こんにちは|こんばんは。カエルのアイコンで活動しております @kyamaz です。
はじめに
人名がついた「●●素数(●●は人の名前)」という素数を紹介する第8弾です。これまでの7つのエントリは脚注にリンクを貼っておきます。1234567
このあとのプログラムで素数列を利用するため、ワンライナーで素数列を定義しておきます。
ghci> p=2:3:5:5#p;m#(a:b:x)=[n|n<-[a^2..b^2-2],(mod (n+1) 6)*(mod (n-1) 6)==0,gcd n m<2]++(m*b)#(b:x)
ピタゴラス素数
ピタゴラス素数8の定義は以下のとおりです。
- ピタゴラス素数の定義
- $4n + 1$ の形をした素数 $p$
ピタゴラス素数は、2個の平方数の和で表される奇素数に他ならないことが知られており、ピタゴラスの定理からその名称がついています。
ピタゴラス素数を出力するHaskellプログラムは、素数列を使えば次のとおり簡単にピタゴラス素数列(遅延評価で無限列)を生成できます。
ghci> pyt=[n|n<-p, mod (n-1) 4 == 0]
ghci> take 100 pyt
[5,13,17,29,37,41,53,61,73,89,97,101,109,113,137,149,157,173,181,193,197,229,233,241,257,269,277,281,293,313,317,337,349,353,373,389,397,401,409,421,433,449,457,461,509,521,541,557,569,577,593,601,613,617,641,653,661,673,677,701,709,733,757,761,769,773,797,809,821,829,853,857,877,881,929,937,941,953,977,997,1009,1013,1021,1033,1049,1061,1069,1093,1097,1109,1117,1129,1153,1181,1193,1201,1213,1217,1229,1237]
チェビシェフの偏り
ピタゴラス素数ではない奇素数($4n+3$の形をした素数)を『非ピタゴラス素数』と呼びます。
ピタゴラス素数と非ピタゴラス素数は共に無数に存在していることが証明されております。(WikiPedia8参照)ピタゴラス素数と非ピタゴラス素数は、ほぼ均等に分布することも知られておりますが、その個数には次のような現象があり、それを『チェビシェフの偏り』といいます。
- チェビシェフの偏り
- ある自然数$n$までの素数には、非ピタゴラス素数($4k+3$の形をした素数)がピタゴラス素数($4k+1$の形をした素数)より多く存在するように見える現象
これを数学的な記号をつかって具体的にみてましょう。
自然数$q$に対して、$p\equiv a \pmod q$となる$x$以下の素数$p$の個数を$\pi(n;q,a)$とおきます。
$n \lt 26861 $ に対しては、不等式 $\pi(n;4,3) - \pi(n;4,1) \ge 0$ が成立し、この区間で等号が成り立つ素数$n$は4個のみで、$n = 26861$ ではじめて逆の不等号「$\lt$」が成り立つものの、次の素数で再び等号が成立して、以降も$n=616841$までこの不等号が成り立ちます。
ただし、チェビシェフの偏りが逆転するような、ピタゴラス素数の方が非ピタゴラス素数より多い範囲も存在しており、上記の個数関数の差は無限回符号を変えることも証明されているそうです。
おわりに
ご一読いただきまして有り難うございます。
本稿でとりあげた内容は、数学的にも深い話題に発展するようです。
小山信也先生による研究によると、チェビシェフの偏りは、深リーマン予想との関わりがある問題だそうです。(参考サイトより)
の数学的な力不足もあり「ピタゴラス素数は、2個の平方数の和で表される奇素数に他ならないことが知られている」ことの証明も十分理解できておらず天下り的な記載になってしまいましたが、以前のエントリ7で紹介した『ウィルソンの定理』を用いたりするようです。
最後に、本稿を記載するために検証したHaskell環境を記しておきます。お手元の環境で検証する際に、動作が異なるときには参考になるかもしれません。
本稿の環境
本稿のために使用した環境は以下となります。- macOS: Sonoma 14.5 (chip: Apple M1)
- GHCup: 0.1.30.0
- GHC: 9.6.4
(●)(●) Happy Hacking!
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