はじめに
社内研修動画やプレゼン用の短尺動画、SNS投稿用のちょっとした動画素材が欲しいとき、これまでは動画編集ソフトを立ち上げるか、外部の制作会社に依頼するのが一般的でした。Gemini Enterpriseには、チャットから直接動画を生成できる機能が組み込まれており、テキストプロンプトを入力するだけで短尺動画を作成できます。
本記事では、Gemini Enterprise appで使えるVeo 3.1による動画生成機能について、実際に有効化から生成までを試した内容をまとめます。
Gemini Enterprise の Veo 3.1 動画生成とは
Veo 3.1は、ネイティブ音声付きの8秒間の動画(720p、1080p、4K)を生成できるGoogleの動画生成モデルです。横向き(16:9)・縦向き(9:16)の両方のアスペクト比に対応しています(Gemini API の Veo 3.1 で動画を生成する | Google AI for Developers)。
本記事で扱うGemini Enterprise app(チャットUI)では、これまで使われていたVeo 3.0を置き換える形でVeo 3.1による動画生成がGAとなりました(Gemini Enterprise release notes | Google Cloud Documentation)。Business editionのリリースノートにも同様の記載があり、Business版でも問題なく利用できます(Gemini Enterprise – Business edition release notes)。
セットアップ手順
Step 1: 管理者が動画生成機能を有効化
まず、以下の1点を確認します。
- 機能が有効になっているか: ドキュメント上はデフォルトで無効とされている機能なので、Gemini Enterprise管理者が機能管理設定で「Enable video generation」がオンになっているかを確認します(Gemini Enterprise release notes | Google Cloud Documentation)。
Google Cloud Consoleで以下のURLから「Gemini Enterprise」のアプリ一覧に移動します。
https://console.cloud.google.com/gemini-enterprise/
対象のアプリ名をクリックし、「構成」→「機能管理」タブを開くと、「動画生成を有効にする」のトグルが表示されます。ここをオンにして「Save」をクリックします。
今回の検証環境では、スクリーンショットの通りすでにオンになっていました。「Gemini Enterpriseは使えているのに動画生成のオプションが出てこない」という場合、大抵はこの機能管理設定がまだオフのままになっています。画像生成やCanvasを既に有効化している組織であれば、同じ機能管理画面から動画生成のトグルも確認しておくとスムーズです。
Step 2: 実際にチャットから動画生成を依頼
管理画面ではなく、エンドユーザー向けのチャット画面を開きます。アプリのダッシュボード右上にある「プレビューを開く」から遷移できます。
遷移すると、以下のような真っさらなチャット画面が開きます。
特別なモードへの切り替えは不要で、通常のチャット欄に生成したい動画の内容をプロンプトとして入力するだけで動作します。「〇〇が△△する様子を、□□なスタイルで」のように、被写体・動き・スタイルを具体的に指定すると意図した結果に近づきました。
実際に「オフィスに出社した社員が笑顔で挨拶を交わす様子を、明るく親しみやすい実写風のスタイルの動画を生成してください」と依頼したところ、以下のような結果が返ってきました。
生成された動画には音声も含まれていましたが、日本語のプロンプトで依頼したにもかかわらず音声は英語で生成されました。またBGMは付かず、環境音と人物の話し声のみでした。
興味深かったのは、プロンプト送信後に「動画を作成するために、専門のエージェントに処理を引き継ぎます。」という一言が挟まる点です。裏側でチャット用のアシスタントから動画生成専用のエージェントに処理が受け渡されている挙動が、UI上にも表示されていました。生成時間は「動画の生成(1m 9s)」と表示され、実測で約1分9秒でした。生成完了後には「動画の生成にはどのくらい時間がかかりますか?」「動画の進捗状況を教えてください。」といったフォローアップの質問候補も自動で提示されます。
検証: アスペクト比を変えてみる
同じチャットのまま、続けて「同じ動画を縦型(9:16)のアスペクト比で作成してください」と依頼してみました。
