Linked Ideal代表社員の久保寺です。Nextremerの久保寺です。Disruptive Tech. R&Dという研究部門の統括をしております。Disruptive Tech. R&Dでは、量子コンピュータの活用や自然言語処理などの研究を行なっております。今回は、量子コンピュータに関する記事を書きたいと思います。
今年2019年も様々な量子コンピュータに関するニュースがございました。今回独断と偏見による2019年量子コンピュータに関するニュースを5つのカテゴリに分けていくつかピックアップしてみたいと思います。
米国IT大手企業の量子コンピュータに対するアプローチ
量子コンピュータをウォッチしている人ならIT大手企業の動向は見逃せません。下記はその中でも特に目を引くニュースでした。
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IBM、53量子ビットの新型量子コンピュータを発表
- 最新の量子コンピュータをクラウドからも使えるようしてるところがさすがです。
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Google、量子コンピューターの「量子超越性」を実証と発表
- この内容に対しIBMが「重大な欠陥」があると指摘しています。真相はどうなのでしょうか?
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Amazon、量子コンピュータに本腰 3社の量子ハードでプログラミングできる「Amazon Braket」発表
- 元々、ionQという企業に出資していたので、いつアクションがあるのかと思ってましたが、このタイミングで来ましたね。楽しみです。
量子コンピュータに関する日本企業の動向
昨年辺りから、量子コンピュータのベンチャー企業の資金調達が目立ってきました。
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日本の量子コンピュータ系スタートアップQunaSysが2.8億円調達、量子化学計算を軸に研究開発加速へ
- 量子コンピュータの理論に造詣が深い藤井啓祐氏@大阪大学が技術顧問を務めるQunaSysさん2回目の資金調達です。今後が楽しみです。
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テラスカイ、量子コンピューター商用化へ新規参入
- テラスカイさんの子会社として発足したQuemixは、IBM Qシステムを使用して 教育と開発を行う業界初のコンソーシアムの設立など勢力的に活動されてます。こちらも今後が楽しみです。
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量子アニーリング研究開発ソリューションを提供するシグマアイが総額約4億円、シリーズA資金調達を実施
- 日本の量子コンピュータを生業とするベンチャー企業が一度に調達した金額としては現時点で最高額じゃないでしょうか。すごいです。
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東芝、量子コンピュータより高速に組み合わせ最適化問題を計算するアルゴリズムを開発
- 上記は東芝SBMというサービスとして提供されております。弊社も東芝デジタルソリューションズ様からエンドースを受け使用しております。その成果は今年国際会議AQC2019でも発表させていただきました。リンクつける!
量子コンピュータに関する日本政府の動向
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2020概算要求/量子関連、倍増300億円弱 政府、イノベーション推進
- 2017年にもこのようなニュース「量子計算機、実用化へ300億円 文科省方針」がありました。米国、中国ではさらなる大規模予算を投下しています。国際競争力を落とさない為にもガンガン行って欲しいです。
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量子コンピューター 新国家戦略案 ベンチャー10社以上創設へ
- どういう形であれ、日本のマーケットを盛り上げて欲しいです。
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量子コンピューター、20年で実用化 政府ロードマップ
- ブレイクスルーに期待です。
学術的なニュース
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東大、大規模・汎用量子計算を実行できる量子もつれの生成に成功
- 光を利用した量子コンピュータも注目されています!「古澤明教授は世界初の量子テレポーテーション実験を成功させたヒトです。」
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量子重力には対称性はない ― 大栗機構長らが証明
- 直接量子コンピュータに関係はないですが、量子重力と量子エンタングルメントの関係などからこの辺の話題も常に気になっております。このニュースは非常にセンセーショナルでした。場の理論ではネーターの定理という対称性と保存量に関する定理があるのですがこの辺がどのようになるのか興味深々です。
トポロジカル量子コンピュータ
昨今の量子コンピュータの課題として誤り耐性のある量子ビットの開発があげられます。これまで量子誤り訂正符号の効率化が研究されてきましたが、量子ビットの誤りを補正するためにさらに量子ビットが必要な為、実際に計算を担う量子ビットの他に多くの量子ビットが必要です。一方、トポロジカル量子コンピュータの量子ビットは、量子ビット自体に誤り耐性があるのでその意味でも注目されておりフォールトレラント量子計算の一翼を担えるポテンシャルを持っていると思います。このネタは、理論的にも非常に興味深く勉強しております。簡単ではありますが記事も書いてみましたのでよかったらご覧ください。「トポロジカル量子コンピュータとその周辺」
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- ニュートリノがマヨラナ粒子の候補として有力ですが、2019年12月現在、マヨラナ粒子自体はまだ発見されておりません。ただし、特定の条件では2次元にトラップされた電子がマヨラナ粒子の物性を示すことが理論的に予想されており、これをマヨラナ準粒子と言います。マヨラナ準粒子は、トポロジカル量子コンピュータのリソースとして期待されています。
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For faster quantum computing, Microsoft builds a better qubit
- 他のIT大手企業とはアプローチが違うトポロジカル量子コンピュータの戦略とっているMicrosoft社、期待してます!
まとめ
2019年は他にも色々なニュースがありましたが、独断と偏見で量子コンピュータ関連のニュースをカテゴリ分けしてピックアップしてみました。如何でしたでしょうか? 2020年もどのように量子コンピュータが進展していくのか、とてもワクワクしております。最後までお読み頂きありがとうございました。