起きたこと
僕が運営している『オンライン絵しりとり』というサイトで起きた話となります。
これは訪れたユーザー同士で絵しりとりを楽しめるサービスです。
ある日、このサービスをホスティングしているConoHaVPSより、規約に違反しているため利用を制限した旨のメールが届きました。
お客様のVPSにおきまして、弊社会員規約に反するコンテンツが
検出されましたので、ご利用サービスの制限をさせていただき
ましたこと、ご連絡申しあげます。
そして、メールが届いたほぼ同時刻にサーバーが停止され、サービスへアクセスできない状態になりました。
メールによると、JASRACより著作権侵害に対する防止措置の申し出があったとのことです。
指摘対象のコンテンツを確認したところ、ユーザーがサイト内のチャットでYOASOBIの楽曲である『アイドル』の歌詞の一部を投稿しておりました。
ご覧の通り、話の流れで流行りの曲をみんなで歌っているだけのような状態です。
復旧までに行ったこと
「該当コンテンツは削除対応するので利用制限を解除してほしい」旨をメール及び電話で連絡しました。
サーバー停止から約2時間半ほど経って利用制限が解除され、復旧しました。
ユーザー投稿コンテンツを扱うサイト運用者の責務
個人開発でサービス運用に挑戦する方も少なくありませんので、あらためて確認です。
まず、サイト運営者は著作権侵害を防ぐために全ての投稿を監視する義務はありません。
現実的にもそれは難しく、仮に全ての投稿を監視したとしても、その内容が誰かの著作物の権利を侵害しているかを判断することは困難かと思います。
ただし、著作権違反に該当する投稿を発見したり、権利者より申し出があった場合等には、該当の投稿を削除するなどの対応が必要です。
運営者が著作権侵害を認識していながら対応を怠った場合は、加担したとみなされて罰せられる恐れがあります。
※正確な内容は条文や専門の方の解説をご参照ください
また、法的責任の他にも、ユーザーへの注意喚起を掲載したり、通報窓口を用意するなど、著作権侵害を防ぐ仕組みがあると好ましいと思います。
いきなりサーバー停止しなくてもよくない!?
今回、ConoHaには事前予告もなく唐突にサーバー停止・利用制限されてしまい、成すすべありませんでした。
サーバー停止までの猶予期間などを設けて、削除対応を要求したりしてくれてもいいと思うのですが…。
JASRACからの申し出については原文書を自身でも確認しておりますが、即刻の対応を迫るような内容というわけでもなく、僅かな猶予期間も設けられないほどに緊急性が高かったとは考えづらいです。
今回の件ではあまり文句を言える側の立場では無いのは承知のうえ、ConoHaには「先に削除要求を送ってくれたりはできないんですか?」的なお問い合わせをしたところ、「対応内容は変更しないし検討もしないので嫌なら他のサービスを検討してください」といった旨の返答をいただきました。
ConoHaVPSの規約をみると、著作権違反があった場合には利用者へ削除の要求を行ってくれそうに読めるのですが…、、
当社は、以下の各号に該当する場合(その虞がある場合を含む)には、会員に通知することなく、会員が、会員が本サービスを利用して公開・発信・保存・登録等するデータ等の削除を会員に要求し、また当社自ら削除することができるものとします。
(1) 当該データ等の公開・発信・保存・登録等が、第21条(禁止行為)第1項各号に定める禁止行為に該当する場合
とにかくConoHaの実際の対応方針としては著作権侵害の申し出を受けた場合は即刻サーバー停止・利用制限だそうです。
なんだか、(文句を言える側の立場では無いながら(二度目))、かなり軽視されているというか、サイト運用者に寄り添ってくれているようには思えず、残念な気持ちになりました。
ユーザー次第でいつでもサービス停止してしまう状態
ここまでの状況を踏まえると、僕のサイトは「誰かが著作権侵害コンテンツを投稿することでサービス停止できてしまう状態」ということになります。
さすがにこの状況はなんとかしたいので他の方法で自衛を考えたいと思います。
ユーザーへの注意喚起を強化する
ユーザーに対し、どのようなコンテンツを投稿してはいけないのかを適切に示し、ユーザー各自に著作権違反を自制してもらえるのであれば、根本的な改善と言えます。
ただし、今回のケースは著作権の知識があったうえでも「これで怒られるの…?」感があるため、正直効果的な対策ではない気がします。
ユーザー投稿コンテンツを必要以上に広く公開しない
今回のケースでは、JASRACが何らかのクローリングによって歌詞の掲載を発見したものと思います。
『オンライン絵しりとり』では、オープンチャットの履歴を過去ログから閲覧できるようになっていますが、これは、ユーザーから「自身のイラストにもらったコメントや、仲良くなった人とのやりとりを後から見れるようにしてほしい」という要望に応えた仕様です。
しかし、検索エンジンにインデックスされたりする必要はありませんでしたので、そうならないように改修することで対策になりそうです。
ユーザー投稿コンテンツを、サービス特性が必要としている以上に広く公開しないようにしよう
別のホスティング方法を検討する
同じVPSでは、国内の有名どころとして「さくらのVPS」が真っ先に思い浮かんだので、導入相談のフォームから今回のようなケースに対する対応について質問してみました。
あくまでケースバイケースであるという前置きのもと、多くの場合は期限を設けて対応依頼が契約者に対して行われるが、被害拡大の恐れがあるなど、状況によっては即時の措置がとられる場合もある、とのことでした。
そのため、今回のようなトラブルにおいては、さくらのVPSのほうがサービス停止の危険なく対応を行えそうです。
ホスティング先の選定の際は、トラブル時の対応内容にも気をつけましょう
お問い合わせ窓口を見直す
今回JASRACは、サイト運営者である僕ではなくVPSへとコンタクトをとりましたが、もし僕が窓口になれていれば、サーバーを落とされることもありませんでしたし、VPS側の手も煩わせずに済みました。
なぜ僕が窓口になれなかったかを考えてみると、まず「オンライン絵しりとり」にはお問い合わせフォームがあるものの、これは絵しりとりアカウントを特定するユーザーIDの入力が必須となっています。
普段のお問い合わせ対応を円滑にするためのそのような仕様にしていたのですが、JASRAC等の非サービス利用者による利用を妨げることになってしまっていました。
また、JASRACの申し出の具体的な内容は、複数のpdfファイルによって行われていたようなので、お問い合わせフォームであれば、複数ファイルを添付可能な状態にしておく必要もありそうです。
管理上の都合などでお問い合わせフォーム自体が嫌がられる可能性もあるため、emailアドレスを開示をしていればより確実だと思います。
おわりに
もしかしたらあなたの運営しているサイトも、ユーザーが何気なく歌詞の一部を投稿したことがきっかけでサービス停止する状態になっているかもしれません。
追記
今回のConoHaの対応に不満を抱いたのは確かですが、それ以外にはこれまで8年ほどConoHaVPSを利用させていただいてきた中で不満やトラブルは特にありませんでしたので、個人的には引き続き安価なホスティング先としておすすめできるサービスだと思います。
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