「AIに仕事を奪われる」
という話をよく聞きます。
でも、実際に仕事で生成AIを使っていると、少し違う現象が起きています。
AIを使うほど、仕事が増える。
今回は、普段のクライアントとのメールやチャットの履歴をAIに分析させて、「今週、自分が何をやったのか」を棚卸ししてみました。
なぜ仕事の棚卸しをAIにやらせるのか
仕事の振り返りは重要です。
ただ、私はこれがあまり得意ではありません。
毎日の仕事を記録しているわけでもないので、週末になって、
「今週、何やったっけ?」
となります。
そこで思いついたのが、
「どうせメールやチャットに全部残っているんだから、AIに拾わせればいいのでは?」
という方法です。
人間が記憶を頼りに振り返るのではなく、実際のコミュニケーション履歴を材料にします。
今回は、クライアント3社とのやり取りから、実際に対応した作業を抽出してもらいました。
AIへの依頼
今回やったことはシンプルです。
メールやチャットの履歴をAIに渡して、
今週対応した作業および業務内容だけを抽出してください。
という形で整理させました。
ポイントは、単純な要約ではなく、
「自分が何をやったのか」
にフォーカスしたことです。
AIが抽出した仕事
3社分を整理すると、かなりの量になりました。
1社目:Webサイト・コンテンツ運用
主な内容は、
- CMSの記事カテゴリ整理
- コラムとニュースの分類
- 記事公開、修正
- FAQや考察の追加提案
- WordPressのプラグイン設定
- 操作方法のレクチャー
- AI画像生成用プロンプトの作成
- 画像修正
- SEO、AI検索を考慮したコンテンツ改善
- SNS発信の提案
- プレスリリース配信の相談
- アンケート施策の提案
など。
単なる「ホームページ更新」ではなく、コンテンツ制作からマーケティングまで含まれています。
2社目:メルマガ・データ整備
こちらは、
- メルマガ会員データの整理
- 重複データのチェック
- 顧客情報の統合、修正
- テストメール
- フォーム設計
- 入力項目の整理
- SEO、AI検索を考慮した紹介文の設計
- フォームフォーマットの共通化
など。
3社目:サーバー・セキュリティ対応
こちらは少し毛色が違います。
- マルウェア被害サイトの調査
- 複数ドメインの状況確認
- 複数サーバーの稼働状況確認
- 表示不能サイトの調査
- 復旧計画の作成
- 別サーバーへの移転計画
- 復旧対象サイトの切り分け
- 不要サーバーの解約によるコスト削減
といった内容でした。
さらにAIに「これ、いくら?」と聞いてみる
ここからが今回の本題です。
せっかくなので、抽出した仕事内容をAIに渡して、
この3社分の対応を、一般的な外注・コンサルティング相場で考えた場合、どのくらいの金額の仕事になる?
と聞いてみました。
AIの回答は、
約28万〜57万円相当
でした。
もちろん、この金額をそのまま「市場価格」と考えるつもりはありません。
実際の料金は、
- 作業時間
- 契約形態
- 作業範囲
- 専門性
- 緊急性
- 責任範囲
などによって変わります。
特にAIによる相場判定は、あくまで参考値です。
ただし、自分の仕事を客観視する材料としては面白い結果でした。
AIを使ったら仕事が減る?
