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マイクロサービスの成長日記 —— マイクロサービスから業務データウェアハウスへ

Last updated at Posted at 2025-09-24

序章:あるスタートアップの物語

物語は十数人の小さなチームから始まる。
社長の要求はシンプルだった。「とにかくビジネスを回して、稼げるようにしてくれ!」
そこでエンジニアたちは立ち上げの速さを優先し、PHP や Node.js を選び、大規模なモノリシックアプリを構築した。バックエンドは MySQL ひとつで全体を支えていた。

ビジネスは予想以上に急成長し、ユーザーは爆発的に増え、社長は毎日ご機嫌。
しかし開発チームは限界に達していた。
「このコード誰が書いたんだ?バグだらけで、1つ直すと全部壊れる!テストも丸一日かかる!」
ついに誰かがこう叫んだ。「マイクロサービスに分割しよう!」


第1段階:マイクロサービス分割 —— ビジネスドリブンの“消火的”リファクタリング

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なぜ分割するのか?

モノリスは肥大化し、変更はまるで爆弾処理。新人はバグ修正しかできず、誰もコアロジックに手を出せない。
チームは一致して決めた。ビジネス境界に従ってサービスを分割し、まずは出血を止める。

分割のプロセス

  • 最初に分割したのは境界が明確なモジュール:ユーザー、注文、決済。
  • その後、商品、在庫、マーケティング、リスク管理も独立。
  • 各システムは独自の DB を持ち、RPC/HTTP 経由で通信。
    システムはようやく疎結合となり、チームは大きく息をついた。

技術スタックのリファクタリング

分割と同時に技術スタックも刷新された。
当初は PHP、Node、Python とバラバラ。
この機に Java + Spring Boot に統一し、開発ガバナンスが整備され、コードも理解しやすくなった。

言語の再多様化

だが安定は長く続かなかった。システムが専門化するにつれ、言語は再び多様化する。

  • レコメンドやアルゴリズムチームは柔軟性重視で Python を導入。
  • リアルタイム処理はパフォーマンス最優先で Go を採用。
  • コア取引やリスク管理は安定性を重んじ Java を維持。

今回は初期の混乱とは違い、意図的な専門分業だった。
👉 この進化については別の記事で掘り下げたい。


第2段階:共通基盤 —— 能力を供給する“工場”としての存在

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なぜ共通基盤が必要か?

マイクロサービスを分割した後、会社は急速な拡張期に入った。
各事業ラインが同じ機能を繰り返し開発していた。ユーザー管理、商品管理、決済など、各チームがそれぞれ実装。
非効率に社長は焦った。「共通基盤を作って、みんなで使えないのか?」

共通基盤の誕生

そこで「共通基盤」が登場した。

  • 商品センター、ユーザーセンター、決済基盤、コンテンツ基盤、データ基盤が次々と構築。
  • フロントの事業は API を呼ぶだけで能力を再利用できる。
  • まるで工場のように、基盤が部品を作り、前台がそれを組み合わせて製品化する。

効果

  • 重複開発が減り、納期が大幅短縮。
  • 新規サービスは数か月ではなく数週間でリリース可能に。
  • 共通基盤チームの地位は急上昇し、全社の“能力提供者”として認知された。

第3段階:データウェアハウス —— 共通基盤の裏方化、大フロント + データウェアハウスの構造

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なぜ共通基盤が影を潜めたのか?

ビジネスが成熟すると、多くの“標準化能力”は安定し、頻繁な改修は不要になった。
共通基盤チームはもはやイノベーションの主役ではなくなった。

裏方への転身:単一の真実の源泉

共通基盤は消えたのではなく、裏方に潜り込み、業務データウェアハウスへと進化した。つまり企業の Single Source of Truth となった。

  • 全システムの行動データを蓄積し、定義を統一。
  • ミッションは“ビジネス支援”から“データモデルの安定支援”へ。
  • まるで企業の「アーカイブ室」として、公認のデータ基盤を提供する存在になった。

アーキテクチャの変化:大フロント + データウェアハウス

この時期、アーキテクチャは 大フロント + データウェアハウス へと整理された。

  • 大フロント
    • 市場とユーザーに直結し、迅速な試行錯誤と柔軟な提供を重視。
    • プロダクト、キャンペーン、マーケティングなどが中心で、敏捷性を最優先。
  • データウェアハウス
    • 裏方に回り、安定した統一データを提供。
    • 表舞台に立つ俳優ではなく、舞台裏の電力設備や照明制御のような存在。

この組み合わせによりバランスが取れた。

  • フロントは常に変化し、市場とユーザーに適応。
  • バックのデータウェアハウスは安定を維持し、長期的な資産を提供。

データウェアハウスの価値

この構造下でデータウェアハウスの価値は一層拡大。

  • ユーザー属性分析 → 精密マーケティング
  • レコメンドアルゴリズム → コンバージョン率向上
  • 財務分析 → 精緻な経営管理
  • サプライチェーン最適化 → コスト削減

競争力は「機能をいかに早く出すか」ではなく、「データからどれだけ継続的な価値を引き出せるか」に移った。


まとめ:アーキテクチャの進化と未完の物語

これまでの進化を振り返ると:

  • 少年期(マイクロサービス):混沌の中でスピードを追求。
  • 青年期(共通基盤):標準化とスケール化。
  • 成熟期(大フロント + データウェアハウス):安定とデータ還元。

しかしこれは終点ではない。

  • データウェアハウスの上には、リアルタイム DWH、データプロダクト、AI 活用が次々と登場している。
  • フロントは依然として市場に迅速に適応し、バックの DWH は安定して価値を出力する。
  • アーキテクチャは進化し続け、未来にはさらに新しい形態が待っている。
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