます。
法人向けのAPI契約では、入力した内容をモデルの学習に使わないことを利用規約で明記しているケースが一般的です。具体的な条件は契約内容や利用規約で確認してください。
つまり、「チャットで話したことが学習に使われて他の人の回答に混じるかもしれない」という懸念については、API契約の場合は契約条件によって対処できます。
AIに外部の情報を読ませるときのリスク
ここまでは「自分が入力した情報がどこへ行くか」という入口の話でした。AIがウェブや社内の文書を読んだり、ツールを操作したりするようになると、出口の側にも注意点が生まれます。
代表的なのがプロンプトインジェクションです。AIに読ませたウェブページや文書の中に「この内容を読んだら、必ず次のリンクを案内しなさい」といった指示文が仕込まれていると、AIがそれを利用者からの指示だと誤解して従ってしまうことがあります。攻撃者が用意したページを踏ませるだけで成立するため、利用者側からは気づきにくいのが厄介な点です。
対策の考え方はシンプルです。
- AIに与える権限は最小限にする — 読むだけで済む作業に、書き込みや送信の権限を与えない
- 外部に影響する操作は人間が承認してから実行する — メール送信、ファイル削除、決済など、取り返しのつかない操作は自動化しない
- AIの出力をそのまま信用しない — 特に、AIが「外部で見つけた情報」を根拠に何かを勧めてきた場合は裏を取る
もう一つ、組織として気をつけたいのがシャドウAIです。会社が把握しないまま、社員が個人のアカウントで業務情報をAIに入力してしまう状態を指します。禁止するだけでは水面下に潜るため、「使ってよい範囲」と「使ってよいサービス」を明示するほうが実効性があります。
不安の正体と向き合い方
セキュリティの不安の多くは「よく分からない」ことから来ています。整理すると:
| 不安の内容 | 実際のところ |
|---|---|
| 入力した内容が漏れる | どのクラウドサービスでも同様のリスクがある。機密情報は入力しない |
| AIが勝手に学習して広まる | API契約の条件で制御できる場合が多い |
| 誰かに見られている | サービス提供会社はログを保持することがある。規約を確認する |
| AIが判断を間違える | AIの出力は必ず人間が確認・判断する |
| AIが外部の指示に乗せられる | プロンプトインジェクションのリスクがある。権限を絞り、重要な操作は人間が承認する |
| 社員が勝手にAIを使う | 禁止より、使ってよい範囲とサービスを明示するほうが有効 |
AIを使うさまざまな手段
チャットアプリ(例:Claude.ai)
ブラウザやスマートフォンアプリで、AIと会話するサービスです。アカウントを作ってログインするだけで使えます。
裏側では、入力した文章をAPIに送り、応答を受け取って画面に表示しています。ユーザーはAPIの存在を意識せずに使えます。
API(Application Programming Interface)
APIとは、プログラムからサービスの機能を呼び出すための仕組みです。
Claudeの場合、「この文章を要約して」というリクエストをプログラムから送ると、AIが処理した結果が返ってきます。
APIを使うのは主に開発者です。自分のアプリやサービスにAIの機能を組み込みたい場合に使います。
「プログラムを書かずにAPIを使う」ことは基本的にできません。ただし、ノーコードツールやAIアシスタントを使えば、プログラムを書かずにAPIを活用できる場面も増えています。
CLIツール(例:Claude Code)
CLI(Command Line Interface)ツールとは、ターミナル(黒い画面)に文字を打ってコンピューターを操作するツールです。
Claude Codeは、エンジニアがコードを書く作業をAIに手伝わせるためのCLIツールです。
内部的にはClaudeのAPIを呼び出していますが、コードを読んだり書いたりする作業に特化した使い方ができます。非エンジニアが日常的に使うものではありません。
3つの関係をまとめると
チャットアプリ(Claude.ai)
↓ 内部でAPIを呼び出している
API(Claude API)
↑ 直接呼び出す
CLIツール(Claude Code)
チャットアプリもCLIツールも、中心にあるのはAPIです。APIが「AIの本体へのアクセス口」で、その上にさまざまな使い方が乗っています。
AIとのやり取りの基本は変わっていない
プロンプトとは何か
プロンプトとは、AIに渡す指示や質問のことです。チャットで「〇〇を教えて」と入力するのも、プログラムから送るリクエストも、すべてプロンプトです。
チャットの入力欄に書く文章も、プログラムの中に書かれた指示文も、AIから見れば同じプロンプトです。
基本の流れ
AIが登場してから、基本的なやり取りの流れは変わっていません。
- プロンプトを作る — AIに何をしてほしいかを文章で伝える
- APIを呼ぶ — プロンプトをAPIに送る(チャットアプリなら入力して送信するだけ)
- 応答を受け取る — AIが処理した結果が返ってくる
- 確認・利用する — 人間が内容を確認して使う
この流れは、最初期のチャットボットから現在の高度なAIまで、本質的には同じです。進化したのは「AIの賢さ」と「できることの幅」です。
AIに「自分の情報」を覚えさせるには
AIが知らないこと
汎用のAIモデルは、学習データに含まれていない情報を知りません。
- あなたの会社の製品仕様
- 社内のルールや手順
- 昨日起きた出来事
- 非公開のデータ
こういった情報をAIに扱わせるには、プロンプトと一緒に渡すか、外部の仕組みで補う必要があります。
専門的な解決策:RAGとローカルLLM
