はじめに
中国語圏で「龍虾(ロンシャ)」と呼ばれることがある OpenClaw は、ローカルまたは自分の管理下にある環境で動かす、オープンソースのパーソナル AI エージェントです。
普通のチャット AI が「質問に答える」ことを中心にしているのに対して、OpenClaw はメッセージアプリ、ブラウザ、ファイル、外部 API、スキルなどをつなぎ、ユーザーの代わりに複数ステップの作業を進めることを目指しています。
この記事では、OpenClaw の機能、インストール、基本設定、使い方、そしてなぜこの種のエージェントが重要なのかを、初学者向けに整理します。
注: コマンドや設定項目は 2026-06-15 時点の公式ドキュメントをもとにしています。実際に導入する前に、必ず公式 README / Docs も確認してください。
OpenClaw とは
OpenClaw は、自分のデバイスやサーバー上で動かせる AI アシスタントです。OpenAI、Anthropic、Google などの LLM プロバイダを利用し、Gateway と呼ばれる制御プレーンを通して、チャット、チャンネル、ツール、スキルをまとめて扱います。
主な特徴は次の通りです。
- ローカルファーストな Gateway
- WhatsApp、Telegram、Slack、Discord、Signal、iMessage、LINE、WeChat など、多数のチャンネル連携
- CLI、ダッシュボード、メッセージアプリからの操作
- スキルによる機能拡張
- 複数エージェント、複数ワークスペースの運用
- サンドボックスや DM ポリシーによる安全制御
- 音声、Canvas、ブラウザ操作、cron などの拡張的なツール連携
ざっくり言うと、OpenClaw は「チャット UI を入り口にした、自分専用の自動化エージェント基盤」です。
何ができるのか
OpenClaw の価値は、単に文章を生成することではなく、外部ツールとつながって作業を進められる点にあります。
たとえば、次のような用途が考えられます。
- メールやメッセージの要約
- タスクの整理
- Web 調査
- ファイル操作
- ブラウザを使った確認作業
- 定期実行タスク
- チーム用チャンネルへの通知
- 個人用の秘書的ワークフロー
- 特定業務向けのカスタムスキル実行
一般的なチャット AI は「会話」で止まりがちですが、OpenClaw は「会話から行動へ」進むための仕組みを持っています。
全体構成
OpenClaw の構成をシンプルに表すと、次のようになります。
中心になるのは Gateway です。Gateway がチャンネル、設定、セッション、ツール、スキルを管理し、エージェントが必要なモデルやツールを呼び出します。
インストール前の準備
公式ドキュメントでは、Node.js 24 が推奨されています。Node.js 22.19 以上もサポートされています。
確認コマンド:
node --version
また、LLM を使うために、少なくとも 1 つのモデルプロバイダの API キー、または対応する認証方法が必要です。
例:
- OpenAI
- Anthropic
- その他 OpenClaw が対応するプロバイダ
インストール方法
macOS / Linux では、公式のインストールスクリプトを使う方法が簡単です。
curl -fsSL https://openclaw.ai/install.sh | bash
Windows の PowerShell では次のように実行します。
iwr -useb https://openclaw.ai/install.ps1 | iex
npm でインストールする場合は、次のようにします。
npm install -g openclaw@latest
または pnpm を使う場合:
pnpm add -g openclaw@latest
インストール後、オンボーディングを実行します。
openclaw onboard --install-daemon
このコマンドは、Gateway、ワークスペース、モデルプロバイダ、チャンネル、スキルなどの初期設定を対話形式で進めてくれます。--install-daemon を付けると、Gateway をバックグラウンドサービスとして常駐させられます。
起動確認
Gateway の状態を確認します。
openclaw gateway status
正常に動いていれば、Gateway が標準ポート 18789 で待ち受けていることを確認できます。
ダッシュボードを開くには、次のコマンドを使います。
openclaw dashboard
ブラウザで Control UI が開けば、基本的なセットアップは完了です。
基本設定
OpenClaw の設定ファイルは、デフォルトでは次の場所にあります。
~/.openclaw/openclaw.json
設定ファイルが存在しない場合でも、安全なデフォルト設定で動作します。ただし、チャンネル連携、モデル、ツール、サンドボックス、スキル制限などを調整したい場合は、このファイルを編集します。
最小構成のイメージは次のようになります。
{
agents: {
defaults: {
workspace: "~/.openclaw/workspace"
}
},
channels: {
telegram: {
enabled: true,
botToken: "YOUR_TELEGRAM_BOT_TOKEN",
dmPolicy: "pairing"
}
}
}
設定は CLI から確認・変更することもできます。
openclaw config get agents.defaults.workspace
openclaw config set agents.defaults.heartbeat.every "2h"
設定ミスがあると Gateway が起動しないことがあります。その場合は次を実行します。
openclaw doctor
修復可能な問題を自動修正したい場合:
openclaw doctor --fix
モデル設定
モデルは provider/model の形式で指定します。
例:
{
agents: {
defaults: {
model: {
primary: "openai/gpt-5.4",
fallbacks: ["anthropic/claude-sonnet-4-6"]
},
models: {
"openai/gpt-5.4": {
alias: "GPT"
},
"anthropic/claude-sonnet-4-6": {
