前提
UXとは何ぞや?だった私が(2023年5月受験予定の)UX検定合格を目指し、
シラバスにのっとって勉強した学習記録です📝
- シラバス(出題範囲)
- 推薦図書📚
これは何?
本記事ではUX検定の シラバス(出題範囲)にある、「HCD(人間中心デザイン)」について以下を目的にまとめたものです。
- HCD(人間中心デザイン)の考え方を理解し、実現プロセスを理解する
- HCDとUXの関係性を理解する
対象読者
- HCD・UX未経験者
- UX検定を受験しようと考えている方
目次
- 「HCD」の定義
- 「HCD」の目的・メリット
- 「HCD」のプロセス
- 「HCD」と「UX」の関係性
「HCD」の定義 ~HCDとは?~
以下の3つのベースには人間を中心に捉えたHCD(人間中心設計)という考え方があります。
- ユーザビリティ
- ユーザーエクスペリエンス
- デザイン思考
HCDの定義について学習を進めていくと、いくつかあったのでまとめたものが以下です。
定義者(社) | 定義内容 |
---|---|
ISO9241 | システムの使い方に焦点を当て、人間工学やユーザビリティの知識と技術を適用することにより、インタラクティブシステムをより使いやすくすることを目的とするシステム設計と開発へのアプローチ。引用元 |
ユーザビリティエンジニアリング: ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法 P18参照 | UXの5階層を積み重ねてユーザーが求める製品・サービスを実現するための設計思想のこと。 |
人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 P8,P32参照 | ①利用者の特性や利用実態を明確に把握し、 ②開発関係者が共有できる要求事項の下、 ③ 設計と ④ユーザビリティ評価の連動により、より有効で使いやすい、満足度の高い商品やサービスを提供するための一連の活動プロセスのこと。 |
特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)の定義 | モノ・コトに対して「利用者視点」と「共創」によって、「問題の設定(発見)」と「解決策の探求(創造)」を「繰り返すこと」を中核とした「メソッド(プロセス+手法)」と「マインドセット(心構え・捉え方)」のこと。 引用元 |
HCDの6つの原則 (ISO9241-210)
-
①ユーザーやタスク、環境に対する明確な理解に基づいてデザインする
- 商品やシステムを利用する理由やその状況を含めたユーザー全体を理解すること
-
②設計や開発の期間を通してユーザー(の視点)を取り込む
- 商品やシステムの開発段階からユーザーにフィードバックなどで協力してもらうこと
-
③設計は人間中心的な評価によって駆動され、また洗練される
- 全てのデザインにユーザーが関わり中心となること、ユーザーの声でデザインを洗練させること
-
④プロセスは反復的に行う
- PDCAを繰り返し行い、何度もユーザーから評価を得ること
-
⑤設計はユーザーエクスペリエンスの全体に焦点をあてる
- その商品やシステムを使用したことによって良い経験を得られること、上質な経験ができること
-
⑥設計チームには多様な専門領域の技能と見方を取り込む
- 高い専門性を持つチームで開発を進めること、UXを深く理解したチームであること
人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 P32~33参照
HCDにおける"ユーザー"
ユーザーとは
- 対象ユーザーと呼ぶ場合は、対象ユーザーセグメントであり、一人のユーザーだけでなく同様なユーザーを対象としています。
- 対象は1つのセグメントだけではなく、複数のセグメントを対象とする場合もあります。
- 狭義のユーザーとして、「製品やシステムやサービスの利用によって便益を得る個人またはグループ」と定義することができます。
引用元:「人間中心設計入門編 〜お客様と接する方々へ〜 研修実施の手引き」
HCD-Net,2019
ユーザーの多様性
ユーザーを考える場合に、ユーザーの多様性を考慮する必要があります。
- 特性の多様性
- 年齢、性別、一般的身体特性、人種、性格、知識、技能など
- 志向性に関する多様性
- 文化、宗教、社会的態度、価値態度など
- 対象ユーザーがどのような嗜好や価値観を持っているかなど
- 文化、宗教、社会的態度、価値態度など
- 状況や環境に関する多様性
- 精神状態、一時的状態、経済状態、物理的環境、社会的環境
- ※精神状態 例:早く、安全に使いたい など
- ※一時的状態 例:荷物で片手がふさがっている など
- ※物理的環境 例:狭い、すぐ後ろに人がいる など
