はじめに ― この記事の前提
生成AIの情報を追っていると、見た直後はテンションが上がるのに翌日には手元が何も変わっていない発信と、地味なのに月曜から作業のやり方が変わる発信があります。私はこの差を長いこと「発信者のレベル差」だと思っていたのですが、最近になって、そうではなく発信の中身に現れる特定の振る舞いの差だと考えるようになりました。
この記事は、私がその振る舞いを4つの観点で見ていること、そしてその観点で見て今も追い続けている3チャンネルが実際に何を発信しているかを書いたものです。
先に3つ断っておきます。
- ここで挙げる3チャンネルは私が個人的に見ているだけであり、発信者の優劣を論じるものではありません。挙げなかった発信が劣るという意味も一切ありません
- どの方からも紹介を依頼されていません。案件でもアフィリエイトでもなく、ただの個人の感想です
- 引用する動画タイトルは執筆時点(2026年9月)のものです。チャンネルの内容は今後変わり得ます
発信の中身で見ている4つの観点
上の裏返しとして、私が実際に見ているのはこの4つです。
| 観点 | 具体的に何を見ているか |
|---|---|
| ① ちゃんと使っているか | PPT自動作成(笑)じゃない使えるユースケースについて語っているか |
| ② 前提と限界 | 効かないケース・危ないケースが、聞かれる前に自分から出てくるか |
| ③ 一次情報 | ただ一時的に効果的な局所解を言っているだけじゃないか? |
| ④ 座標 | AIを評価するための、AIの外側の物差しを持っているか |
一番効くのは④です。AIの中しか知らない人がAIを語ると、比較対象がAIしかないので「前より賢くなった」以上のことが言えません。AIの外側に本業や専門を持っている人は、「その仕事で本来必要な精度」という物差しを持っているぶん、褒め方も貶し方も具体的になります。
ここから挙げる3チャンネルは、この4つの観点では共通しているのに、立ち位置はまったく違います。(敬称略)
海外Yパパラジオ ― 金融・地政学の座標からAIを見ている
どんな発信をしているか
まず前提として、AIチャンネルではありません。直近のラインナップを並べると主題がはっきりします。
- 「【世界借金レース】結局一番ヤバい国は?」
- 「で、なんで長期金利が上がってんだっけ?あと、政策金利と長期金利って何が違うんだっけ」
- 「レアアース、そこら中にあるのに世界が中国依存なのはなんで?」
- 「【日本まだマシ?】少子高齢化レース、アジア大会!!」
軸足は世界情勢と金融です。そこに定期的にAI回が差し込まれます。
ただしちゃんとAIを使っている方の意見であり、
裏側の仕組みが〇〇だから▲▲の運用をしているという詳細な解説をしてくれます。
- 「【AI中級】RAGのその先。巨大な資料をAIで精度高く取り扱いたい。」
- 「AIがAIを使う現在、最も使われているAIモデルはなにか?」
- 「(実例で解説)なぜ、あなたの部下がAIで作った資料はゴミばかりなのか、どうやったら良くなるかを語ります」
中身のどこを見ているか
観点④が一番わかりやすく出ているのがこのチャンネルです。たとえば3つ目の「部下がAIで作った資料はゴミばかり」は、タイトルこそAIの話ですが、私が聞いたかぎりでは、中身は「その資料は誰の何の判断に使われるのか」という業務設計の話に着地します。AIの使い方がまずいという入り方ではなく、依頼の時点で成果物の要件が定義されていない、という順序で語られる。この順序に、私は資料を受け取って判断する側の観点を感じました。
観点①も強い。「AIで資料作成が効率化」ではなく「この工程が抜けているとこうなる」まで落ちているので、聞いたあとに直す場所が1箇所に決まります。
私がこのチャンネル経由で知って実際に手を動かしたのが、知識をMarkdownのディレクトリとして持つ Open Knowledge Format の考え方でした。個人の知識リポジトリを持っていたものの、フォルダを切っただけで放置していたので、frontmatterと索引ファイルを整備するところまでやり直しました。これは「新しいAIツールがすごい」系の情報からは絶対に出てこなかった変更です。
AI仙人 ― タイトルは煽るのに、中身は手順に落ちている
どんな発信をしているか
こちらはAI活用に全振りしたチャンネルです。「AI歴10年・ガチADHD男」を名乗り、「1人で100人分働く」をコンセプトに掲げています。
タイトルの温度感は正直に言って高めです。
- 「【100年に一度】今、我々は「シンギュラリティ」のど真ん中にいる」
- 「【二極化】一番ありえる「未来の社会」ではAIを支配する人と超低賃金で働く人に分かれる」
一方で、同じチャンネルにこういう回が並びます。
- 「【上級者の日常】AI使うの上手い人はこの方法で音声入力している」
- 「【休日で習得】AIエージェントをゼロから最速で使いこなせる基礎講義!ClaudeCode使って教えます!」
- 「【脱初心者】やってたら時間を無駄にする3つのAIの使い方と正しい使い方をセットで教えるで」
- 「【AIセキュリティのプロ】個人情報が簡単に奪われる現代で最強のセキュリティ対策は?」
サムネと中身のギャップの正体
サムネは怪しいんですが(笑)、中身は本物です。
ちゃんと使っている人の意見ですし、言語化するのが難しいAIのコツを構造的に解説してくれています。
正直どれか1人だけ見ておけば
数理の弾丸 ― LLMを数理の側から説明する
どんな発信をしているか
3つのなかで一番、仕組みの側に寄っています。
- 「身近だけどよくわからない「トークン」という存在について」
- 「改めてコンテキストを理解する会【LLM】」
- 「Attentionの最前線2026」
- 「エージェント時代の技術トレンド「オンポリシー蒸留」【Kimi K3】」
- 「プロンプトやSkillの自動最適化【技術解説】」
- 「AIエージェントのセキュリティ入門」
- 「AIの出力をレビューするのがしんどい問題」
中の人は船蔵颯さんで、オーム社から『言語の数理とLLMの知能』という書籍を出されています。
中身のどこを見ているか
観点③がわかりやすい。論文解読の回があるように、伝聞ではなく原典に当たってから話が始まります。観点①も強くて、「LLMはこう動く」という大雑把な主語ではなく、トークンという単位の話、Attentionという機構の話、というように個別の概念に分けて説明されるので、自分の運用のどこに効く話なのかを対応づけられます。
個人的に一番好きなのは「AIの出力をレビューするのがしんどい問題」です。これは新機能でも成功事例でもなく、使っている側が今まさに困っていることをそのまま主題にしている。うまくいった話しかしない発信とは、そもそも扱う題材の選び方が違うと感じます。
この方のスキル使わせてもらっています
私はAIの出力をHTMLに起こすとき、Claude Code用のスキルを使っています。
mathbullet/skills です。
AIの出力をMDで見続けていると認知負荷がエグいのでこの方のHTMLのスキルを使うのがおすすめです。
おわりに
繰り返しになりますが、これは優劣の話ではありません。私の観点が絶対に正しいとも思っていません。実際、この4つの観点は3年前の自分なら持っていなかったし、3年後には別のものに入れ替わっている気がします。
もし読んでくださった方に「この発信者は中身で選んでいる」という基準があれば、その基準のほうを聞いてみたいです。チャンネル名より、選び方のほうが再利用できるので。