alias: "Sonnet"
}
}
}
}
}
実運用では、次の観点でモデルを選ぶとよいです。
- 応答品質
- ツール利用の安定性
- コスト
- レイテンシ
- 自社・個人データを扱う際の信頼性
- フォールバックが必要かどうか
チャンネル連携
OpenClaw は多数のチャンネルに対応しています。最初に試すなら、Telegram や Discord が比較的わかりやすいです。
DM の受け付け方は dmPolicy で制御します。
{
channels: {
telegram: {
enabled: true,
botToken: "YOUR_TELEGRAM_BOT_TOKEN",
dmPolicy: "pairing",
allowFrom: ["tg:123456789"]
}
}
}
代表的な dmPolicy は次の通りです。
| 値 | 意味 |
|---|---|
pairing |
未知の送信者にはペアリングコードを返し、承認後に利用可能にする |
allowlist |
allowFrom に含まれる送信者のみ許可 |
open |
すべての DM を許可 |
disabled |
DM を無効化 |
最初は pairing または allowlist を使うのが安全です。open は公開ボットに近い挙動になるため、慎重に使うべきです。
使い方
セットアップ後は、Control UI のチャット欄や、連携したメッセージアプリから OpenClaw に話しかけられます。
CLI から直接メッセージを送ることもできます。
openclaw agent --message "今日の作業チェックリストを作って"
接続済みのチャンネルへテストメッセージを送る例:
openclaw message send --target +1234567890 --message "Hello from OpenClaw"
チャット中によく使うコマンドには、次のようなものがあります。
| コマンド | 用途 |
|---|---|
/status |
現在の状態を確認 |
/new |
新しい会話を開始 |
/reset |
セッションをリセット |
/compact |
会話履歴を圧縮 |
/think <level> |
推論の強さを調整 |
/verbose on/off |
詳細ログの表示を切り替え |
Skills の考え方
OpenClaw の重要な概念の 1 つが Skills です。
Skill は、エージェントに「どのような場面で、どのツールを、どの手順で使うか」を教えるための拡張です。多くの場合、SKILL.md という Markdown ファイルに説明や利用条件を書きます。
イメージとしては、AI に渡す「業務手順書」に近いです。
たとえば次のような Skill が考えられます。
- Gmail を整理する Skill
- GitHub Issue を調査する Skill
- 社内 Wiki を検索する Skill
- 請求書 PDF を読み取る Skill
- ブラウザで競合サイトを調査する Skill
Skill は便利ですが、外部ツールやファイル操作と組み合わさるため、信頼できない Skill を不用意に入れるのは危険です。導入前に内容を読み、権限を確認し、必要ならサンドボックスで動かしましょう。
セキュリティで気をつけること
OpenClaw は強力です。強力ということは、設定を間違えるとリスクも大きくなります。
特に注意したい点は次の通りです。
- DM を誰でも送れる状態にしない
- API キーを平文で共有しない
- 不明な Skill を安易に入れない
- 重要なファイルへ無制限アクセスさせない
- チームチャンネルでは mention 必須にする
- サンドボックスを有効化する
-
openclaw doctorで定期的に診断する - 公開ネットワークに Gateway を出す前に公式のセキュリティガイドを読む
OpenClaw のようなエージェントは、メール、ファイル、チャット、ブラウザなどに触れます。つまり、従来のチャットボットよりも攻撃面が広いです。便利さと安全性はセットで考える必要があります。
OpenClaw を使う意味
OpenClaw の意味は、「AI を単なる回答装置から、作業環境の中で動くエージェントへ近づける」点にあります。
これまでの AI 利用は、人間が毎回プロンプトを書き、結果をコピーし、別のツールに貼り付ける形が多くありました。しかし、実際の仕事は複数のアプリ、ファイル、メッセージ、判断、確認作業で構成されています。
OpenClaw のようなエージェント基盤は、その間をつなぎます。
- チャットで依頼する
- エージェントが必要なツールを選ぶ
- 必要なら Web やファイルを確認する
- 結果をまとめる
- ユーザーに確認を求める
- 次のアクションへ進む
これは、AI の使い方が「質問応答」から「業務フローの一部」へ変わることを意味します。
どんな人に向いているか
OpenClaw は、次のような人に向いています。
- 自分用の AI アシスタントを作りたい人
- メッセージアプリから AI を使いたい人
- ローカルファーストなエージェント基盤を試したい人
- LLM とツール連携の仕組みを学びたい人
- 定型作業を自動化したい個人開発者
- AI エージェントの安全設計を研究したい人
一方で、コマンドラインや設定ファイルに慣れていない人が、いきなり重要なアカウントや本番データにつなぐのはおすすめしません。最初は小さなテスト用環境で試すのがよいです。
まとめ
OpenClaw(龍虾)は、LLM、メッセージチャンネル、ツール、スキルをつなぐ、オープンソースのパーソナル AI エージェント基盤です。
導入の流れはシンプルです。
- Node.js を用意する
- OpenClaw をインストールする
-
openclaw onboard --install-daemonを実行する -
openclaw gateway statusで確認する -
openclaw dashboardで Control UI を開く - モデル、チャンネル、DM ポリシー、スキルを設定する
OpenClaw は、AI を「話す相手」から「動く相棒」に近づける技術です。ただし、外部サービスやファイル操作を扱う以上、安全設計は必須です。
まずは小さく始め、DM 制御、Skill の確認、サンドボックス、診断コマンドを使いながら、少しずつ自分のワークフローに組み込んでいくのがよいでしょう。