- ※社会的環境 例:コンビニエンスストアという社会的な環境
- 精神状態、一時的状態、経済状態、物理的環境、社会的環境
参照元
人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第3章P38
ISO9241-210
HCDとユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインとは
- 多様なユーザーに適合した形で製品・サービス・システムを設計し、それぞれのユーザーが確実いに目標を達成できるようにすること
バリアフリーとの違い
バリアフリーは、既存の製品・サービス・システムに一部の人々にとって利用困難な点が発見された時に、それを除去する形で修正デザインを施す事、つまり「後付けデザイン」のことです。
ユーザビリティとユニバーサルデザイン
項目 | 対象 |
---|---|
ユーザビリティ | 特定ユーザーを対象 |
ユニバーサルデザイン | 多様なユーザーを対象 |
ユーザビリティとユニバーサルデザインはどちらもHCDに含まれる重要な考え方です。
参照元
人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第3章P40
「HCD」の目的・メリット
HCDの目的
ユーザーが効率的・有効的に目的を達成可能にすること
- 「苦い経験」をできるだけ少なくし、「嬉しい経験」を出来るだけ豊かにしようとする設計へのアプローチです。
- 適切な製品やシステムやサービスを提供することによって、ユーザーの目標達成行動をできるだけ直線に近いものにしようとしています。
参照元 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 P32~33参照
HCDのメリット
- ①ユーザーの生産性や組織の作業効率の向上
- ②訓練やサポート費用の削減
- ③アクセシビリティの向上
- ④UXの改善
- ⑤不快感やストレスの緩和
- ⑥ブランドイメージの向上
- ⑦サステナビリティへの貢献
参照元 ISO9241-210
HCDとデザイン
HCDは、ハードウェアの製品、ソフトウェアのインターフェース、システム、サービスなど、どのようなデザイン対象にも活用することができます。
参照元
人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 P9、P30
ISO9241-210
「HCD」のプロセス
HCDの活動は単に順番に行うのではなく、"反復的に" 繰り返していくことで
より使いやすく、より魅力的な製品・サービスの開発を継続的に向上させてゆくことができます。
以下は上記のHCDサイクルの主要な活動を記載しています。
⓪人間中心設計プロセスの計画
具体的にはプロジェクトの目標を考慮して、HCDサイクルを開発プロセスのどの段階に、どのように導入するのかを計画する
①利用状況の把握
利用者の行動とその背景や要因を理解し、明確にする活動
明確にすること | |
---|---|
ユーザーの特性 | 知識や技能、経験、教育、身体的な特徴、クセならびに運動や感覚など |
タスクの詳細 | 目標達成するための行動 |
設備の詳細 | 目標達成に関連したハードウェア・ソフトウェア・材料 |
▼手法
- 定量的手法(アンケートなど)
- ユーザー観察/フィールドワーク
- エスノグラフィ
- ダイアリー法
- インタビュー
- デプスインタビュー
- フォーカスグループインタビュー
- ユーザビリティ評価
②ユーザーの要求事項の明示(分析)
利用状況を体系的に記述し、満たすべき要件を定義する活動
-
②-1:要求分析を行う前に以下を作成し、想定ユーザーとその利用状況を明確にしてチームで共有します。
- ペルソナ
- ジャーニーマップ
- ②-2:利用状況を調査していく中で直感的な仮説を得るので、この仮説をより以下の手法などを使って科学的に分析して整理します。
▼手法
- ブレインストーミング
- KJ法
- ワークモデル
- グランデッドセオリー法
- 品質機能展開
③ユーザーの要求を満たす設計による解決策の作成
②で定義された要件に基づき最適な解決策を生み出す活動
要求事項が整理できて作るべき要件が決まったら、
それを実現するハードウェアやソフトウェア、あるいはサービスなどのイメージを具体化していきます。
この時にある種の“飛躍”が必要となる為、人間を直視した総合科学であるデザインの「発想」が役に立ちます。
▼発想法 一覧
参照元 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第10章 P134~135参照
その他アイデア創出法
-
パターンランゲージ
