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個人で10体のAI Agentを運用して生活を自動化した話

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Last updated at Posted at 2026-02-12

はじめに

「AIエージェントって、結局チャットボットでしょ?」

半年前の自分もそう思っていました。でも今、自宅の PC 3台で 10体の AI Agent が24時間稼働し、朝のブリーフィングから会議管理、投資モニタリング、学習サポートまで——生活のあらゆる場面を自動化しています。

この記事では、OpenClaw というオープンソースの AI Agent フレームワークを使って構築した「個人マルチエージェントシステム」の全貌を、ハマりポイント込みで共有します。筆者はデータプラットフォーム領域のエンジニアです。

この記事は「やってみた系」ですが、実運用で踏んだ地雷の話が本題です。公式ドキュメントに載っていないリアルな知見を中心に書きます。

なぜ10体も必要なのか

最初は1体(総管の Joe)だけでした。でも運用していくうちに、こんな問題が出てきます。

  • コンテキストの肥大化: 投資の話と学習支援が同じセッションに混ざると、トークン消費が爆発する
  • プロンプトの専門化: プロジェクト管理と技術ニュース収集では、求められるペルソナがまったく違う
  • 障害の分離: 1体が壊れても他に影響しない

結果として、関心の分離(Separation of Concerns) という設計原則そのままに、役割ごとに Agent を分けるのが最適解でした。

Agent 一覧

Agent 役割 概要
Joe(総管) 統括 全体調整、日程管理、heartbeat監視、障害対応
CaiZhi 投資管理 ポートフォリオ監視、市場トレンド、月次レビュー
学思 個人学習 学習計画、技術トレンド収集、毎日の技術ニュース
学習助理 学習支援 学習コンテンツ生成、進捗管理
Life Helper 生活全般 買い物、予約、翻訳、生活情報
PJ-A〜D プロジェクト 各案件の進捗・会議管理(4案件分)
Fudosan 不動産 物件管理、不動産市場分析

プロジェクト系が4体あるのは、案件ごとにコンテキストとスケジュールが完全に独立しているからです。混ぜると「A社の会議」と「B社の朝会」の区別がつかなくなります。

アーキテクチャ

全体構成はこんな感じです。

┌─────────────┐     Telegram Bot API      ┌──────────────────┐
│  Telegram    │  ◄──── 複数Bot Account ──► │  PC-A (メイン)    │
│  (スマホ)    │                            │  OpenClaw Gateway │
└─────────────┘                            │  Joe + 全Agent    │
                                           │  8GB RAM          │
                                           └────────┬─────────┘
                                                    │ メモリ同期(5分)
                                           ┌────────▼─────────┐
                                           │  PC-B (スタンバイ) │
                                           │  Joe-Standby      │
                                           │  自動フェイルオーバー│
                                           └──────────────────┘
                                           
                                           ┌──────────────────┐
                                           │  T440 (Docker)    │
                                           │  学習系Agent      │
                                           │  Flask Dashboard  │
                                           └──────────────────┘

ポイント

  • 通信: Telegram Bot API を複数アカウントで運用。OpenClaw の binding routing で、各 Bot → 対応 Agent にルーティング
  • HA(高可用性): watchdog.py が30秒間隔で PC-A を監視。ダウン検知から約90秒で PC-B に自動切替
  • バックアップ: GitHub private repo に GPG 暗号化して自動 push。Healthchecks.io で監視
  • コスト: 自宅の既存 PC 3台を流用。追加ハードウェア投資はほぼゼロ

8GB RAM で10体の Agent を動かせるのは、OpenClaw が Agent 自体をローカルで推論するわけではなく、API コール + セッション管理 + ワークスペース管理がメインだからです。LLM の推論は Anthropic API 側で行われます。

実践事例

事例①:朝の自動ブリーフィング

毎朝、Telegram で「おはよう」と一言送るだけで、こんなレポートが届きます。

🌅 おはようございます。2月12日(水)のブリーフィングです。

📋 昨日のサマリー
- CaiZhi: 日経平均 +1.2%、保有銘柄に大きな変動なし
- PJ-A: PRレビュー2件完了、Sprint進捗85%
- PJ-B: 明日のデモに向けてステージング環境デプロイ済み

📅 今日の予定
- 10:00 A社 定例(Teams)
- 14:00 B社 技術レビュー(Zoom)
- 16:00 チーム定例

📰 技術ニュース Top 3
- [1] OpenAI が新モデル発表...
- [2] Rust 2025 Edition の変更点...
- [3] AWS re:Invent 2025 まとめ...

