こんにちは、kura(倉林 雅)です。
唐突ですが、今回は私のIDコミュニティでの活動に関してお伝えしたいと思います。
本来であれば年末のAdvent Calendarで公開できればよかったのですが、すみません、温めすぎました。笑
なぜIDコミュニティで活動するのか
この一年の間、OIDF-Jの教育WGでメンバーと共にID技術の初学者向けのコンテンツを作成しています。
その活動の中で各メンバーが調査したこと、学んだことのアウトプットの発表の場を設けて、メンバー間でのフィードバックや議論の場として不定期ではありますが勉強会を開催しています。
とある日の勉強会の懇親会の場でメンバーから、
「なぜ教育WGで活動しているのですか?」
という質問を受けました。
自身の中でこの質問を突き詰めていくと「なぜコミュニティで活動を続けているのか?」という問いにもつながる質問であると感じました。
自身で再確認するとともに、IDコミュニティに携わってくれるひとが少しでも増えたらよいなと思い、この記事にその質問の答えをまとめようと思います。
教えることは自身の成長になる
開発言語やフレームワークなどの多くの開発者が集うインターネット業界のコミュニティからみたら、IDのコミュニティは小さくかつニッチな領域にみえるかも知れません。
私はその中で10年以上活動を続けているわけですが、自身のキャリアを考える時や、本業が忙しくて両立が難しい時など、「IDコミュニティで活動を続けているのはなぜか?」という問いを何度も自身に投げかけてきました。
自問自答の中で答えはいくつも見出しており、その懇親会の場でもいろいろと話をした気がしますが、結局のところ自身の成長のためである。
誰かに何かを教えるためには、まず自分が理解していなければなりません。
単に要素技術の中身を翻訳機のように説明するのではなく、必要に応じてそれが生まれる要因となった課題や背景、どのようにその技術が活用されているのかなど周辺の情報も語る必要があります。
それらを自身の口で語れるようにするためには自ら調べて学ばなければなりません。
結果、自身の成長につながると考えています。
ID厨はカッコいい
自身の成長以外にも、IDのコミュニティ活動に取り組む理由は他にもあります。
私は2011年に新卒入社してまだデジタルアイデンティティのデの字もわからない若手だったわけですが、半年間の研修を終えて本配属してから数ヶ月後の2012年2月に「#idcon 11th@Recruit Media Technology Labs」が開催されました。後に弊社のCTOになる上司やチームの先輩からIDを学ぶなら#idconに参加すべきと背中を押され、そのイベントに参加したわけです。
その回は知識がなさすぎて詳細はうる覚えですが、今となっては多くのサービスで利用されているOAuth 2.0やOpenID Connectの活用、事業者として当たり前に考慮しなければならない個人情報やプライバシーの保護、名寄せ対策としてのPPIDについて議論していた記憶があります。
私の先輩もその場でPPIDについて意見を述べており、それに対してリモート参加の高木ひろみつ先生と議論をしていました。
IDの専門家が集いその時々の課題やID技術についてディープな議論が展開される、それが#idconというイベントであり、IDコミュニティなのだという印象が残っています。
初回の参加では議論についていけなかったわけですが、一度参加したのだから続けてみようという気持ちもあり、その後も#idconには定期的に足を運びました。正直、業務の定時過ぎに会場へ移動をしてイベントに参加するのは面倒だと思っていた節もありますが、知らない用語を調べてイベントに参加することを繰り返していくうちに議論してる内容も理解ができるようになっていきました。理解が追いついてくると、IDを取り巻く世界の見え方も変わってきます。
会社という所属を超えて認証・認可技術や個人情報保護法、プライバシー保護について、技術者視点はもちろんのこと、UXや法律の観点も含めてIDのあるべき姿について議論をしているID厨の先輩たちが純粋にカッコいいと思えてきたのです。
直接的に利害関係があるわけでもなく、むしろ競合他社の関係の会社もいる中で、今後のID業界のため、IDを利用するサービスのユーザーのために議論を繰り広げるひとたちを目の前にして心を動かされてしまいました。
その感情はいまだに心に刻まれており、あの時のID厨の先輩たちのようにカッコいいと思える、このひとと一緒にID業界をよくして行きたいと思える存在になっているだろうかと、不安になりながらイベントで講演をしたり自部門で方針を提示している自分がいるのも事実である。(この記事を書きながらまさに自身に問いただしているところです)
理系出身で自身でもロジカルではないと思いつつも、このID厨という存在はカッコいいという感情が現在進行形でいまもあり、コミュニティ活動を続けさせている理由のひとつでもあります。
