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Windows Phone は帰ってこなかった。Project Solara は「エージェント時代の業務用 Windows CE」なのかもしれない

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Windows Phone は帰ってこなかった。Project Solara は「エージェント時代の業務用 Windows CE」なのかもしれない

はじめに

Microsoft Build 2026 で発表された Project Solara がかなり面白い。

最初に名前だけ聞いたとき、私は少しだけこう思った。

これは Windows Phone の復活なのか?

しかし、調べてみると違った。
Project Solara の土台は Windows Phone OS でも Windows の軽量版でもなく、MDEP / Microsoft Device Ecosystem Platform だった。

MDEP は Microsoft 公式ドキュメント上でも AOSP、つまり Android Open Source Project ベースの Microsoft 製プラットフォーム と説明されている。端末メーカーやソフトウェア開発者が、Microsoft のセキュリティ、信頼性、管理機能を前提に、業務向けデバイスを作るための基盤である。([Microsoft Learn][1])

つまり Project Solara は、

Windows Phone 2.0 ではない。
Microsoft 管理下の Android ベース業務 AI 端末基盤である。

という見方ができる。


Project Solara とは何か

Microsoft は Project Solara を、agent-first experiences のために設計された新しいプラットフォームとして説明している。従来の「アプリを開く」コンピューティングから、「エージェントを呼び出す」コンピューティングへ移る、という文脈だ。([Command Line][2])

公式記事では、Solara は単なる端末OSではなく、chip-to-cloud platform と表現されている。端末とクラウドをまたいで、エージェントの状態やUI、実行環境を扱う構想である。([Command Line][2])

ここで私は、従来のOSとはかなり違う匂いを感じた。

従来の端末は、だいたいこうだった。

OS
  ↓
アプリ
  ↓
画面
  ↓
ユーザー操作

Project Solara が狙っているのは、たぶんこうだ。

ユーザーの意図
  ↓
エージェント
  ↓
必要なデータ・業務システム・UI
  ↓
実行・確認・記録

つまり主役がアプリではない。
主役は エージェント である。


なぜ Windows ではなく AOSP なのか

ここが一番面白い。

Microsoft は、Windows を小型端末に無理に載せる道を選ばなかった。
代わりに、AOSP ベースの MDEP を使っている。

MDEP のアーキテクチャ説明でも、Google AOSP スタックをベースにしつつ、Microsoft エコシステムや体験を支えるためにコアコンポーネントや追加サービスに Microsoft 側の変更を加えている、と説明されている。([Microsoft Learn][3])

この判断はかなり現実的だと思う。

小型端末、ウェアラブル、据え置き型の小さな業務端末では、次のような要素が必要になる。

  • カメラ
  • マイク
  • スピーカー
  • Bluetooth
  • Wi-Fi
  • 5G
  • GNSS
  • 指紋認証
  • 顔認証
  • 低消費電力SoC
  • タッチスクリーン
  • UWB存在検知

この世界では、AOSP のほうが部品調達やドライバ、OEM展開との相性がよい。

一方で、Microsoft が本当に欲しいのは Android 市場そのものではない。
欲しいのは、業務端末を Microsoft の管理・認証・クラウド・エージェント基盤につなぐことだ。

つまり、価値の中心は OS カーネルではなく、次の層にある。

Entra ID
Intune
Defender
Hello for Business
Microsoft 365 Copilot
WorkIQ
Azure
Microsoft Agent Framework
Microsoft 365 Agents SDK

ここが Microsoft らしい。

私はこれを、「OSで勝つ」のではなく「業務AI端末の制御層で勝つ」戦略だと見ている。


Windows Phone との違い

Windows Phone は、iPhone / Android と同じスマホ市場で戦った。

そのためには、OSだけでは足りなかった。

  • アプリストア
  • 開発者
  • 一般消費者
  • キャリア
  • 地図
  • SNS
  • 銀行アプリ
  • ゲーム
  • メッセージングアプリ

これらを全部そろえる必要があった。

Project Solara は、同じ戦場に戻っていない。

Solara は一般消費者のスマホを置き換えるものではなく、企業の現場、病院、店舗、工場、開発者の机、会議の周辺に入り込むためのものに見える。

比較するとこうなる。

観点 Windows Phone Project Solara
主戦場 一般スマホ市場 業務AI端末市場
UIの中心 アプリ エージェント
成功条件 アプリ数、消費者人気 企業導入、管理、セキュリティ、業務効果
OSの意味 商品そのもの 管理された端末基盤
Microsoftの強み 活かしにくかった Entra ID / Intune / Microsoft 365 / Azure / GitHub を活かせる
端末像 スマホ バッジ、デスク端末、現場端末、専用デバイス

