とあるサービスの運営チームでのお話。
「○○さんがいるのといないのとでは大違い!ありがとう!」
これ、誰に対しての言葉だと思いますか?
プロダクトの機能を爆速でモリモリ作ったエンジニアに対して?
違います。
プロダクトに直接手を下していない、ファシリテーターに対しての言葉です。
この記事では、こんな言葉をチームのオーナーからもらえるようなファシリテーションについてお話しします。
ファシリテーションスキルを向上させたい方や、チーム内で効果的なコミュニケーションを促進したい方の参考になればと思います。
自己紹介
入社して10年ほどはエンジニアとして仕事をしていましたが、自分のエンジニアとしての能力とモチベーションに限界を感じ、スクラムマスターにジョブチェンジしました。能力面でもメンタル面でも技術者としてはモブキャラ以上にはなれないと自覚したときに、チームのパフォーマンスを支えることに魅力を感じたのが大きな理由です。
現在も技術に全く触れないわけではないですが、「技術の話が通じるスクラムマスター」として活動することを自身の第一優先に様々なチームに関わっています。
社内の様々なチーム(主にプロダクトやサービス開発)にスクラムマスターとして関わって経験した、なるべく泥臭くてマニュアルに載らないようなノウハウを紹介していければと考えています。
感謝される!ファシリテーターの技5選
1. 最初に心理的安全性をグッと上げる!自分をさらけ出そう!
会議やチームビルディングでは、よく「何でも言いたいことを話しましょう」「気を使わないようにしよう」などのグランドルールが作られますが、ルールができればお互いに言いたいことが言い合える心理的安全性の高い集団になるでしょうか?
残念ながらそうでないケースはよくあるんじゃないかなと思います。
なぜでしょうか?
理屈では理解していても、体験として理解していないからだと私は考えています。実際に安心できる場であるという体験をしないかぎり、なかなか一歩踏み出す勇気は出ないんじゃないでしょうか?
私の場合はチームに対して「自分をさらけ出す」ということをします。例えばこんな感じです。
チームの顔合わせの会議のファシリテーションにて
最初にファシリテーターが挨拶をします。
その時はもちろんカメラはONです。ですが、敢えてバーチャル背景は使わずに作業している自宅の自室の様子を映します。
オンライン懇親会の場にて
バーチャル背景はONにしていても、自室のドアは開けっ放しで家族の生活音が時々入る状態にします。子供が叫んでいる声やおもちゃの音声も丸聞こえです。時には子供が乱入してきます。我が家にはいませんが、犬や猫が乱入してきてもいいですね(笑)
このように早い段階で自分のプライベートな部分を敢えてさらけ出すことで、自分に対するチームメンバーの理解が進むだけではなく、他のメンバーに対する信頼度を表現することができ、チームの心理的安全性が高まると考えています。
2. 行動しやすくなる!チームを教育しよう!
ファシリテーターが参画した直後のチームは、ファシリテーターがこれから何をしてくれるのか、自分たちはどう振る舞ったらいいのか全くわからない状態です。
ファシリテーターが何を達成するためにチームに存在するのか、またチームは目標を達成するためにはどのように振る舞えばいいのかを最初にしっかりと腹落ちさせましょう。
こんなこと
- ファシリテーターはチームが目標を達成するためにチームメンバーが自ら考え、決断することを支援する。
- ファシリテーターは中立の立場でチームのアウトプットに対して何も判断しないし承認しない。アウトプットに対する責任も持たない。
- チームメンバーは積極的に発言しなくてはいけない。自身の考えを述べないのは罪。発言がしやすくなるような支援をファシリテーターは惜しまない。
あとは「否定しない」とかのグランドルールを周知してそれをファシリテーターは監視するよ、という宣言もしておくといいですね。
3. 発言を促進する!リアクションを100%保証しよう!
会議において(特にオンラインでは)自分が発言したあとに無言時間があると不安な気持ちになりませんか?
「あれ・・・?言っちゃいけないこと言った・・・?」
「会議に貢献しない意味のないこと言っちゃったかな・・・」
「てか、これってなんの時間・・・?」
敢えて不安な空気を作るテクニックもあるにはありますが、原則的には避けたいところ。自分の発言にリアクションが無いと、参加者はだんだんと発言しなくなっていきます。
参加者がリアクションのタイミングに困って無音になるくらいなら、ファシリテーターがリアクションしましょう。ただし!前に述べたようにファシリテーターはチームの決定について権限を持たない(その代わりに議論をコントロールする権限を有する)ので、リアクションの内容には注意を払いましょうね。
悪い例
参加者「利用者の年齢を見て傾向を掴んだらどうかな?」
ファシリ「良いと思います!やりましょう!」
良い例
参加者「利用者の年齢を見て傾向を掴んだらどうかな?」
ファシリ「おー!なるほど!」「他のみなさんどう?」
全然違いますよね!
