はじめに
「WSL2上でObsidianが使えたら便利そう」と思い立ち、実際に試してみたところ、社内VPN環境特有のトラブルに2か所引っかかりました。同じ境遇の方の参考になるよう手順と解決策をまとめます。
検証環境
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| OS | Windows 11 (22H2以降) |
| WSL | WSL2(WSLg有効) |
| Linuxディストリビューション | Ubuntu 22.04 LTS |
| ネットワーク | 社内VPN接続中(TLSインスペクションあり) |
| Obsidianバージョン | 1.x系(最新) |
WSLgとは? Windows 11 + WSL2で利用できる機能で、LinuxのGUIアプリをWindows上のウィンドウとしてシームレスに表示できます。特別なXサーバーのセットアップが不要で、
obsidianコマンドを叩くだけでWindowsデスクトップにウィンドウが出てきます。
0. 事前準備:WSLとWSLgを最新にしておく
PowerShell(管理者権限不要)で実行します。
wsl --update
wsl --shutdown
その後、WSLを起動し直して作業を開始します。バージョンが古いとWSLg関連の既知バグに当たることがあるため、最初にアップデートしておくのを推奨します。
1. 既存のObsidianをアンインストールする
すでにObsidianをインストール済みの場合は先にアンインストールします。インストール先によって手順が異なります。
Windows側にインストールしている場合
Win + I → アプリ → インストールされているアプリ → Obsidianを検索 → アンインストール
設定情報をすべてリセットしたい場合は、以下のフォルダも削除します(Vault内のノートデータには影響しません)。
C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Roaming\Obsidian
WSL内にインストールしている場合
インストール方法に応じて以下のいずれかを実行します。
# .debパッケージで入れた場合
sudo apt remove obsidian
# Flatpakで入れた場合
flatpak uninstall md.obsidian.Obsidian
# Snapで入れた場合
sudo snap remove obsidian
# AppImageの場合(単一ファイルなので削除するだけ)
rm ~/Applications/Obsidian-*.AppImage
どの方法で入れたか不明な場合は which obsidian を実行するとパスが確認できます。
2. WSL2へのインストール
公式GitHubリリースページから .deb パッケージを取得してインストールします。
2-1. 最新バージョン番号を確認する
https://github.com/obsidianmd/obsidian-releases/releases/latest でバージョンを確認してください(例: 1.8.10)。
社内のプロキシによってはGitHubにアクセスできないことがあります。その場合はWindows側ブラウザでダウンロードし、
/mnt/c/Users/<ユーザー名>/Downloads/経由でWSLからアクセスするのが確実です。
2-2. インストール
# バージョン番号は実際のものに変更してください
VER=1.8.10
wget https://github.com/obsidianmd/obsidian-releases/releases/download/v${VER}/obsidian_${VER}_amd64.deb
sudo dpkg -i obsidian_${VER}_amd64.deb
sudo apt --fix-broken install # 依存関係エラーが出た場合に実行
2-3. 起動確認
obsidian
ここで2つのトラブルが発生しました。それぞれ解説します。
つまずき① 証明書エラー(ERR_CERT_AUTHORITY_INVALID)
発生したエラー
2026-06-24 04:00:07 Checking for update using Github
2026-06-24 04:00:07 Failed to check for update using Github (net::ERR_CERT_AUTHORITY_INVALID)
2026-06-24 04:00:07 Checking for update using obsidian.md
2026-06-24 04:00:07 Failed to check for update using obsidian.md (net::ERR_CERT_AUTHORITY_INVALID)
起動直後に数秒のフリーズも伴いました。
原因
多くの企業ネットワークでは、TLSインスペクション(SSLインスペクション)という仕組みが使われています。プロキシが通信内容を検査するために、一旦TLS通信を復号・再暗号化します。このとき、プロキシは自社のルートCA証明書で署名した証明書を返します。
