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BeRealによる機密情報流出騒動について思うこと

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Last updated at Posted at 2026-05-06

はじめに

事の発端は、九州にある西日本シティ銀行へ入社した女性社員が、BeRealというアプリで自撮りをした結果、ホワイトボードに書かれている内容が一緒に映り顧客情報が流出したというインシデントである。1

当の銀行の謝罪文も、一体誰に対して何を謝罪しているのか、まるでわからない文章である。「拡散された事案」と分に書いてあるあたり、何が原因だったのかまるで理解していないように見える。

また、そのポストに対する返信を見ても「特定のツール(BeReal)の問題」や、あるいは単なる「情報管理の不徹底」、「銀行の他責思考」「また承認欲求の暴走か」「馬鹿な若者が浅はかな行動で機密漏洩」みたいな低レベルな言説が目立つ。

論点はそこじゃないでしょ!

BeRealとは?

この時まで、自分はBeRealについて何も知らなかったが、調べてみると一定時間おきに通知が来て、強制的にカメラで撮影させるというアプリのようで、スマフォを持ち始めた10代から、大学生の20代の人間に人気があるようである。

「全世界へGo」とか「fushianasanトラップ」を知る世代から考えると、「自分の顔を晒すとかありえない」と思うが、人気があるということは何らかの理由があると考えるべきである。

調べてみると、BeRealは、「2分以内」「加工不可」「強制撮影」という強烈な「不自由」 を課すことで、逆に「ありのままを出すしかない状況」を作り出しているツールのようだ。

最近ではすっかり、一部のインフルエンサーの草刈り場とかしてしまっている感がある、FacebookやTwitter(X)も、初期の頃は「腹減った」「スタバなう」みたいな他愛のない投稿を制限文字内で投稿する場所だったはずである。

それが今となっては、総じてインフルエンサーやアルゴリズムによって、「日常の共有」という牧歌的な世界から、「承認欲求を最大化するためのコンテンツ制作」という、インプレッション奴隷市場になってしまっている感がある。

Xを例にとっても、今となっては有償契約していれば、長文も書き込むことができるようになったし、何ならお金をかけてバズらせることもできる。

そうなると当然、脚色も増えてくる。しかし、そういうキラキラしたものを見た若者は、どう思うだろうか?「日頃の自分って一体なんだろう?」と考えるのではないだろうか?

自分の予想であるが、おそらく、BeRealとはそういった脚色なしで自分の日常を強制的に切り取るツールであり、それによって、彼らなりの等身大の記録を残すことができるツール…そういうものに価値を見出しているのではないだろうか?

そう考えると「自己承認欲求の暴走」という解釈は、全く的を得ていない言説と言えるだろう。「何が彼(女)らをそうさせたか」の理解なしにルールで縛っても、別の類似サービスやツール、デバイスなどで確実に同じ過ちを繰り返す。

なぜなら、人を動かすのはルールではなく、ストーリーだからである。

ルールは、黒でないなら白である

この手のインシデントが起きたときに、管理がすることは「BeReal禁止」とか、「スマフォの持ち込み禁止」のようなルールで安直に縛ることを考えがちである。

しかし、事あるごとにルール追加を繰り返すと、策定する方はちゃんとそのルールが守られているのかチェックする負担が増大するし、守らせる方も◯◯してはダメとか覚えることが多くなってしまう。

また、このルールには「◯◯してはダメとは書かれているが、✕✕をしてはダメだとは書いていないから大丈夫」と解釈し、結局抜け穴を探してインシデントを起こしたりする。逆に、行動するべきときに「ルールでだめと書いてあるので」と脳死で何もしない言い訳にも使われることが予想される。

はっきり行って誰も得しない

その時は対策したと思っても、長期的視座で何の対策になっていないばかりか、イノベーションを阻害するだけである。「ルールで縛ればいい」と安直に考えることは、このように管理者の運用コストを上昇させるだけではなく、使用者の自分の頭で考える能力も奪う事であり、長期的に見て手痛いしっぺ返しを食らうのだ。

Qittaは、技術者向けのサイトなので、ルールで縛ることをプログラムで例えることにしよう。
これは、if文がやたらと多いコードのようなものである。そういうコードは当然メンテナンス性も悪化するし、テストも煩雑になる。

そういうコードを見ると、みんなこう言うよね:クソコードだ!