4. 有言実行で信頼度アップ!会議時間を「絶対に」守ろう!
これを読んでいるあなたの組織では会議の時間は守られていますか?なし崩し的に延長されていませんか?会議時間を守ることは単に会議の進行の上手い・下手でなく、ファシリテーターとしてチームから信頼を獲得するためにとても重要です。
その会議に設定されたゴールが達成できたか否かは関係なく、とにかく時間通りに会議を終わらせます。ゴールが達成できない見通しになったら、次にどうするかを決めて無理矢理にでも会議を終わらせるようにします。
そうやって会議時間を厳守することを続けていくと、「この人は有言実行する人だ・・・!」「この人に付いていけば、チームの目標が達成できるかもしれないぞ・・・!」と感じ、あなたを信頼してくれるようになるはずです。そうなれば信頼の好循環ができ、チームメンバーは目標達成に向けて協力的になっていくでしょう。
このように会議時間を厳守することで、ファシリテーターに対する信頼が高まります。参加者は「このファシリテーターは言動一致している」と感じ、チームの目標達成に向けて協力的なっていくはずですよ。
5. デキると思ってもらう!思考停止ワードを探し続けよう!
普段の会話、特に会議には「わかった気になってしまう言葉」がたくさんあることに気づいていますか?気づいていても会議の進行を妨げないために気づかないふりをしていることもあるかもしれませんね(笑)
ファシリテーターはチームの発言の中からこの「わかった気になってしまう言葉」=「思考停止ワード」を探し続け、その具体化を繰り返すことで論点が定まり、会話や会議から価値や具体的なアクションが生まれるようになります。
思考停止ワード:読む・聞く人によって違う意味に取られる可能性のある言葉
思考停止ワードの例(どんな認識齟齬が発生しそうか、考えてみてください!)
- コミュニケーション
- 連携
- 共有
これを繰り返すことでゴールを達成する体験を積み重ね、信頼される=感謝されるファシリテーターに近付きましょう!
まとめ
今回は私が普段使っているテクニックの中から、どのチームに対しても実行しているものを選んで紹介しました。これらのテクニックを実践することでチームの心理的安全は高まっていくはずです。
これらのテクニックを活用する際は、一度に全てを完璧に実践しようとせず、まずは1つか2つから始めることをお勧めします。例えば、次の会議で「リアクションを100%保証する」ことに焦点を当ててみるのも良いでしょう。自分のファシリテーションを定期的に振り返り、改善点を見つけながら進めていくのもいいですね。
感謝されるファシリテーターに成長していきましょう!
おまけ:心理的安全性のよくある勘違い
勘違い1:体調や気分を気遣って心理的安全性を高める
気遣うのってすごく大事です。特に体調に不安を抱えているときって、本当に心細いですよね。ただ・・・そこに罠が隠されている場合もあります。
例えば体調が悪い人が心配していることは「自分が休んだことで仕事に悪影響はないか」だったりします。周囲は単に気遣うだけではなくて実際に仕事のフォローだったり調整を行うことで、心配事にアプローチすることが重要です。いわゆる、「心配してくれてありがとう。(でも助けてはくれないのね・・・)」という状況は避けるべきですよね。
メンバーが不安を抱えているときは気遣うだけではなく、具体的に支援するアクションをとるように意識し、チーム全体でお互いにサポートし合う文化を育てていきましょう!
勘違い2:とにかく認める・褒める
下記の発言には心理的安全性を低下させてしまう内容が潜んでいます。何かわかりますか?
「アウトプットの認識合わせを早めにやってくれたの、良いことだよ!これからも続けてね」
一見自分の行動を認められて嬉しくなり、その行動を続けたくなると思うかもしれません。確かにそういう場合もありますが、「自分の行動がジャッジされている」とは感じないでしょうか?行動や成果に対して合否を判断されていると感じると、合格をもらうための行動に徐々に傾いていき、完成度が低いアウトプットなど成果を共有しなくなってしまう可能性があります。
心理的安全性を高め、たくさんのアウトプットを共有してもらうためには、評価や指示ではなく、感謝や具体的な影響を伝えるようにしましょう!
ちなみに自分だったらこうします。
「アウトプットの認識合わせが早めにできたおかげでレビュー効率爆上がりだったよ!ありがとう!」(本心を素直に)
いかがでしょうか?