Windowsはこのルート証明書を信頼済みですが、WSL内のLinuxは持っていないため、「知らない証明書だ → 危険」と判断してエラーになります。
解決策:WSLに社内ルートCA証明書をインストールする
Step 1. Windowsから証明書をエクスポートする
Win + R → certmgr.msc を実行して証明書マネージャーを開きます。
「信頼されたルート証明機関」→「証明書」を開き、社内プロキシ製品やセキュリティベンダーの名前がついている証明書を探します(Zscaler、Netskope、Forcepointなどが代表例です)。
該当の証明書を右クリック → すべてのタスク → エクスポート → Base64エンコードX.509(.CER) として保存します(例: corp-root-ca.cer)。
Step 2. WSLに証明書を追加する
# Windows側のDownloadsフォルダからコピー
cp /mnt/c/Users/<ユーザー名>/Downloads/corp-root-ca.cer ~/corp-root-ca.crt
# システムの証明書ストアに追加
sudo cp ~/corp-root-ca.crt /usr/local/share/ca-certificates/corp-root-ca.crt
sudo update-ca-certificates
1 added と表示されれば成功です。
Step 3. Chromium系アプリ向けにNSSデータベースにも追加する
ObsidianはElectron(Chromiumベース)で動作しており、システム証明書ストアに加えてNSSデータベースも参照することがあります。
sudo apt install libnss3-tools -y
certutil -d sql:$HOME/.pki/nssdb -A -t "C,," -n "Corp Root CA" -i ~/corp-root-ca.crt
Step 4. Obsidianを再起動して確認
エラーが消えていれば完了です。
つまずき② 真っ黒ウィンドウ+PCフリーズ
発生した症状
証明書問題を解決してObsidianを起動すると、Windowsデスクトップに真っ黒なウィンドウが表示され、PCがしばらくフリーズしました。
原因
WSLgはWindowsのGPUドライバを経由して描画します。ObsidianはElectronアプリであり、起動時にハードウェアGPUアクセラレーションを試みます。この際、WSLgの仮想GPU(vGPU)とElectronのGPUレンダリングが衝突することがあり、黒画面やフリーズが発生します。
VPN環境やプロキシ環境はこの問題を悪化させる場合があります(通信遅延に加えGPU描画の問題が重なるため)。
解決策:GPUアクセラレーションを無効にして起動する
obsidian --disable-gpu
これで正常に表示されることを確認できました。毎回フラグを打つのは面倒なので、エイリアスに登録しておきます。
echo "alias obsidian='obsidian --disable-gpu'" >> ~/.bashrc
source ~/.bashrc
次回以降は obsidian と打つだけで --disable-gpu 付きで起動されます。
補足:根本的な解決を目指す場合
--disable-gpu はあくまで回避策です。以下を試すことで将来的に不要になるかもしれません。
-
wsl --updateでWSLを最新版にする - Windows側のGPUドライバ(NVIDIA/AMD/Intel)を最新版にアップデートする
3. Vaultフォルダの置き場所について
Obsidianが起動したら、Vaultをどこに置くかを決める必要があります。
| 置き場所 | パスの例 | 特徴 |
|---|---|---|
| WSL内のLinuxファイルシステム | ~/vaults/my-vault |
読み書きが高速。WSL外からのアクセスは少し手間 |
| Windows側のフォルダ(マウント経由) | /mnt/c/Users/<ユーザー名>/vaults/my-vault |
Windows側のアプリ(Explorerなど)と共有しやすい。大量ファイルの操作は若干遅い |
普段WSL内で作業することが多く、Obsidianのみで使う場合は Linux側に置くことを推奨します。
まとめ
社内VPN環境特有のつまずきポイントは大きく2つでした。
| # | 症状 | 原因 | 解決策 |
|---|---|---|---|
| ① |
ERR_CERT_AUTHORITY_INVALID エラー |
社内TLSインスペクションのルートCA証明書がWSLにない | WSLにルートCA証明書をインストール |
| ② | 真っ黒ウィンドウ+フリーズ | WSLg + ElectronのGPUレンダリング競合 |
--disable-gpu フラグで起動 |
どちらも「WSLが完全に独立したLinux環境であること(Windowsの設定が自動引き継がれない)」を意識すれば原因の見当がつきます。同じ環境で困っている方の参考になれば幸いです。