ここで最初の話に戻ります。
生成AIによって、
- 文章作成
- 情報整理
- データ分類
- リサーチ
- 画像制作
- 定型的な事務作業
などの時間は確実に短縮できます。
私自身も、以前より作業時間は減っています。
ところが、
仕事そのものは減っていません。
むしろ増えています。
なぜか。
「空いた時間で別のことをやる」から
例えば以前なら、
「記事を公開する」
ところまでで終わっていた仕事が、
AIを使って時間が短縮されると、
「この記事、検索意図は合っている?」
「一次情報を追加できない?」
「SNSでも発信したほうがいい?」
「アンケートを取ったら次の改善につながらない?」
「AI検索から見た場合はどうだろう?」
と、次の仕事を考えられるようになります。
つまり、
作業時間が減ったことで、考える時間が増える。
そして、考える時間が増えると、改善施策が増えます。
結果として仕事が増えます。
AIは「仕事を減らす」のではなく「仕事を細分化する」
もう一つ面白いと感じたのがここです。
例えば、
「Webサイトを更新する」
という仕事があります。
AIを使わない場合、これが一つの作業として終わることがあります。
ところがAIを組み合わせると、
- 記事を公開する
- 内容をチェックする
- 検索意図を確認する
- 不足情報を探す
- 一次情報を追加する
- 画像を改善する
- SNS用の文章を作る
- SNSで発信する
- 反応を確認する
- 次の記事にフィードバックする
というように、仕事が細かく分解されます。
AIによって1つの作業が高速化される。
すると、その周辺にあった「やりたかったけど時間がなくてできなかった仕事」に手を付けられる。
結果として、
1つの仕事から派生する仕事が増える。
という現象が起きています。
実務では「AIに何をさせるか」が重要
今回の作業で改めて感じたのは、
AIを使えること自体より、何をAIにやらせるかのほうが重要
ということです。
今回もAIに、
「今週の仕事をまとめて」
だけではなく、
「メール・チャット履歴から実際に対応した作業を抽出する」
という役割を与えました。
さらに、
「その作業を一般的な外注・コンサルティング相場で考える」
という別の視点を追加しました。
AIは大量の情報を処理するのが得意です。
一方で、
「何を問題として設定するか」
「どういう切り口で分析するか」
は、人間側の仕事です。
仕事の棚卸しを「業務ログの分析」にする
今回の方法は、個人的にはかなり使えそうだと思っています。
従来の仕事の振り返りは、
「今日は○○をやった」
と自分で記録する必要があります。
でも、実際にはメール、Slack、Chatwork、LINEなど、仕事の痕跡が大量に残っています。
ならば、
そのログをAIに分析させればいい。
という発想です。
例えば毎月、
- 何件の案件に対応したか
- どんな作業が多かったか
- どの仕事に時間を使ったか
- どんな改善提案をしたか
- 新しく発生した仕事は何か
- 定型作業は何か
- AIで効率化できそうな作業は何か
などを分析できます。
単なる業務報告ではなく、
自分の仕事をAIでデバッグする
ような使い方ができそうです。
今後やってみたいこと
今回は「今週やった仕事」と「その仕事の相場感」を調べました。
今後はさらに、
- 月ごとの業務量比較
- 案件ごとの作業比率
- 繰り返し発生する作業の抽出
- AIで自動化できる作業の発見
- 本来もっと時間を使うべき仕事の発見
- 提供価値と売上の比較
なども試してみたいと思っています。
特に面白そうなのが、
「忙しいけど、実は価値の低い仕事」
と、
「時間はかかっていないけど、価値の高い仕事」
をAIに分類させることです。
これが見えると、単純な作業時間ベースの業務改善とは違ったアプローチができそうです。
まとめ
今回の実験で感じたことをまとめると、
AIによって作業時間は減る。
でも、
仕事が減るとは限らない。
むしろ、作業が高速化することで、
「今までできなかった改善」
「新しい提案」
「追加の分析」
などに時間を使えるようになります。
その結果、
AIによって仕事の量と粒度が増える。
少なくとも、私の仕事では今のところそんな状態です。
AIに仕事を奪われるかどうかを考えるだけではなく、
AIによって生まれた時間で、どんな仕事を新しく作れるか。
こちらのほうが、実務では面白いテーマなのかもしれません。
ちなみに、ここまでAIを使って仕事を効率化している私ですが、
noteで文字の色を変える方法はいまだによく分かりません。
AIには強い。
WebサービスのUIには弱い。
この辺も含めて、引き続きAI活用を実験していきます。