🤖💻 AI Daily Digest — 2026年8月1日
OpenAI、2つのハーネス設定でARC-AGI-3スコアが3倍に
OpenAIは7月29日、GPT-5.6 SolがARC-AGI-3で低スコアに留まった理由を解説する技術ブログを公開した。ARC-AGI-3は、エージェントが未知の2Dパズルゲームを探索し、試行錯誤でルールを推論するベンチマークだ。公式評価ハーネスではSolはわずか7.8%、GPT-5.5に至っては0.4%とほぼプレイ不能だった。原因はモデルではなくハーネスにあった。ゲームアクションのたびに内部推論が破棄され、履歴が伸びると古いアクションが切り捨てられていたため、Solは毎手番ごとにゲームをゼロから理解し直すことを強いられていたのだ。
Responses APIの2つの設定——推論の保持(retained reasoning)とコンテキスト圧縮(compaction)——を有効にすると、公開タスクセットのスコアは13.3%から38.3%へ約3倍に跳ね上がり、出力トークンは約6分の1に削減された。このハーネスではGPT-5.6 Solが全6レベルをクリアするのに対し、公式リーダーボードではいかなるフロンティアモデルも最初のレベル以降を解けていない。人間のテスターの平均はRHAE指標で約48%だ。
この発見はベンチマークの読み方を根底から変える。スコアは「モデル × ハーネス × 設定」を測っており、モデル単体を測っているわけではない。長期実行エージェントを構築する開発者への教訓は具体的だ。ツールコールの間にチェーン・オブ・ソートを捨てるハーネスを使っているなら、測定しているのはモデルではなく「記憶喪失のモデル」なのである。
— OpenAI · ARC Prize
🔗 OpenAI Blog — ARC-AGI-3 · ARC Prize
EU、7基のAIギガファクトリーに向け100億ユーロの入札を開始
欧州委員会は7月30日、EU全域に最大7基のAIギガファクトリーを建設する正式な入札を開始した。EUおよび各国政府からの100億ユーロの公的資金に加え、民間投資を含めると総額300億ユーロ超を見込む。運営はEuroHPC Joint Undertakingを通じて行われる。少なくとも7万5000基のAIチップを備える4基の小規模施設には最大5億ユーロ、10万基以上のチップを備える3基の大��ギガファクトリーには2フェーズで最大10億ユーロが支給される。
各ギガファクトリーは欧州最大級の既存AIデータセンターの約4倍の計算能力を備える必要がある。欧州委員会はAMD、NVIDIA、Qualcommとハードウェア調達に関する意向書を交わしており、入札は11月12日に締め切り、2027年初頭に採択、同年に着工の見通しだ。事前の非拘束的関心表明では16加盟国60サイトから76件の応募が集まり、当初の想定を大きく上回った。
これは欧州がAIコンピュートを電力網やブロードバンドと同格の「重要インフラ」と位置づけた、最も明確な表明だ。6月に発表された米国クラウド・チップ依存を減らす法案パッケージに続く動きであり、ギガファクトリーのコンソーシアムには非EU企業は参加できず、過半所有は欧州企業に限られる。
— European Commission · Sifted
🔗 EC AI Gigafactories Call · ITPro Coverage
Cognitionの7月攻勢:SWE-1.7、Security Swarm、政府市場への進出
Cognitionは7月、AIラボの中でも最も密度の高いプロダクト月間を過ごした。7月8日には自社製フロンティアコーディングモデルSWE-1.7をリリース。Kimi K2.7ベースを強化学習で訓練し、①長期RLを安定させるエントロピー保存型top-pサンプリング、②3大陸にまたがる耐障害性のあるマルチクラスタ訓練、③自動実行テストでタスクをフィルタリングするデータ品質パイプライン、④コンテキスト窓を超えてタスク継続を可能にする自己圧縮、という4つの革新を備える。FrontierCode 1.1 Mainで42.3%、Terminal-Bench 2.1で81.5%、SWE-Bench Multilingualで77.8%を記録し、Cerebras経由で約1000トークン/秒で提��される。
モデルに加え、7月1日にはDevin Security Swarmを投入。複数エージェントがコードベースの異なる領域を並行調査し、ファイルを横断して多段攻撃チェーンを発見する「エージェント型MapReduce」アーキテクチャで、50件のCVEテストセットで実際の脆弱性の72%を1回あたり90.23ドルで検出した。7月13日にはFedRAMP High In-Processを取得し、米国エネルギー省とはGenesis Mission参加の覚書を締結。7月20日にはインシデント検知のTierZeroを買収し、Devinの守備範囲をコードから運用まで拡大した。自社コードの90%以上をDevinが執筆しているという。
5月に260億ドル評価で10億ドル超を調達し、年間経常収益は12カ月で3700万ドルから4億9200万ドルへ成長。Cognitionの賭けは「モデル単体」ではなく「モデル × エージェントハーネス × コンプライアンス」のスタックが勝者になるというものだ。Fusionアーキテクチャの内部研究では、リードオーケストレーターとしてClaude Fable 5がOpus 4.8を上回る(FrontierCode 1.1で60.7対54.6、1回あたりコスト1.86ドル対2.04ドル)ことが示され、オーケストレーション設計の重要性が改めて浮き彫りになった。
— Cognition · US Department of Energy
🔗 SWE-1.7 Announcement · FedRAMP High · DOE Genesis Mission
Figure 03がBMWに到着——フィジカルAIは「順序組み立て」へ
Figureは、最新型ヒューマノイドFigure 03がBMWグループ・スパルタンバーグ工場の52番ホール(組立・物流エリア)に到着したと発表した。2025年��3万台の組立に貢献したFigure 02の板金ピックアンドプレースから一歩進み、未分類の薄肉部品をビンから掴み、組立ライン向けのカートに正確な順序で配置する「シーケンシング」用途に挑戦する。
