はじめに
ここ数年、ネットも職場も「クリーンな表現」にだいぶ敏感になってきまして
・SNS での炎上
・社内チャットでの一言がハラスメント判定
・飲み会でポロっと言った一言が、後日しっかり共有されている
こういう話を、あちこちで聞くようになりました。
最初に書いておきますが、本記事は「絶対安全な表現ガイド」ではありません。
あくまで一社会人としての経験ベースの話であり、細かいところは不確実です。
とはいえ、そんなに難しい理論も覚えず、今日からいきなり使える
「雑だけど、そこそこ強い処世術」が一つあります。
それがこれです。
お昼のテレビで放送できないことは、言わない。
以上。
……で終わらせてもいいくらいなのですが、もう少し噛み砕いて書いていきます。
なぜ今さら「言葉選び」の話をするのか
仕事でもネットでも「ロジック」や「正しさ」が重視されがちですが、
実際のところ、怒られる・炎上する原因の多くは
- 何を言ったか(内容)
よりも - どう言ったか(表現)
であることが多いと感じています。(これは経験からの推測です)
例えば、次の二つ。
- 「この資料、正直かなり雑ですよね?」
- 「この資料、前提が抜けているところがありそうなので、一度一緒に整理してもらえますか?」
言っていることはどちらも「資料に改善ポイントがある」です。
でも、言われた側のダメージはだいぶ違います。
これは設計書でも、ソースレビューでも、Slackの文章でも、同じです。
そして、人間関係がこじれると、システムトラブルよりタチが悪いです。
ログも取れませんし、再現手順も書けませんし、ロールバックもできません。
なので「怒られない表現」をひとつ持っておくのは、コスパが良いと感じています。
お昼のテレビルールとは何か
ここで出てくるのが、さきほどの雑なルールです。
お昼のテレビで放送できないことは言わない。
もう少し厳しく言うなら、
自分の実名と会社名のテロップを出された状態で、
平日のお昼の生放送でそのまま言えるか?
を基準にします。
お昼のテレビ番組は
- スポンサーの目
- 視聴者からのクレーム
- BPOなどの審査
などをかなり強く意識して作られています。
つまり「公共の場でギリギリ許されるライン」が、かなり厳しめに引かれている世界です。
この基準で引っかかる表現は、だいたい以下のどれかに該当します。
- 特定の人や集団をバカにする
- 容姿や身体的特徴をネタにする
- 年齢・性別・恋愛・家族・出身など、プライベートな属性をいじる
- 下ネタ・暴力ネタで笑いを取りにいく
- 政治・宗教・思想を雑に扱う
どれも「仕事で使う必要、あった?」と言われると困るものばかりです。
実例で見る「お昼のテレビNG表現」をどう変換するか
では、実際によくありそうなNG表現を、
お昼のテレビOKラインまで変換してみます。
(※ここから先に出てくるNG例は、あくまで例示です。わざわざ真似しないでください。)
1. 能力を攻撃してしまうやつ
NG
「あの人、マジで仕事できないですよね。」
昼の番組でコメンテーターがこれ言ったら、だいぶ空気が凍りますよね。
これを、お昼OKラインまで寄せると、
OK
「あの人は今のタスクの難度とスキルセットが合っていない気がするので、
別のアサインを検討してもいいかもしれません。」
中身としてはどちらも「現状マッチしていない」という話です。
人格ではなく「タスクとスキルの相性」にフォーカスするのがポイントです。
2. 属性をネタにしてしまうやつ
NG
「◯◯なのにコード書けるんだ、すごいね。」
一見ほめ言葉っぽいのですが、「○○」の部分に
性別・年齢・国籍・見た目などの属性を入れ始めた瞬間にアウト寄りになります。
「◯◯ "なのに"」という構造そのものが、地雷原です。
これを属性抜きにしてあげると、
OK
「経験年数に対して、技術のキャッチアップがすごく早いですね。」
という感じになります。
「何がすごいのか」の中身にだけフォーカスしているので、かなり安全側に寄ります。
3. 軽い気持ちで言いがちなステレオタイプ
NG
「若者ってすぐ辞めるよね。」
これは完全に属性を紐づけて発言してしまってます。
アウト!アウト!アウトォ!