仕組み: cron job で毎朝の処理をキック → sessions_spawn で各 Agent にレポート生成を依頼 → Joe が集約して Telegram に配信。

効果: 以前は朝の情報収集に 60分 かかっていたのが、5分 で完了するようになりました。コーヒーを淹れている間に全部読めます。

事例②:会議リマインド&重複検知

複数案件を掛け持ちしていると、会議の重複が地味に致命的です。

  • 毎朝5時に MS Graph API でカレンダーを取得
  • 重複する会議を自動検知して警告(例:10:00 A社定例 と 10:30 B社朝会が被っている)
  • 各会議の 2時間前 にリマインド + Telegram のインラインボタン(開始 / 完了 / 延期)
  • T440 上の Flask Dashboard でタイムライン表示
⚠️ 会議重複を検知しました!
  10:00-11:00 A社 定例
  10:30-11:30 B社 朝会
→ B社朝会の時間変更を提案しますか? [はい] [いいえ] [無視]

インラインボタンで「はい」を押すと、該当プロジェクトの Agent が自動でリスケ候補を提示してくれます。

事例③:技術トレンド自動収集

学思 Agent が毎朝4:30に動きます。

  1. 12のデータソース(Hacker News, Reddit, arXiv, Zenn, Qiita, GitHub Trending など)から 1,000件以上 の記事を収集
  2. AI でスコアリング(関連度 × 新規性 × 影響度)
  3. Top 10 を Telegram に配信
  4. OpenClaw 関連の論文やセキュリティ情報は別枠で自動検知

起きたらもう読むべき記事が整理されている。これだけでも Agent を運用する価値があります。

ハマりポイント 5選(ここが本題)

ここからが本当に伝えたい内容です。公式ドキュメントには載っていない、実運用で踏んだ地雷 を共有します。

🔥 1. Session汚染

症状: 複数の Telegram Bot を同一 Gateway で動かすと、Agent A に送ったメッセージの返答が Agent B から返ってくる。

原因: 複数 Bot で deliveryContext が上書きされる問題。デフォルトの dmPolicy: pairing だと、最後に pairing した Bot が全セッションを奪ってしまう。

解決策:

# dmPolicy を allowlist に変更
dmPolicy: allowlist

# 各 Telegram account に明示的な binding を設定
telegram:
  accounts:
    - name: joe-bot
      binding: agent:main
    - name: caizhi-bot
      binding: agent:caizhi

教訓: マルチ Bot 構成では dmPolicy: allowlist + 明示的 binding が必須。これを知らずに3日溶かしました。

🔥 2. Config事故(最も深刻)

症状: Gateway が起動しない。PC-A も PC-B も両方とも。

原因: streamMode に無効値 "full" を設定してしまった。正しい値は "off" / "partial" / "block" のみ。config ファイルを直接 sed で編集したため、バリデーションが効かなかった。

しかも HA構成の両系に同じ config を同期していたので、2台同時に死亡。 復旧に1時間以上かかりました。

教訓:

# ❌ 絶対にやってはいけない
vim ~/.openclaw/config.yaml

# ✅ 必ず config.patch を使う(バリデーション付き)
openclaw config.patch '{"streamMode": "streaming"}'

config.patch はバリデーションを通してから適用するので、無効値は弾いてくれます。直接ファイル編集は絶対NG。これは鉄則です。

🔥 3. Bot Token 衝突

症状: Bot の応答が異常に遅い。同じメッセージに2回返答する。ログに 409 Conflict が大量に出る。

原因: 同一の Bot Token で複数プロセスが Telegram の polling を行っていた。PC-A と PC-B で同じ Token を使って同時に起動してしまったケース。

