前回 から、有名なサトウの切り餅事件で特許を考えてみています。
前回は請求項をどう読むかという話を中心にしました。
以下が特許です。
https://patents.google.com/patent/JP4111382B2/ja?oq=%E7%89%B9%E8%A8%B1%E7%AC%AC4111382%E5%8F%B7
以下に絵なんかもあるので、概要を掴むにはいいと思います。
http://www.ypat.gr.jp/ja/case/patent/07.html
さて、今回は価値の高い特許とはどんなものかです。
##1 特許の範囲が広い、代替技術が存在しない
事業に参入しようとすれば、特許の使用を避けて通れないかどうかです。
越後製菓の特許ならば、他社が餅を販売するにあたって、「必ずスリットが入った餅にしなければならないか」です。
現在販売されている餅を見ればわかりますが、スリットが入っていない餅もたくさん売られていますので、この点ではあまり有効ではないと思います。
この点で有効な特許は、任天堂が白猫プロジェクトを訴えた特許です。任天堂の特許は、「タッチパッドに仮想的なジョイスティックを作る」というものですが、RPG系スマホゲームはだいたいこれを使っています。逃げられない。こういうのが範囲の広い特許です。
##2 効果が高い
発明の効果というのは、発明によってどの程度価値が上がるか、
越後製菓の特許ならば横にスリットを入れることでどれだけ美味しい焼き餅になるか、どれだけ綺麗な焼き餅になるか、それによって企業がどれだけ収益を上げることができるか。これが効果です。
他の企業はあまり越後製菓の特許を使っていませんので、それほど効果が高いわけではないと思います。
##3 侵害の指摘が容易である
越後製菓の特許を侵害した切り餅かどうかは、製品を見れば簡単にわかります。
これが侵害の指摘が容易であるということです。
この点、越後製菓の特許は非常に優秀です。
逆に、ソフトウェアに関連する特許などは、侵害の指摘が難しいと思います。
ユーザーインターフェースのように使えばわかるものであれば大丈夫ですが、
ソフトウェアの中身を解析しないと使っているかどうか判別できないものはかなり厳しい。
"基本特許"と呼ばれるような特許は、この3点がしっかり満たされているものです。
製品を販売するときに取得する特許は、だいたい3つ4つと、複数存在しています。
その中で、基本特許になりきれているものは、せいぜい1個だと思います。
もう1つ。特許は先に出した人が圧倒的に有利です。
一番最初に作った人がほとんど必ず一番価値の高い特許を取得できます。
これは、特許の理念がわかると、理解できると思います。
その点についてはまた次回書こうと思います。