1.はじめに
この記事はSAP Advent Calendar 2025 の12月19日分の記事として執筆しています。
SAP S/4HANA導入でFioriアプリを使い始めて、まもなく3年目に突入しようとしています。
振り返ってみると、社会人人生の半分はFioriと向き合ってきたことになります。
その中で、自分自身が実際に遭遇したケースや、周囲の方からよく聞く話を通じて、ユーザがFioriに対して感じやすいギャップが見えてきました。
本記事では、ユーザがFioriに対して違和感を覚えやすいポイントを、実体験を交えて紹介します。
2.Fioriのギャップ3選
2-1.キーボードを使った次項目への進み方
Fiori導入プロジェクトに携わっていると、さまざまな方から話を聞く機会がありますが、かなり高い確率で次のような要望があったことを耳にします。
①「Enterを押したら、次の入力項目に移動したい」
②「Tabキーで次に移動する項目の順番を制御したい」
①に関して私は遭遇したことがありません。
ですが調べてみたら従来の業務システムはEnterキーによる移動がよくあると記載されてました。
数値や短いテキストデータを次々と入力していくような業務では、マウス操作やTabキーでの移動は非効率になりがちです。
そのため、ExcelのようにEnterキーで次の項目へ進めるほうが作業しやすく、Enterキーによる項目移動が前提の設計になっていた、という背景があるようです。
この要望は恐らくグリーンフィールドの導入プロジェクトで発生するものだと思います。というのも、SAP GUIはEnterキーで内容の確定をするので、これまでSAP GUIを使ってきた私からすると、「Enterで次項目に進みたい」という要望が出てくること自体が、少し意外に感じたポイントでした。
その一方で、Fioriではこうした操作は基本的に想定されていません。
FioriはSAP GUIの延長というより、Webアプリとして設計されており、ブラウザ標準のキー操作や挙動をベースにしているためです。
キーの変更や Tabキーの順番制御は、技術的には対応可能だと思います。
ただ、その変更が業務全体にとって本当にプラスになるのか、また納期なども踏まえたうえで、どこを落としどころとするかを検討していく必要があると感じました。
2-2.レスポンシブについて
Fioriアプリは、PCだけでなくタブレットやスマートフォンでも使えるよう、レスポンシブ対応を前提に設計されています。
そのため、画面サイズに応じて
・項目の配置が変わる
・表示される情報量が減る
・ボタンの位置が移動する
といった挙動が発生します。
SAP GUI に慣れているユーザからすると、
常に同じレイアウト・同じ情報量が表示されることが当たり前だったため、
こうした挙動に違和感を覚えてしまうのも無理はないと感じました。
一方で、現代の UI の考え方としては、特定のデバイスに最適化するのではなく、
レスポンシブであること自体が前提になっています。
Fiori もその流れを汲んでおり、PC・タブレット・スマートフォンといった複数のデバイスで使われることを想定して設計されています。
このあたりは、レガシーシステムや SAP GUI を前提とした操作感とのギャップが
特に出やすいポイントだと感じました。
2-3.動作が重いと感じてしまう問題
Fioriを使い始めたユーザから、「画面の動きが重い」といった声を聞くことがあります。
正直、私自身も SAP GUI と比べると、Fioriのほうが動作が重く感じる場面はあると感じています。
ただ、これは単純に処理性能の問題というより、Webアプリとしての仕組みの違いによる影響が大きいのではないかと思っています。
Fiori では、画面描画や入力チェック、アニメーションなどの処理をブラウザ側でも行っています。
そのため、実際の処理時間が大きく変わっていなくても、画面の切り替わりや描画の動きによって、どうしても「待たされている」ように感じてしまうのだと思います。
この点についても、SAP GUIと同じ感覚で使おうとすると、ギャップを感じやすいポイントのひとつだと感じました。
3.まとめ
これまで見てきたように、Fioriに対して感じやすい違和感の多くは、GUI・レガシーシステムと、現代的な Web アプリとの前提の違いから来ていると感じています。
SAP GUI や従来の業務システムは、長年使い込まれてきた結果、「分かっている人なら速く使える」一方で、操作や知識が属人化しやすい側面がありました。
一方、Fioriは操作感や見た目を統一し、初めて触る人でも迷いにくいことを重視して設計されています。
その分、GUIに慣れたユーザからすると、使い勝手や動作にギャップを感じやすいのだと思います。
個人的には、こうしたギャップを完全になくそうとするよりも、なぜその違いが生まれているのかを早い段階で共有し、ユーザと認識を合わせていくことが大切なのではないかと思いました。