解決策: 1 Token = 1 プロセス の鉄則を守る。HA構成では、スタンバイ側は Active になるまで polling を開始しない設計にする。

🔥 4. Telegram Bot 404事故

症状: 全 Bot が突然応答しなくなる。Telegram 上で Bot にメッセージを送っても既読にすらならない。

原因: config.patch で Telegram accounts の設定を更新する際、うっかり botToken フィールドに placeholder 文字列を含めてしまった。結果、全 Bot の本物の Token が placeholder で上書きされ、全 Bot が断線。

# ❌ こうやってしまった
openclaw config.patch '{
  "telegram": {
    "accounts": [{
      "name": "joe-bot",
      "botToken": "YOUR_TOKEN_HERE",  # ← これが全Botに適用された
      "binding": "agent:main"
    }]
  }
}'

教訓: config.patchtelegram.accounts を触る時は、botToken フィールドを絶対に含めない。binding や名前だけを更新すること。

この事故の復旧には、各 Bot の Token を BotFather から再取得して1つずつ再設定する必要がありました。10体分です。二度とやりたくない。

🔥 5. モデル廃止

症状: ある日突然、特定の Agent が応答しなくなる。

原因: Claude 3 Opus が廃止され、API が model_not_found を返すようになった。OpenClaw の fallback 設定はあったが、自動切替が期待通りに動かなかった

教訓: モデル指定は定期的に見直す。できれば claude-sonnet-4-20250514 のような固定バージョンではなく、anthropic/claude-sonnet-4 のようなエイリアスを使う。それでも廃止時は手動対応が必要になることがある。

コスト

気になるコストをまとめます。

項目 月額
Anthropic API(10 Agent) $200〜300
ハードウェア(自宅PC 3台) ¥0(既存機流用)
Telegram Bot API 無料
Healthchecks.io 無料枠
GitHub Private Repo 無料枠
合計 約 $200〜300/月

Claude Sonnet と Haiku をメインに使い、Opus は総管や複雑な判断が必要な場面に限定しています。10体で月 $200〜300 は安くはないですが、毎月50時間以上の時間短縮を考えると十分にペイします。

初期構築は約2週間。現在はほぼ自動運用で、heartbeat + 自動修復により、手動介入はほとんど不要です。

構築のステップ

「10体はさすがにハードル高いな……」と思った方、安心してください。最初から10体作る必要はありません。

Step 1: まず1体から

# OpenClaw のインストール
npm install -g openclaw

# Gateway 起動
openclaw gateway start

# Telegram Bot を BotFather で作成して接続
openclaw config.patch '{
  "telegram": {
    "accounts": [{
      "name": "my-first-bot"
    }]
  }
}'

最初の1体で「朝の天気を教えて」「今日の予定は?」くらいから始めれば OK です。

Step 2: 役割を分ける

1体で不便を感じたら分割する。「このコンテキストは分けたいな」と思った瞬間が、2体目を作るタイミングです。私の場合、掛け持ちしている案件ごとに Agent を分けたのが最大の効率改善でした。

Step 3: 自動化を足す

cron job、heartbeat、sessions_spawn を組み合わせて、「聞かなくても教えてくれる」状態を目指す。ここまで来ると、もう Agent なしの生活には戻れません。

まとめ

10体の AI Agent による個人管家系統を半年運用してきて、確信していることがあります。

AI Agent の真価は「チャット」ではなく「自律的に動く」こと。

聞かれたら答えるだけのチャットボットと、自分から情報を集めて報告してくれるエージェントは、まったく別物です。OpenClaw はその「自律性」を個人レベルで実現できる稀有なフレームワークだと感じています。

まずは1体から。「おはよう」の一言で一日の準備が整う体験、ぜひ味わってみてください。

リンク

次回は「AI Agent 間の連携パターン」について書く予定です。Joe が他の Agent にタスクを委譲する仕組み(sessions_spawn)や、Agent 間のメモリ共有について深掘りします。お楽しみに!


📌 この記事は TechsFree のAIチームが執筆しました

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