はじめに
システム設計の世界では、よくこんなジョークがあります:
中間層で解決できない問題は存在しない。もしダメなら、もう一層足せばいい。
ネタっぽいですが、実際のアーキテクチャ設計でもよくある発想です。
中間層を挟むことで複雑さを分解し、性能を上げたり、拡張性を持たせたり、依存関係をゆるくする。
この記事では、自分の経験も交えながら「中間層の役割とメリット・デメリット」を整理してみます。
なぜ中間層が必要なのか?
サービスが成長していくと、機能追加やデータのやり取りがどんどん複雑になります。
原子システム(ユーザーや注文など)とビジネスシステム(レコメンドやマーケなど)を直結すると、こんな問題が出やすいです:
- 依存が強すぎる → ちょっと直すだけで全体に影響。
- パフォーマンス問題 → 原子サービスに負荷が集中して遅くなる。
- 拡張性の欠如 → 新しい要件で全体を作り直し。
そこで「中間層を挟む」という選択肢が効いてきます。
中間層のよくあるユースケース
-
パフォーマンス改善
- Redis / Memcached でキャッシュして DB 負荷を下げる。
- Kafka / RabbitMQ でリクエストをバッファしてスパイク吸収。
-
データ統合
- 複数サービスのデータをまとめて、上流で扱いやすく整形。
-
ビジネスの疎結合化
- API Gateway や中台で統一インターフェースを提供。
-
セキュリティやガバナンス
- 認証、レート制御、ログ収集を一箇所でやる。
実例:二層キャッシュでマイクロサービスを最適化してみた
背景
自分が関わったあるシステムでは、マイクロサービス構成になっていました:
- 原子システム:ユーザー / 注文 / 在庫 / 商品
- ビジネスシステム:レコメンド / 風控 / マーケティング
でも、ビジネス側から原子システムへのアクセスが多すぎて…
- API 呼び出しが爆増。
- レスポンス遅延。
- 原子サービスが悲鳴をあげる。
解決策:二層キャッシュを挟む
そこで導入したのが 二層キャッシュ中間層 です。
第一層:生データキャッシュ(ES)
- 原子システムから取ってきたデータをそのまま保持。
- Elasticsearch に保存して検索・追跡できるようにする。
第二層:特徴データキャッシュ(Redis)
- 生データをビジネス用に加工して保持。
- Redis に保存し、短期的に高速提供。
データフロー
- 初回は原子システムからフルデータを取得 → ES に保存。
- Kafka / RocketMQ で変更を検知して差分更新。
- ビジネスシステムはまず Redis を参照 → なければ ES → 最後に原子システム。
効果
- レスポンス改善:Redis でミリ秒アクセス。
- 負荷軽減:原子システムの API 呼び出しを大幅削減。
- 責務分離:データ保持と特徴計算を分けて保守しやすくなった。
中間層のメリット・デメリット
メリット
- 依存を切り離せる。
- 柔軟にデータ構造を変えられる。
- キャッシュやキューでパフォーマンス改善。
デメリット
- 層が増えると複雑になる。
- 遅延が積み上がる可能性。
- 運用コストが増える。
まとめ
「中間層で解決できない問題はない」というのはネタ半分ですが、設計の発想としてはかなり有効です。
ポイントは:
- ボトルネックを見つけること。
- 適切な中間層を設計すること。
- ただし層の増やしすぎに注意すること。
最終的なゴールは「千層ミルフィーユ」みたいなアーキテクチャではなく、必要最小限の中間層で効率的・シンプルなシステムを作ることです。