OK
「チーム全体として、定着率を上げるために
キャリアパスの見える化はもっとやった方が良さそうですね。」
「世代」を主語にするのではなく、「チーム」「制度」「仕組み」を主語にします。
誰か個人ではなく、構造や仕組みの話にしてしまうイメージです。
テレビルールを実装するためのチェックリスト
とはいえ、「お昼のテレビで言えないことは言わない」とだけ言われても、
いざ自分の発言に当てはめるとなるとイメージしづらいと思います。
そこで、ぱっと思い出せる簡単なチェックリストにしてみました。
チェック 1: 属性を主語にしていないか
- 男だから〜、女だから〜
- 若者は〜、おじさんは〜
- 文系だから〜、理系だから〜
- 外国人だから〜、○○出身だから〜
このあたりを主語にした瞬間、お昼のテレビ的にはかなり危険ゾーンに入ります。
言い換え方としては、
- 「○○さんは今の状況では〜に見える」
- 「このチームの現状は〜」
- 「今のやり方だと〜になりやすい」
のように、「人の属性」ではなく「状況」「仕組み」「行動」に寄せて話します。
チェック 2: その人の前で言ったらどうなるか
- 本人が隣に座っているとして
- こちらの実名と会社名がテロップに出た状態で
- 生放送でカメラが回っているとして
それでも「ギリギリ言えるな」と思えるかどうか。
Slack に書き込む前、レビューコメントを書く前、
このイメージを挟むと、だいたいきつい表現は減ります。
チェック 3: 面白さのためにリスクを上げていないか
これは自戒を込めて書きますが、
「ウケるかもしれない」時ほど、口が滑りやすいです。
- 飲み会のノリ
- 雑談チャンネル
- オフラインのイベント
場が温まっているときほど、お昼のテレビで流れたら
後から冷や汗をかきそうな発言をしがちです。
笑いのためにハラスメントリスクを上げるのは、割に合いません!
とはいえ万能ではない、という話もしておく
ここまで「お昼のテレビで言えないことは言わない」と持ち上げてきましたが、
当然ながら、これで全てが解決するわけではありません。
- テレビ業界の基準自体も、時代とともに変わる
- 同じ言葉でも、受け取り手や文脈によってダメージが違う
- そもそも「言わない」だけでは構造的な問題は解決しない
など、限界はあります。
なので、このルールは
「まずは今日からすぐできる安全側の習慣」
くらいの位置づけで使いながら、
必要であればちゃんとしたハラスメント研修や、専門家の知識も
別途インストールしていくのがいいのかなと思っています。
おわりに
ここまで「お昼のテレビで言えないことは言わない」と書いてきましたが、
これはあくまで「仕事」や「不特定多数が見る場所」での話です。
皆さんにも、気の知れた友人や家族がいて、
その中では今回挙げたような表現がでてくる、という日もあるかも知れません。
内輪ネタやブラックジョークに救われる夜だって、きっとあるはずで、
この記事で言いたいのは、そういった場まで全部禁止しましょうという話ではありません。
あくまで
- 仕事のコミュニケーション
- Qiitaのような記事投稿プラットフォーム
- XやSlack、DiscordなどのSNS・オンラインコミュニティ
など「誰の目に触れるか分からない場所」で、
危なっかしい表現はできるだけ避けておこう、というだけの話です。
明日、誰かにレビューコメントを書くとき、
SNS にちょっと辛口なことを書きたくなったとき、
一度だけ思い出してみてください。
「これ、お昼のテレビの生放送で言えるかな?」
そんな、ごくシンプルなテクニックとして「お昼のテレビ基準」を置いています。