はじめに
先日参加したハッカソンで、チームメンバーがバイブコーディングにハメられているのを見て、これは記事にしなければと思った。Claude CodeやCursorなどのコーディングエージェントが普及し、誰でもそれなりのコードが書けるようになったが、逆にハマる人も増えている印象がある。
自分はデータアナリストなので、普段そこまでガッツリコーディングしない。そんな立場だからこそ見えてきた、バイブコーディングでハメられるパターンがある。同じような立場の人の参考になれば幸いだ。
バイブコーディングの典型的な失敗パターン
1. 最小構成でテストしていない
いきなりメイン機能から始める問題
最も多い失敗パターンは、AIの力でいきなり複雑なコードが書けるため、「ダッシュボード作成」や「API連携データ可視化」など、最終目標から始めてしまうことだ。
慣れている分野なら問題ないが、未経験の領域でこれを行うと確実にハマる。結局「Hello World」レベルまで戻ることになるため、最初から段階的に進めるべきである。
推奨する最小構成の3段階
実装時に意識すべき構成は以下の3つ:
- printレベルの構成 - 基本動作の確認
- フレームワークの最小限の構成 - Flaskなら「Hello World」表示
- 実装したい機能の最小構成 - 単一のAPIエンドポイントテストなど
バイブコーディングでは3から始められるが、1から順番に進めないと特に新技術では必ずハマる。
技術理解を深めることが本当の目的
コードを動かすことが目的ではなく、技術理解を深めることが真の目的である。理解が不十分だと、複雑なコードでエラーが発生した際に原因特定が困難になり、「修正して」の無限ループに陥ってしまう。
2. コンテキスト不足による指示出し
要件整理前のコード作成
よく見るパターンは、「とりあえずコード作成後、動かしながら考える」アプローチで始め、「これじゃない」「こう変更して」と延々と修正指示を繰り返すことだ。
気持ちは理解できるが、結果的に時間がかかり、自分もLLMも混乱する状態になる。
Claude Codeのplanモードの活用
Claude Codeにはplanモードがあるが、使用していない人が多い。実装前に「こういう構成で進めます」と提案してくれるため、そこで方向性を修正できる。コード作成後に直すより圧倒的に効率が良い。
要件の事前整理
要件をしっかり整理してから指示を出すのは当たり前のことだが、実践できている人は意外に少ない。後でハマるのは自分なので、最初に丁寧に準備した方が良い。
3. (仮説を立てずに)修正してください
エラー発生時の即座な修正依頼
エラーメッセージが出た瞬間、内容を読まずに「修正してください」と言ってしまうパターンは非常に多い。これを行うと、完全にClaudeの操り人形になってしまう。
長期的な技術成長への影響
「修正して」を連発すると、自分で問題解決する能力が育たない。エラーメッセージの読み方やデバッグ方法も身につかないため、長期的な成長を阻害する。
「状況を教えてください」と聞けば、現在起きていることを整理してくれる。それを理解してから修正方針を決める方が、長期的に見て効果的だ。
仮説立てる習慣の重要性
エラーが出たら、まず「なぜこれが起きたのか?」を考える習慣をつけるべきだ。
- ライブラリのバージョン違い
- 環境変数の未設定
- APIキーの間違い
このような仮説を立ててから、「この仮説は正しいですか?」と確認する。そうすることで技術理解が深まり、同様のエラーに遭遇した際に自己解決できるようになる。
4. テストコードを書かない
Web エンジニア以外の開発者によくある問題
データアナリストやプロダクトマネージャーなど、普段Webアプリケーション開発を行わない人が開発すると、テストコードを書かずに直接デプロイしてしまうことが多い。そして本番環境でデバッグを行っている。これは非常に危険で効率も悪い。
開発フローの比較
簡単なテストから始める
複雑なテストフレームワークを使う必要はない。最初は簡単なもので充分だ:
def test_basic_function():
result = my_function(test_data)
print(f"Expected: 100, Got: {result}")
assert result == 100, "テスト失敗!"
test_basic_function()
これだけでも、本番でバグが発生するリスクを大幅に減らせる。
ローカル環境での完結
本番環境は聖域として扱うべきだ。ローカルで動作するものを作成し、テストを行い、問題ないと確信してからデプロイする。バイブコーディングでは「とりあえず動いたからデプロイ」となりがちだが、これは避けるべきである。
5. ゴミ拾いしない
プロジェクトファイルの散乱問題
地味だが効果的な問題として、プロジェクトのルートディレクトリに不要なファイルが散乱している状態でエージェントと対話することがある。
test.pybackup_old.pytmp_script.pydebug_20240315.py
このようなファイルがあると、エージェントもそれを参照してしまい、混乱の原因となる。
クリーンな環境の維持
定期的にファイル整理を行う習慣をつけるべきだ。使わないファイルは削除するか、別フォルダに移動する。
project/
├── src/ # メインのコード
├── tests/ # テストコード
├── docs/ # ドキュメント
└── archive/ # 使わないが念のため残すもの
このように整理しておくと、エージェントも迷わず、自分も作業しやすくなる。
.gitignoreの設定
一時的なファイルや環境固有のファイルは、最初から.gitignoreに追加しておく。基本中の基本だが、忘れがちな作業だ。
まとめ
結局のところ、自分の能力以上のことはできない。AIがどれだけ優秀でも、それを使いこなすのは人間である。基本的な開発プロセスを理解していないと、どんなに優秀なエージェントを使っても結局ハマってしまう。
特にデータアナリストのように、普段コーディングメインではない人は、基礎をしっかり押さえた方が良い。面倒に感じるかもしれないが、長期的に見ると絶対にその方が効率的だ。
バイブコーディングは確かに便利で、可能性を広げてくれる。
しかしそれに溺れることなく、基本を大切にしていきたい。
同じような経験をした方は、ぜひコメントで共有してほしい。
一緒に改善していこう。