「縦型の動画を作成するために、再度ビデオ生成エージェントに依頼します。」という応答とともに、再び動画生成エージェントが呼び出されました。生成時間は「縦型動画の生成(1m 11s)」で、横型のときとほぼ同じ所要時間でした。
「同じ動画を」と伝えると、オフィスと2人の人物という同じシチュエーション・雰囲気の動画を縦型で作ってはくれました。ただしこれは元の動画を編集・変換しているのではなく、同じプロンプトの文脈に縦型という条件を加えて、改めて生成し直している挙動でした。実際、2本の動画を見比べると、服装や小道具の雰囲気は似ているものの、人物の顔つきや背景の細部は完全には一致していません。「同じ動画」というより「似た動画」が生成される、という理解が実態に近そうです。
Step 3: 生成動画の確認・保存
生成された動画はライブラリから検索・閲覧・ダウンロードできます。チャット履歴を遡らなくても、後から必要な動画を探しやすい点は便利でした。
「画像」「動画」でフィルタもできるので、生成物が増えてきても目的の動画を見つけやすい設計になっています。ダウンロードした動画は、そのまま社内資料やプレゼンに組み込めます。
使ってみた所感
良かった点
- チャットの延長で動画まで作れる: テキストで壁打ちしながら、そのまま動画イメージまで具体化できるのは、外部ツールへの切り替えコストがない分スピード感があります。
- 1分程度で生成が完了する: 実測で1分9秒と、体感的にもそこまで待たされる印象はありませんでした。
気になった点・制約
- 音声が英語で生成される: 日本語のプロンプトで依頼しても、音声は英語で生成されました。日本語音声で生成したい場合は、プロンプト内で「日本語で話す」「日本語の音声で」のように明示的に指定して調整する必要がありそうです。それでも改善しない場合は、生成後に音声を日本語に差し替える、字幕を付けるといった編集作業を別途行う必要があります。
- 1本あたり8秒という長さの制約: Veo 3.1自体の仕様として、生成できる動画は8秒程度です。長尺のコンテンツを作る場合は、複数本を生成してつなぎ合わせるなど、編集側の工夫が必要になります。
- 「同じ動画を」は再生成であり、一貫性は維持されない: 検証で見た通り、「同じ動画を縦型で」と頼んでも実態は再生成のため、人物の顔つきや背景の細部までは一致しません。Gemini APIのドキュメントには、キャラクターの一貫性を強みとする別モデル「Gemini Omni Flash」もあり(Gemini API での動画生成 | Google AI for Developers)、Veo 3.1は一貫性維持を主目的としたモデルではなさそうです。同一キャラクターを複数カットで使い回したい場合は、この点を踏まえて期待値を調整する必要があります。
- 生成内容の事前チェックは必須: 動画は画像以上に「意図しない見え方」が発生しやすい表現形式です。社外向けの資料に使う場合は、著作権や表現の適切性を含めて必ず人の目でレビューする運用にしています。
まとめ
- Gemini Enterprise appのVeo 3.1による動画生成はGA機能で、Business editionでも利用できる
- ドキュメント上はデフォルト無効とされているが、実際の検証環境ではすでに有効になっていた(念のため機能管理設定の確認は必要)
- 実測の生成時間は約1分9秒で、8秒程度の短尺動画がチャット上に表示される
- 日本語プロンプトでも音声は英語で生成される(日本語にしたい場合はプロンプトでの指定、それでも難しければ差し替え・編集が必要)
- 「同じ動画を縦型で」のように続けて依頼すると似た動画は作られるが、実態は再生成であり、人物・背景の厳密な一貫性は維持されない
社内での動画コンテンツ制作の内製化を検討しているチームの参考になれば幸いです。
参考リンク
- Gemini API の Veo 3.1 で動画を生成する | Google AI for Developers
- Gemini Enterprise release notes | Google Cloud Documentation
- Gemini Enterprise – Business edition release notes
- Gemini API での動画生成 | Google AI for Developers
本記事は2026年8月〜9月時点の情報をもとに、実際の管理画面・チャット画面で検証しています。実際に導入を検討される際は最新の公式ドキュメントに加えて実環境での確認をおすすめします。