- 共通言語化によって、誰でもデザイン活動に参加できる。
- 都市デザインに関する知識共有方法。
- 共通言語化によって、誰でもデザイン活動に参加できる。
-
共感的デザイン
- ユーザーの潜在的なニーズを発見するために、現場における観察を行い、利用の背景や環境との関係など非言語的な情報を得るもの。
- 方法
- 異なる分野の専門家複数人で出向いて以下の留意点をもとに観察を行う。
- ①利用のきっかけは何か
- ②ユーザーの環境とどのような相互作用があるか
- ③ユーザーが自分の考えで再発明や再デザインをしていることがあるか
- ④触れる事も見ることもできない製品やシステムはあるか。その特性はどんなものか
- ⑤明確に述べられていないユーザーニーズは何か
- 異なる分野の専門家複数人で出向いて以下の留意点をもとに観察を行う。
- 方法
- ユーザーの潜在的なニーズを発見するために、現場における観察を行い、利用の背景や環境との関係など非言語的な情報を得るもの。
参照元 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第10章 P138参照
-
参加型デザイン
- 主に、設計・デザインプロセスに実ユーザーの参加を求めるアプローチのこと。
- 参加することで、ユーザーの暗黙知を共有しやすくすることを意図している。
- HCDは参加型デザインの一種とも言える。
- コンセプトデザイン、コミュニティ・都市環境の設計、分散処理コンピューターシステムなど様々な分野で応用されている。
- 方法
- ①デザイナが業務を理解する
- ②未来を洞察するためのワークショップ
- ③組織ゲーム(ワークショップを行い、活動計画をまとめる)
- ④アイデアの具体化
- 主に、設計・デザインプロセスに実ユーザーの参加を求めるアプローチのこと。
▼プロトタイピング
設計開発の過程で完成した状態を仮想的に表現した試作物をつくりながら、
最終的な姿を確認したり評価したりしながら、
徐々に機能を作り込んだり、追加したりしていくやり方のこと。
-
ラビットプロトタイピング
- プロトタイピングを高速で回していくやり方の事
-
ペーパープロトタイピング
- 基本的にはラフスケッチやスクリーンショットを操作手順に配置したストーリーボードに似たもの。
- 特徴
- a.ソフトウェアのコンセプトを表現するだけでなく、インタラクションの適切さを評価確認する
- b.したがって代表的な画面だけでなく、ユーザーの個別の操作に対応して表示される一連の画面を再現する
- c.作成した一連のが面を使い、実際のユーザーを使ったユーザビリティテストを行って、評価確認する。問題点が発見されたらそれを改善し、bに戻る。
引用元 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第10章 P143参照
- 特徴
- 基本的にはラフスケッチやスクリーンショットを操作手順に配置したストーリーボードに似たもの。
④要求事項に対する設計の評価
つくった成果物を要求事項に照らして評価し、当初定義した利用者の要求を満たしているか?を確認すること。
※成果物・・・文章、スケッチ、プロタイプや試作品などの視覚化したデザイン案
満たしていれば「要求事項へ適合している」こととなり、実装に移す事ができます。
▼デザイン評価の視点
引用元 人間中心設計入門(HCDライブラリー第0巻 第11章 P157参照
▼デザイン評価をする段階
「HCD」と「UX」の関係性
HCD
- 目指すもの
- ユーザビリティの向上
- どういう概念か
- 利用者の観点で、使いやすくするものづくりのための概念
UX
- 目指すもの
- ユーザビリティを越えた顧客の「成功」
- どういう概念か
-
付加価値の高い「体験」を設計するための概念
- UXの定義についてまとめた記事はコチラ
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付加価値の高い「体験」を設計するための概念
HCDはUXのベース・要素となるものです。
ユーザビリティを越えた付加価値を求められる時代となっている為、
ユーザビリティを向上させるだけでは、より良いUXを実現させるには事足りません。
使い勝手がよく、質・量が満たされたコンテンツをセットで提供することで「体験」を向上することが必要です。
▼参考記事
最後に
良質な顧客体験がより重要視されていく中で、HCDへの期待はますます高まっているといえます。
企業ではHCDを重要な経営資源として、
- 魅力あるUXを創造し続けること(持続的なイノベーション)
- 新たなビジネスを推進すること(非連続的なイノベーション)
これらを通して経営にコミットすることが求められていると考えます。
引き続き、HCDの学習を深め、実践していきます📝