私はここに、Windows Phone の反省を感じる。

Microsoft はもう、iPhone の代わりを作ろうとしていない。
その代わりに、会社の中でAIエージェントが動く端末を Microsoft 管理下に置こうとしている


Solara の中核は Agent Shell かもしれない

Project Solara のデバイス側要素として、Microsoft は MDEP のほかに Agent Shell を挙げている。Agent Shell は、複数のクラウドベースのエージェントを動的に読み込み、端末に合わせて調整するものと説明されている。([Command Line][2])

私はここがかなり重要だと思っている。

従来のホーム画面はこうだった。

Outlook
Teams
Excel
Chrome
GitHub
Slack
メモ帳

しかし、Agent Shell の世界では、ホーム画面はこうなるのではないか。

今すぐ確認すべきこと
- 15分後の会議。前回の未完了タスクが2件あります
- GitHub Copilot の修正PRがレビュー待ちです
- 顧客Aへの返信案があります
- Azure AI Search の検証環境で Indexer が失敗しています
- 昨日の対面会話から作成されたタスクが未確認です

アプリではなく、やることが並ぶ。

これは、スマホのホーム画面の進化ではない。
業務の入口そのものが変わる話だ。


concept device:デスク端末とバッジ端末

Project Solara では、2種類のコンセプト端末が示されている。ひとつは机の上に置くデスク型、もうひとつは社員証のように身につけるバッジ型である。Microsoft は MediaTek と据え置き型、Qualcomm とポータブル端末のコンセプトで協力している。([Command Line][2])

GeekWire の記事では、デスク型はPCの横に置くハブのような存在で、顔認証でサインインし、音声で操作し、重要事項を表示するものとして紹介されている。さらに外部モニターにつなぐと、クラウド上のWindowsを使う端末にもなるとされている。([GeekWire][4])

一方、バッジ型は社員証のようなウェアラブルで、指紋ボタンでエージェントを起動し、会話の録音・文字起こしや、カメラを通じた状況理解ができる構想として紹介されている。([GeekWire][4])

ここで私が感じたのは、これは「スマートスピーカー」や「AIガジェット」ではなく、業務の接点を増やす端末だということだ。


私の妄想 1:開発者の机に置く「副操縦士」

ここからは、かなり妄想を含める。

私の机に Solara のデスク端末があるとする。

朝、顔認証でサインインすると、Solara がこう言う。

昨日の Azure AI Search 検証で、metadata_storage_path のURLに直接アクセスできない件が残っています。
次に確認すべきは、Indexer の出力フィールド、Storage 側のロール、Search Explorer での documents 確認です。
10時の打ち合わせ前に、検証メモを作りますか?

PCの画面では Visual Studio、Azure Portal、PowerShell が開いている。
Solara の画面には、PC作業を邪魔しない形で、次のような情報だけが出ている。

今日の技術タスク
- Azure AI Search 検証レポートの更新
- GitHub Copilot CLI の動作確認
- 顧客向け説明資料の下書き
- Teams会議メモの要点確認

私が、

さっきの Git 認証エラーの手順、Qiita向けに清書して

と言うと、Solara は作業を受け取り、横で下書きを進める。

これは単なる音声アシスタントではない。
開発者の業務管制塔である。


私の妄想 2:Azure検証の現場記録デバイス

バッジ型 Solara は、顧客先や検証現場と相性がよさそうだ。

たとえば Azure Portal を見ながら、私はこう言う。

このエラーを記録。
Data Source 名、Indexer 名、エラー文、権限設定を拾って。
あとで検証レポートに入れる。

バッジは、画面の状況、音声メモ、会話内容をもとに、あとでこういうメモを作る。

検証メモ:
- Azure AI Search Basic で Indexer 作成
- Storage Blob Data Reader ロール付与後、反映待ちが必要
- metadata_storage_path のURLを直接開いても、権限によりアクセス不可
- Search Explorer から documents を確認可能
- ベクター化は既存インデックスへの後付け制約に注意

これは便利だ。

私はよく、現場でトラブルを見て、あとで手順化し、さらにQiitaや社内メモに落とす。
Solara は、その流れをかなり自然に支援できる。

RAGやAI検索は、チャット欄に質問するだけではもったいない。
現場にいる人間の視界、音声、作業文脈とつながると、技術者の記憶拡張になる。


私の妄想 3:Teams会議の外側にある会話を拾う

Teams会議の中には、録音、文字起こし、要約がある。

しかし実際の仕事では、重要なことは会議の外でも決まる。

  • 廊下の立ち話
  • 顧客先での画面共有なしの会話
  • 検証作業中のつぶやき
  • ホワイトボード前の議論
  • 作業後の「これ、あとでまとめよう」

Solara のバッジ端末は、こうした Teams会議の外側にある業務情報 を拾う可能性がある。

もちろん、これはかなり危険でもある。
録音、カメラ、位置情報、対面会話が絡むからだ。

Microsoft が Project Solara のデバイス側要素として、物理マイクミュートや録音中インジケーター、プライバシー制御を挙げているのは、この問題を意識しているからだと思う。([Command Line][2])