コミュニティへの恩返し
次にあげるのはコミュニティへの恩返しである。より具体的にはID技術を策定しそれを啓発・普及に取り組む技術者、コミュニティを牽引するリーダー、イベントを運営する事務方などへの恩返しをしたいという気持ちです。
IDの標準化へ関わる団体に限らず、成熟して大きくなっている他のコミュニティにおいても同様の考えを持って活動しているひとたちはたくさんいると思っています。
自身を成長させてくれた、リスペクトできる技術者と出会わせてくれた、など感謝の気持ちをコミュニティに還元したいと思っているひとは多いのではないでしょうか。
IDコミュニティはもちろんのこと、このインターネット業界で活動するプログラマーやエンジニアは好きな技術であれば没頭できるひとが多く、無償であっても技術が好きなもの同士で互いに尽くして行動しやすい領域なのだと思っています。
まさに私もIDコミュニティの中でそのプラスのスパイラルにはまってしまったのだと思います。
コミュニティのひとたちから成長の機会を受けて終わりではなく、そのひとたちの目指すべき方向へ向かうために可能な限りサポートをしたり、自身がそうであったように次の世代の若手に機会を与えたいと考えています。
そういった感謝の気持ちと行動は忘れずに今後も持ち続けたいところです。
世の中を良くしたい
漠然とではありますが、世の中を良くしたいという思いもIDコミュニティで活動を続ける理由のひとつです。
これはIDコミュニティで一時期ネタにされていたエピソードですが、終日行われたID合宿の懇親会で日々生まれる技術ブログを見回りって誤りを指摘している理由を尋ねられた際に、某先輩が「世界平和のためである」と語ったことがあります。
アルコールの入った席とはいえ、後輩たちの前で恥ずかしげもなくそのようなことが言えるなと、しばらく界隈でネタにされていましたが、大それてはいるものの個人的には共感はしています。
私は達成できないくらい目標は大きい方がよいという考えがあるため「世界を救うエンジニアになる」というミッションを掲げて、今の会社に入社する際の採用面談でもそれを語っていたことがあります。
そのため某先輩のその言葉はネタとしてイジってはいたものの、決して変なことだとは感じず、むしろそれを語るに止まらず有言実行でブログの見回りを休まず今でも継続しているところは尊敬に値します。(ただし、もう少し真摯的なコメントを心掛けるべきだと自分も思うところはありますが。笑)
IDコミュニティで自身が成長し、そのコミュニティで切磋琢磨し互いに高めあえるひとたちを増やしていく。そういった人たちと活動を通じて最新のID技術を普及し、結果的にインターネットサービスがより良くなり、それらを利用するユーザーの生活を少しでも便利で安全にしていきたいと日々考えています。
私の掲げた世界を救うエンジニアになるにはまだ程遠い道のりですが、これまで続けてきたことはそのミッションにつながっていると信じています。
かなり抽象度が高く間接的ではありますが、世の中を良くしたいということも動機になっているのは確かです。
まとめ
今回私があげたIDコミュニティで活動する理由は以下の4つです。
- 教えることは自身の成長になる
- ID厨はカッコいい
- コミュニティへの恩返し
- 世の中を良くしたい
コミュニティで活動するモチベーションはひとそれぞれであるため、これらに必ずしも共感してもらう必要はありません。
一方で今ともに活動しているひとたちや、これから出会うであろうひとたちの気づきになり、少しでも共感するところがあり、IDコミュニティで活動してくれるひとが少しでも増えると嬉しい限りです。
宣伝
最後に現在取り組んでいる活動の宣伝をさせてください。
まずは冒頭にも述べたOpenIDファウンデーション・ジャパンのイベント紹介です。
- OpenIDファウンデーション・ジャパン デジタルアイデンティティ人材育成推進WG:活動報告会
翻訳、ビジネス、技術の3つのサブワーキンググループに分かれて1年間活動をしてきました。その中で得た知見を活動報告会として皆さんに共有する予定です。
デジタルアイデンティティの概念やビジネスでの活用、具体的なID技術について紹介します。
開催は来週1/14(火)でYouTube Liveによる配信もあるためぜひ参加をしてもらえたらと思います。
次に共著で出版予定のパスキーに関する書籍の紹介です。
パスキーは現在IDコミュニティで注目されている最新の認証技術です。
「パスキーのすべて」という書名の通り、既存の認証技術の課題やパスキーの利点、実際に導入する際の実装(WebサイトだけでなくiOSやAndroidも含む)、現在策定中の拡張仕様、読者が気になる疑問に応えるコラムなどが凝縮されています。
今月1/28(火)に発売予定です。ぜひ各種オンラインストアや書店にてチェックをしてもらえると嬉しい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。