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小売業界におけるオブザーバビリティの現状(2024年版)

Last updated at Posted at 2025-03-03

New Relicが調査機関とパートナーを組んで年次で調査し、公開しているオブザーバビリティ予測レポート(2024年)の小売業界版を読み解いて解説します。小売業界ではどのような変化が起きているでしょうか?

オブザーバビリティ予測レポートとは?

オブザーバビリティ予測レポートは、企業におけるオブザーバビリティの実践状況や成果、組織の抱える課題、未来の展望などについての調査結果をまとめたレポートで、New Relicが年次で公開しているものです。

この調査結果を小売業界だけに絞ったものが『小売業界向けオブザーバビリティレポート2024』で、小売業界に属する148名の回答に基づくものになります。このレポートを読み解き、小売業界ではどのような特徴や傾向をかいつまんでご紹介します。

オブザーバビリティは益々重要に

小売のシステムは、POS、店舗内端末、モバイルアプリ、EC、決済、在庫、物流など様々な種類のシステムやデータソースと連携してその機能をなしているという特徴があります。連携するシステムが多岐にわたることでブラインドスポットが発生すると、組織は収益に影響する意思決定をデータに基づいて適切に行うことが難しくなります。自社のITエコシステム全体に渡ってシステムの観測性を高めていくこと、つまりはオブザーバビリティの向上が小売の場合は重要です。

さらに、昨今注目されているユニファイドコマースなどによってオンラインとオフラインの融合・統合が進むと益々システム間の連携が増えるため、システム全体の観測性を高めて組織横断で意思決定を早めていくことはさらに重要になっていくでしょう。

小売業の成長に重要な最優先事項はDEM

DEM(デジタルエクスペリエンスモニタリング)は主要な投資対象の1つであることが調査結果から明らかになっています。消費者支出がオンラインにシフトする中、システムの信頼性やデジタルエクスペリエンスの重要性が増し、改善の必要性があることが背景としてあるでしょう。

回答のほぼ半数近くが直近1〜3年でDEM関連機能(ブラウザ監視、モバイル監視、外形監視)を導入すると回答しています。2027年には、それぞれ8割近くを導入する予定であると予想されています。この大幅な増加は小売業の成功の原動力としてのDEMへの取り組みを示しています。

ツールやデータの統合が効率性を向上

調査結果によれば、5つ以上のツールを利用している回答者の割合は全業種だと45%なのに対し、小売は40%にであり、小売業界はツールの統合が進んでいることがわかりました。

実際、使用されているツール数の平均は2022年の5.9から毎年減少し、2023年は5.4、2024年は4.4となっています。

以下のグラフは小売業界に属する回答者が使用しているツール数表したものですが、年々中央値が左にシフトしている、つまりはツール数が減少して統合が進んでいることがわかります。

image.png

小売業界では、昨年と比較してシステム停止の頻度、MTTD/MTTRの減少がみられており他業種と比較しても顕著な改善が表れているようですが、これはツールやデータの統合、フルスタックオブザーバビリティの実現とも相関しているようです。

以下のグラフは実際に回答者が享受しているオブザーバビリティのメリットを表しているグラフですが、どの項目においても効果を得ているということがわかりました。なお、小売組織は年間の支出の4倍のROIを達成しているようです。

image.png

ビジネスデータの統合とその効果

全業種を対象としたオブザーバビリティレポートでもその傾向が表れていた通り、テレメトリーデータをビジネス関連のデータと統合することは信頼性の向上やエンジニアの生産性向上に寄与することは小売にも共通しているようです。特に小売の場合は販売データや在庫データをテレメトリーデータと統合している割合が他業種よりも多いことが結果に表れています。

ビジネス関連のデータを統合し、ビジネスオブザーバビリティを実現することにより、ビジネス上のインパクトに基づいて問題への対応や改善の優先度を判断できるため、よりROIの高い意思決定を行うことが可能になります。実際、調査結果からもダウンタイム、コスト、エンジニアリング時間の削減に効果があることが示されました。

オブザーバビリティの向上を阻む問題

上記の通り、オブザーバビリティは前年に比べ促進され、小売業において様々なメリットをもたらしているもののまだまだ課題はあります。回答によれば、小売業界の回答者のうち18%のみがフルスタックオブザーバビリティを実現しているとの回答ですが、全業種25%より低い結果となっています

以下のグラフはフルスタックオブザーバビリティを阻む要因について回答した結果ですが、データやツールのサイロ、技術スタックの複雑化などがその実現を阻む要因となっているようです。今後はこの辺りの問題をどう解決していくかが鍵になりそうです。

image.png

まとめ

今回は2024年のオブザーバビリティ予測レポートのうち、小売業界に絞った結果から読み取れる動向をいくつかピックアップしてご紹介しました。昨年に増して小売業界ではオブザーバビリティのメリットを享受している状況であることがわかりました。

今後はツールやデータの統合、ビジネスデータと統合によってそのメリットをさらに享受していくことが予想されます。来年のレポートも非常に楽しみです。

レポート本体ではより詳細な解説をしていますので、是非レポートもご覧ください。

過去のレポートはこちら

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