便利さと監視は紙一重だ。

だから、実用化するなら次が重要になる。

  • 録音中であることの明示
  • 周囲の人への同意
  • 保存期間
  • アクセス権
  • 監査ログ
  • DLP
  • Purview / eDiscovery との関係
  • 退職者・紛失端末への対応
  • 個人利用と業務利用の境界

ここを外すと、Solara は「便利なAI端末」ではなく「監視バッジ」と見られてしまう。


私の妄想 4:RAG端末としての Solara

今のRAGは、多くの場合こうだ。

ブラウザを開く
チャット画面を開く
質問を入力する
検索結果を見る
回答を読む

Solara の世界では、こうなるかもしれない。

現場を見る
音声で聞く
必要な社内資料・過去議事録・設計書・FAQ・GitHub Issue・メールを横断する
答えを音声・小画面・PC転送で返す

たとえば私は、画面を見ながらこう聞く。

このエラー、前にも出た?

Solara は、SharePoint の設計書、Teams の議事録、Outlook の顧客メール、GitHub Issue、Azure検証メモ、Qiita下書きを横断して、こう返す。

2026年5月の Azure AI Search 検証で類似しています。
原因候補は、ロール付与の反映待ち、Indexer 出力フィールド、metadata_storage_path の直接アクセス不可です。
関連メモをPCに開きますか?

これができると、RAGは「社内文書検索」ではなくなる。
現場で動く技術者の外部記憶になる。


私の見方:Solara は AI時代の thin client

私は Project Solara を、AI時代の thin client と見ている。

昔の thin client は、

画面とキーボードだけを持ち、処理はサーバー側で行う

というものだった。

Solara は、それをAIエージェント時代に置き換えたものに見える。

音声、カメラ、認証、小さな画面だけを持ち、知能と業務文脈はクラウド側に置く

端末は全部入りのコンピューターではない。
エージェントへの窓口である。

Microsoft 公式でも、Project Solara は PC、ブラウザ、電話にAIを持ち込むだけではなく、人が必要とする場所、作業の流れ、環境に近いところへ知能を持ち込むものとして説明されている。([Command Line][2])

ここが面白い。

Solara は「次のスマホ」ではない。
PCやスマホが入りにくい場所に、Microsoft 365 Copilot / Azure Agent / 業務エージェントを持ち込むための器である。


開発者として何を見るべきか

Project Solara はまだ初期段階だ。
Microsoft 自身も、これから共有することがあるとしている。([Command Line][2])

そのため、今すぐ Solara 専用アプリを作るという話ではない。

しかし、開発者として先に見ておくべきものはある。

  • Microsoft 365 Agents SDK
  • Microsoft Agent Framework
  • Copilot Studio
  • Microsoft 365 Copilot の declarative agents / custom-engine agents
  • Entra ID
  • Intune
  • WorkIQ / Microsoft Graph
  • Azure AI Search
  • Fabric
  • Purview / 監査 / DLP
  • Adaptive Cards / just-in-time UI

Microsoft は、Project Solara 向けに、Microsoft 365 Copilot の拡張、Copilot Studio、Microsoft 365 Agents SDK、Microsoft Agent Framework を使う道筋を示している。([Command Line][2])

つまり、Solara の端末が今すぐ手元になくても、エージェントを作る準備はすでに始められる


まとめ

Project Solara は、Windows Phone の復活ではない。

私は、Project Solara をこう見ている。

Windows Phone の再挑戦ではなく、
AI時代の業務用 Windows CE である。

ただし中身は Windows CE ではなく AOSP。
画面はアプリ一覧ではなくエージェント。
価値はOSではなく、Entra ID、Intune、Microsoft 365、WorkIQ、Azure、GitHub にある。

Microsoft は、スマホOSの戦場には戻らなかった。
その代わりに、業務AI端末の管理層、認証層、エージェント実行層を取りに来た。

私はここがとても Microsoft らしくて、かなり面白いと思っている。

最後に一言でまとめるなら、こうだ。

Solara は、AIエージェントをPCやスマホの外へ連れ出すための、Microsoft製の業務端末プラットフォームである。

外していたらごめんになさい、

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