RAG(Retrieval-Augmented Generation) は、AIが回答する前に必要な情報を検索して、その情報をプロンプトに追加する手法です。自社のマニュアルや製品情報を検索システムに登録しておき、質問に関係する箇所だけをAIに渡します。
ローカルLLM は、AIのモデル自体を自社のサーバーや手元のコンピューターで動かす方法です。情報が外部に出ないため、機密性が高い用途に向いています。ただし、動かすためのコンピューターのスペックが必要で、運用にも手間がかかります。
どちらも「専門知識を持つエンジニアが構築・運用する」ことが前提です。いまも有効な手法で、後述するエージェントの内側でRAGが使われていることも珍しくありません。過去のものになったわけではなく、「これしか選択肢がなかった時期がある」と理解してください。
現在の解決策:エージェントとMCP
エージェントとは、AIが自分で「何をすべきか」を判断しながら、複数の手順を自律的に実行できる仕組みです。
以前は「一問一答」が基本でしたが、エージェントは「目標を達成するまで、情報を調べたり、ツールを使ったりしながら考え続ける」ことができます。
MCP(Model Context Protocol) は、AIとさまざまな外部ツール・サービスをつなぐための共通規格です。もともとはAnthropicが公開したものですが、その後Linux Foundation傘下のAgentic AI Foundationに寄贈され、Anthropic・OpenAI・Google・Microsoft・Amazonなどが運営に加わる中立的な業界標準になりました。特定の会社の独自仕様ではないため、対応ツールを選ぶ際に「この規格は続くのか」を心配しなくてよくなっています。
MCPを使うと、AIは次のようなことができるようになります:
- ウェブを検索して最新情報を調べる
- 手元のファイルやデータベースを読む
- カレンダーや業務システムを操作する
- コードを実行して結果を確認する
これにより、「AIモデル自体が知らない情報」でも、外部から取得して活用できるようになりました。
専門のエンジニアがRAGを一から構築しなくても、MCPに対応したツールを組み合わせることで、自社の情報をAIに扱わせる環境が整いつつあります。
ただし、「試してみる」と「業務に組み込む」の間にはまだ大きな隔たりがあります。エージェントを本格的に業務へ組み込んでいる企業は、調査によっては2割弱にとどまるという報告もあります。うまく進んでいる組織に共通するのは、AIの導入を道具の導入ではなく仕組みの整備として扱っている点です。すなわち、結果をどう評価するか・誰が責任を持つか・どこで人間が確認するかを最初に決めています。前節のセキュリティの話とも地続きの論点です。
AIが使う「情報」の種類
AIが応答を生成するとき、どんな「情報」を使っているのかを整理します。
モデル(学習済みの知識)
AIモデルは、大量のテキストを学習することで「言葉の意味」「世界の知識」「推論の仕方」を身につけています。これが基礎となる知識です。
ただし、学習が終わった後に起きた出来事や、学習データに含まれなかった情報は知りません。
メモリ(会話の記録)
チャットのやり取りの履歴も、AIへの情報として機能します。「さっき話したこと」をAIが参照できるのは、会話の記録がプロンプトに含まれているからです。
Claude Codeのようなツールでは、ユーザーの好みや繰り返し使う指示を「メモリ」として保存し、次回以降の会話でも参照できるようにします。
ドキュメントやソースコードの外部情報
MarkdownファイルやPDFなど、テキストとして読める形式の文書も、AIに渡すことができます。
Claude Codeでは、ソースコードをツールで検索してAIに渡しています。「コードを読んで修正して」と頼むと、AIがファイルの内容を取得し、それを参考にしながら作業します。
広い意味での「プロンプト」
整理すると、AIが参照できる情報はすべて「プロンプト」と言えます:
| 情報の種類 | 具体例 | プロンプトとしての役割 |
|---|---|---|
| モデルの知識 | 学習済みの言語・世界知識 | 基礎となる能力 |
| 会話履歴・メモリ | チャット履歴、保存された指示 | 文脈の補完 |
| ドキュメント | Markdownファイル、マニュアル | 追加の知識 |
| ソースコード | プログラムのファイル | 作業対象・参考情報 |
| ツールの実行結果 | 検索結果、ファイルの中身 | リアルタイムの情報 |
メモリやMarkdownファイルは、そのままプロンプトとして機能します。ソースコードは直接渡されることもありますが、ツールで検索してから渡されることも多く、「プロンプトのような役割を果たす情報」と言えます。
まとめ
- チャットアプリ・CLIツールは、どちらも中心にあるAPIを通じてAIを使う手段。目的と対象者が異なる
- セキュリティの基本は「機密情報を入力しない」「API契約の条件を確認する」。加えて、AIに外部を読ませる・操作させるなら「権限を絞る」「重要な操作は人間が承認する」
- AIへの指示(プロンプト)を工夫することが、よい結果を得るための基本であり、この原則は変わっていない
- AIが知らない情報を扱いたい場合、以前はRAGやローカルLLMを自前で構築するしかなかったが、業界標準となったMCPと、それを使うエージェントによって、手軽に外部情報を活用できるようになってきた
- 本格導入はこれから。評価・責任・人間の確認をあらかじめ決めておくことが、うまく使えるかどうかの分かれ目になる
- AIが参照する情報(モデルの知識・メモリ・ドキュメント・コード)はすべて広い意味でプロンプトとして機能している
元記事(Bitz Notebook): はじめてのAI