NECソリューションイノベータ株式会社の齊藤です。
相変わらずスクラムで価値を提供し続けられるチームを作ることを頑張っている毎日です。
※自己紹介は こちら をご覧くださいませ。
どんな課題があったか
私が見ているとあるチーム、不確実な要求でも顧客が欲しいものに近づいていけるように、またチームが自律的に成長していけるようにとスクラムのフレームワークを導入していました。
スクラムイベントは粛々と実施されているし、レトロスペクティブで改善アクションも決まる。対話だって少なくなく、心理的安全性の面でも合格点の状態ですが、スクラムコーチ(私)から見ると今ひとつブレイクスルーしないような感覚のモヤモヤがありました。悪くはないのですが、最高でもない、もっと良くしたいですよね。
例えば下記のような状況でした。
顧客への価値提供
- 予定されたスプリントバックログは完了する。ただ、スプリントバックログを完了させることに気持ちが向きがちで、スプリントレビューでも「終わったということ」の報告が目立つ
- スプリントレビューではステークホルダーやPOからの質疑応答が主。インクリメントに対する議論をもっと行いたい
チームの改善
- 現状のプロセスの改善・効率化のアクションは多く上がるが、プロセスそのものを変えてしまうようなアクションはなかなか出てこず、現状からの脱却に苦労している
これまでやってきたこと
普段からスクラムイベントの際にはその目的や効果を都度説明しながら実施していました。また、内発的動機づけに繋がるよう、チームが課題に直面するまで改善機会の提案を待ったりと、色々とやってきました。リモートのスクラムチームなので、物理的に空間を共有できないながらもコーチング技法のあれやこれやを駆使してきました。
その結果、チームは良好な状態にまでなったのですが、改革を実現できるようなもう一段上のチームに変身するのはなかなか難しいですね。
やってみたこと
ここまで紹介したように何か突破口がほしいと考えていたタイミングでちょうどチームがオフラインで集まる機会ができました。賞味2日間くらいの時間を確保できたので、ワークショップと実践を組み合わせてチーム変革にトライしました。
こんな構成です。
1日目:半日間のスクラムシミュレーション
チームメンバーにスクラムチームの役割(開発者、プロダクトオーナー、スクラムマスター)を割り当て、半日の2スプリント程度をまわすスクラムのシミュレーションをやりました。自分たちの仕事とは違い、経緯やしがらみがまったくないプロダクトなので、スクラムイベントの目的によりフォーカスできます。
シミュレーションでは私が顧客の役になって、スプリントレビューでフィードバックを得ることでプロダクトが良くなっていく感覚を体験してもらうように頑張りました。(難しかった・・・笑)
シミュレーションの最後にはラップアップとして、自分たちのチームに活かせる学びは何かをチームから共有してもらって終了です。
(これまであまりなかった「POとコミュニケーションを多くとる」「ステークホルダーの期待に適応する」というトピックが!)
2日目:本物のスクラムイベント
2日目には実際のスクラムイベントを集中させ、シミュレーションの学びをすぐに実践するようにしました。例えば以下のような効果を期待しています。
- スプリントレビューで顧客から良いフィードバックを得るための行動ができる
- レトロスペクティブで効率化以外のアクションが提案される
やってみてどうなったか
大成功でした!!
まず2日目のスプリントレビューでは、狙い通り良いフィードバックを得るための行動が増えました!ワーイ
例えば・・・
- スプリントバックログが終わったかどうかの話題は皆無!
- このスプリントで何を目的にし、何を作成したかという説明からスタート
- アジェンダを事前にPOと合意してからスプリントレビューに臨んだ
- 開発者からステークホルダーに対しての質問や議論が発生した(レビューじゃない、ワーキングセッションに近づいた!)
- ステークホルダーからは次に試してみたいことの提案がなされ、それが次スプリントのゴールを決めるインプットになった
スプリントレビューの後のレトロスペクティブとスプリントプランニングでは、改善だけでなく慣習的にやってきたことを「やめる」決定ができました。(これまでは促してもなかなか・・・)
- チーム内とステークホルダーに対する説明のためにパワポ資料を作ることを止める
- スプリントプランニングで稼働時間やベロシティを予測するアジェンダを止める
今後はこれまでよりも顧客により質の高いインクリメントをより多く提示できる気しかしません!
なぜそうなった?
ではなぜこのやり方が上手くいったのでしょうか?
体験することで腹落ちできた
教科書やマニュアルでは知識は得られても自分事として捉えることは難しいです。自分の身にその出来事が起こっていないからだと私は思います。
スクラムガイドや研修で得た知識に対して「あぁ!こういうことか!」という感情が得られたんじゃないでしょうか。
制限時間内で成功体験を得られたことで自信になった
今回のシミュレーションはCertified Scrum Master®の研修で体験したものを参考にして設計しました。その中でも話されていたのですが、時間が限られていても目的にフォーカスすれば結構なことができるし顧客に喜んでもらえる。プロダクトがもっと良くなるフィードバックを得られる。そんな成功体験で自信を持てたことで行動につながったのではと思っています。
すぐに試して効果を実感できた
成功体験の熱が冷めないうちに実践の機会を設けました。シミュレーションだけだと「用意された環境」で上手くいっただけという思考に陥るかもしれません。自分たちの仕事で試して効果を実感することでより大きな成功体験になり、自信が深まったと思います。
おわりに
体験最強!!!!!!
スクラムに限らず、なかなか行動が変わらないなーという悩みを抱えている方はぜひ短い時間で効果を体験するようなプログラムを試してみてください!