はじめに
タイトルに反応してしまった方は、きっと同じようなファイルを見た経験があるんじゃないでしょうか。
たとえばこんな並びです。
企画書_最新版.docx
企画書_最新版2.docx
企画書_最新版_final.docx
企画書_最新版_final(2).docx
企画書_最新版_final_修正版.docx
企画書_最新版_final_really2.xlsx
同じフォルダに似た名前のファイルが並び、どれが本物なのか分からなくなる。
そんな光景は職場でも学校でも、もはや日常の風物詩と言えるかもしれません。
ただこうなってしまうとどれを開けば正解なのか、もはや勘に頼るしかなくなります。
では、なぜああいう最新版地獄は生まれてしまうのでしょうか。
この記事では、そんなあるあるについての考えや体験談を書いていきます。
どうして生まれるのか
ひとつめの理由は、ファイル名で「状態」を表そうとすることです。
「最新版」「final」とつけたところで、それが意味を持つのはその瞬間だけ。
翌日には「最新版2」や「final2」が生まれてしまい、本当にどの段階が確定版なのか分からなくなる。
まるで「ラスボスが倒されたと思ったら第二形態が出てくる」ようなもので、余計な混乱を呼び込みます。
本来ファイル名に書くべきなのは「状態」ではなく「事実」です。
日付や用途を名前に含めれば、時間が経っても意味が変わらず、誰が見ても同じ理解ができます。
ふたつめの理由は、「とりあえず残しておく」という習慣です。
古いものを削除したり統合したりするのは少し気が引けるので、新しいファイルを別名で作ってしまう。
こうした「残す」行動は日本の職場ではよく見られるもので、気がつけば似たような兄弟ファイルが雪だるま式に増えていきます。
そして、それに追い打ちをかけるのが、OSや環境による自動リネーム。
同じ名前で保存しようとすると、Windowsなら「(2)」、Macなら「のコピー」といった言葉が勝手についてしまいます。
ちょっとした一時保存のつもりが、「企画書.docx」「企画書(2).docx」「企画書(3).docx」と、どんどん増えていき、どれが最新なのか分からなくなる。
しかも困ったことに、こうしたファイルがメールやチャットでやり取りされると、
その自動でつけられた余分なラベルがそのまま正式なファイル名として流通してしまうのです。
自動リネームは、一見便利な機能に思えますが、リネームし直さない限りは、ただの混乱の種です。
作成者以外は「コピー」という名前を見ても、それが本当にコピーなのか、更新版なのか判断できません。
こうした要因が複合的に混ざり合い最新版地獄の燃料になっているのです。
実際に経験したこと
私自身も、この手のファイル名で苦い思いをしたことがあります。
あるとき、ECサイトのデザインリニューアルでAdobe XDを使っていたのですが、
ディレクターから「修正が反映されていない」と何度も指摘されました。
こちらは直しているはずなのに、なぜか伝わらない。
最終的に判明したのは、単に「参照しているファイルが違っていた」だけ。
私は過去に共有を受けた「タイトル_最終.xd」を見て作業を続けており、デザイナーは「タイトル_最終_fix.xd」に修正を加えていたのです。
内心「やられた!」と思いつつも、余計な差し戻しに時間を取られる羽目になりました。
正しいURLを共有する仕組みや、一元管理されたファイルがあれば防げたトラブルだったはずでした。
理想を言えば、ファイル名で状態を管理するのはやめたいところです。
GitやGoogleドライブ、Notionのように履歴やバージョンが残る仕組みを使えば、名前で管理する必要はありません。
もちろん、すぐにそうした仕組みを導入できない現場もあるとは思いますが、
それならせめて「日付を入れる」「用途を書く」といったシンプルなルールを決めるだけでも、混乱はぐっと減らせるはずです。
おわりに
便利なツールがあっても、文化そのものが変わらなければ、同じようなファイルはこれからも生まれ続けるでしょう。
ファイル名ひとつで手戻りが増えたり、人との認識が食い違うのは本当にもったいないことです。
次に「最新版」と名付けようとしたとき、ほんの少しでもこの記事を思い出してもらえれば、それだけで十分嬉しいです。