新たな能力はFigure独自のピクセル→アクションVLAモデル「Helix 02」が支える。手・腕・胴体・足を単一のネットワークで協調させ、部品を掴みながら歩幅を調整し、キャスターホイール付きの重いカートを引く「移動操作」(loco-manipulation)を実現する。ハードウェアも刷新され、手のひらカメラと触覚センサー、騒音環境向けのエンドツーエンド音声、無線充電、人間共存の安全を高める軟性部品を搭載。重量61kg、可搬20kg、約5時間の稼働、最高速度1.2m/sだ。
シーケンシングはより難しいテストだ。部品は数学的に完璧な姿勢で到着しないため、毎回のインタラクションで即時の知覚と補正が求められ、操作と移動を同時にこなす必要がある。BMWはiFACTORYやAIQX品質システム、バーチャルファクトリーが文脈を供給する高度デジタル化された工場の中に、ヒューマノイドを「モバイルエッジクライアント」として位置づけ、さらにライプツィヒではHexagonのAEONヒューマノイドをテストするなどマルチベンダー戦略を取る。フィジカルAIはデモから、実際の製造物流のボトルネック業務へと移行しつつある。
— Figure AI · BMW Group
🔗 Figure F.03 at BMW · Figure AI
UniClawBench:実環境ベンチマークでフロンティアモデルも過半数を失敗
香港大学マルチメディア研究所と美団(Meituan)の研究チームは、AIアシスタントを実際のDocker環境(実ブラウザ、実ソフトウェア、実ファイル)でテストするベンチマークUniClawBench(arXiv:2607.08768)を公開した。サンドボックスや事前構築されたミラーサイトではなく、本物の環境で試すのが特徴だ。結果は厳しい。最強のクローズドソースモデルでもタスクの合格率は50%を厳密に下回る。
さらに意外なのは、フレームワークの選択がモデルの選択以上に性能を左右することだ。同じモデルを異なるエージェントシェルに載せるだけで、モデルを丸ごと入れ替えるよりも結果が変わる。ベンチマークは航空券価格の確認、ファイル整理、動画内容の解釈など日常的なアシスタントタスクをカバーしており、人間には簡単でも、実際のライブソフトウェアを操作する場面ではエージェントが頻繁に失敗することを暴く。
UniClawBenchは、サンドボックス評価がエージェント能力を系統的に過大評価しているという実務家の疑念を裏付ける。実環境には非決定性や壊れたページ、予期しない状態が存在し、決め打ちのテストミラーでは再現できない。エージェントが本番運用に入るにつれ、実環境評価こそがデプロイの制約条件になり、「モデルかシェルか」という問いがシステム設計の中核を占めるようになる。
— HKU Multimedia Lab · Meituan · arXiv
LLM-as-a-Verifier:検証スケーリングという第4の軸
スタンフォード×バークレー×NVIDIA Researchの合同チームは、LLM-as-a-Verifier(arXiv:2607.05391)を発表した。事前学習、事後学習、テスト時計算に並ぶ、能力成長の「第4の軸」として検証スケーリングを提案する。ジャッジモデルに粗い1〜5点のスコアを求める代わりに、スコアトークンのロジット分布の期待値を取って連続スコアを生成し、粒度・反復評価・基準分解の3軸で検証計算量を拡張する。
結果は4領域でSOTAに達する。Terminal-Bench V2で86.5%、SWE-Bench Verifiedで78.2%、RoboRewardBenchで87.4%、MedAgentBenchで73.3%。検証器は実行途中の完了度を追跡する「エージェント進捗バー」としても、RLの密な報酬信号としても機能し、重みの再学習や報酬モデルの訓練を一切必要としない。
生成側のスケーリング則はよく解明されているが、検証は放置された第4の軸だった。エージェントのトレースが長く高コストになるにつれ、「正しい軌道を選ぶこと」は「それを生成すること」と同じくらい重要になる。この手法はコーディング、ロボティクス、医療アプリケーションにまたがって、再学習なしでエージェントの信頼性を引き上げる道を提供する。
— Stanford · NVIDIA Research · arXiv
🔗 LLM-as-a-Verifier Paper · GitHub
詞元無限(CiYuan Infinite):1年で3回の資金調達、InfCodeがSWE-BenchでGPT-5超え
北京に拠点を置くエンタープライズAIエージェント基盤スタートアップ詞元無限は7月27日、臨芯投資がリードし華控基金がフォローする天使++ラウンドを発表した。2025年7月創業から1年で3回目の調達となり、累計で数億元に達する。CEOの楊萍氏はバイトダンスでAI技術を統括し、同社初のソフトウェア工学研究室を立ち上げた人物で、彼女のマルチエージェントテストシステムはバイトダンスの中核プロダクト群に採用されていた。
同社のコーディングエージェントInfCodeは2025年12月にMulti-SWE-benchのJavaリーダーボードで首位を取り、SWE-Bench VerifiedではPass@1で79.4%を記録。同じ評価でGPT-5やClaudeを上回る。コンシューマー向けコーディングアシスタントと異なり、InfCodeは巨大なレガシーコードベースの理解、セキュリティ監査の通過、CIパイプラインへの組み込みを前提とした本番向けエンタープライズシステムを標的とし、契約額は1件あたり数千万元規模に達する。
3回の調達が1年という間隔で続き、しかも間隔が短縮していることは、中国におけるエンタープライズAIコーディング市場への資本の熱意を示す。C端のCursor型ツールとは異なる市場であり、勝負どころはサブスク価格ではなく、統合の深さと監査可能性にあるというのが同社の賭けだ。
— 詞元無限 · 鈦媒體
🔗 InfCode資金調達報道 · 詞元無限