で、管理側の人間は、自分たちが仕事をしているという方便としてルールを作る。結局のところ、責任回避の方法として管理自身も自分で考えることを拒否し、何かが起きたときに自分が責任を追わなくて済む方法だけを考えているに過ぎない。

だから、後日愛知県瀬戸市にあったミスタードーナッツのような類似事件が発生する。

ルールはWhatではなくWhyで考えろ

さて、先も述べたように、BeRealをバズらせるための自己表現の場と考えると、承認欲求の暴走というように問題を見誤る。テンプレ言説である「若者の孤独感が〜」の下り2も同様である。しかし、「ライフログの場」と考えると別の側面が見えてくる。

彼らは、一言日記を強制的に書かせるツールとしてBeRealを運用しているということになる。つまるところ、「その瞬間が価値」ということになる。

そういった人たちに「職場内で写真を取るな」というのは、おそらく考えている以上に反発があるだろう。BeReal禁止とかスマフォ禁止とか言うよりむしろ、「なぜ、いけないのか」を教える方がよっぽど大事である。

社会人なら常識でしょ」とか「子供じゃないんだから」「学生気分が抜けていない」と管理職の心理として理解できるが、そこに甘えがあることには間違いはない。

そもそも論として、「所変われば品変わる」という言葉があるように、新人社員や転職組、会社や団体、業界においても常識は変わるのに、自分たちの価値観を絶対視してしまう点は、明らかに傲慢といえるだろう。

具体的にどうすればいいのか?

まず、教えるべきことは、まず第一に、ネット上にアップされた情報は、どんなサービスであれ原理的に「消されない」ことを理解させることである。

消されない」というより、自分の管理可能な場所の外側に行ってしまうといったほうが正しいかもしれない。噂には尾ひれがつくように、全く関係ない事象と組み合わさって思わぬ形で拡散されるケースもある。

有名な例だと、赤さんの画像である。2000年頃、アメリカでアップされた赤ちゃんの画像が、煽っているように見えたのか、2chで「まさに外道」というワードとともにミーム化してしまった。
おそらく、親が自分の子供が面白い顔をしたので、たまたまその時の写真をとり、自分のサイトかSNSにアップしただけだったつもりだろう。そんな他愛もない画像が、海を越え「煽り画像」として使われてしまったというのが真相だろう。

もっとも、使われた当人はその様子を楽しんでいるようなので、問題ないといえば問題ないが…。

なので、最初にやるべきことは、自分の情報をネットにアップすることへのリスクの説明である。単に「ネットに自分の撮った写真をアップするな」というようなスコープの広いものは守られない。

相手を動かすには、「ネットに自分の撮った写真をアップすると、意外なところで特定されますよ。例えば…」みたいな言い方で、本人の目線で具体例を示し説明するべきである。

多くの記事は、若者世代も情報漏洩に関する学習をしていると書いてあるが、その教育の仕方に問題はなかったのだろうか?「学習」と書いてあるあたり、単に教科書に書いてある事を読ませただけだったのではないだろうか?

教科書に書いてある事は、「リアル」じゃない。

これは、今回のような自撮りの機密漏洩に限った話じゃない。結局のところ、ルールをつくる(What) ではなく、起こさないためにはどう教えたらいいか(Why) の問題なのである。先も述べたように「人間はストーリーで動く」ので、Whyの解決なしで人を動かしたりすことはできない。

月並みだけど、相手に寄り添うことが大事なのです。

一番手っ取り早いのは、頭ごなしに否定するのではなく、自分でこの手のアプリケーションをインストールして、実際使ってみてどこが危険で、どこまでが安全なのかの線引を見極めて、体験することである。

思わぬ発見があるかもしれないし、思わぬイノベーションへの入口があるかもしれない。なんせ、若者に支持されているということは、新たなる需要創出のチャンスがあるということでもあるし。

ルール(What)ではなく、Whyを共有する教育へシフトしよう。

  1. 厳密には、2年前にアップされた動画が今頃になって流出したもののようだが、本文で言いたいことの本質ではないので、あえて触れないでおく。

  2. 「若者の孤独」構文は何十年も昔から毎年のように言われている。結局のところ「最近の若いものは…」と言っているのと同じで、自分が思考停止している事を自己紹介する恥ずかしい言説なので、見かけたら「あっ」と察しよう。

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