1. はじめに
私自身、普段はdatabricksをメインで使っているユーザーで最近snowflakeも触りだしました。Cortex AIの項目が想定しているよりも多く、どんなときに何のために使う機能なのかをまとめてみました。同じsnowflake初心者の方の参考になればと思います。
対象読者
- Snowflakeを使い始めた方
- Cortex AIの全体像を把握したい方
- 各機能の違いや使いどころを知りたい方
2. Cortex AIの全体像
Snowflake Cortex AI は、Snowflake内でLLM(大規模言語モデル)やML(機械学習)を活用するための AI機能の総称 です。最大の特徴は、データをSnowflakeの外に出さずにAIを利用できること。ガバナンスとセキュリティを保ったまま、生成AIの恩恵を受けられる設計になっています。
メニューには多くの項目が並んでいますが、大きく 3つのカテゴリ に分けると理解しやすくなります。
以降、このカテゴリごとに解説していきます。
3.「使う系」― データに話しかける機能たち
このカテゴリの機能は、ビジネスユーザーが自然言語でデータとやり取りする ために用意されています。
エージェント(Cortex Agents)
Cortex Agentsは、いわば AIの司令塔 です。ユーザーからの質問を受け取ると、内部でタスクを分解し、後述するアナリストや検索など 最適なツールを自動で選んで 回答を組み立ててくれます。
構造化データ(売上テーブルなど)と非構造化データ(PDFの報告書など)を横断して分析できるのが大きな強みです。
アナリスト(Cortex Analyst)
Cortex Analystは 「自然言語 → SQL」の自動変換エンジン です。事前にYAML形式の「セマンティックモデル」を定義しておくと、「先月の売上トップ製品は?」といった質問からSQLを自動生成し、結果を返してくれます。
ビジネスユーザーがSQLを書けなくても、チャット感覚でデータ分析を行える点がポイントです。
検索(Cortex Search)
Cortex Searchは、Snowflake内のテキストデータに対する セマンティック検索(意味検索) を提供するサービスです。従来のキーワード検索だけでなく、言葉の「意味」を理解して類似した文書を見つけてくれます。
たとえば「オフィスカジュアルに合うシャツ」と検索すると、「通勤にも使えるトップス」のように表現が異なる商品もヒットするイメージです。RAG(検索拡張生成)の検索エンジンとしても活用できます。
Snowflakeインテリジェンス
Snowflakeインテリジェンスは、上記のアナリスト・検索・カスタムアクション(メール送信など)を 1つのチャットUIに統合した体験 です。Snowsightから直接アクセスでき、ビジネスユーザーが技術的な知識なしにデータ分析からアクション実行までを行えます。
💡 活用シナリオ:ECサイト運営チーム
- 「6月〜8月の製品カテゴリー別の売上動向を教えて」→ アナリスト がSQLを生成しグラフ表示
- 「ジャケットに関するサポート問い合わせの傾向は?」→ 検索 がサポートケースから関連文書を取得
- 「分析結果をチームにメールして」→ カスタムアクション でメール送信
これらをすべて エージェント が自動でオーケストレーションし、インテリジェンス のチャットUIからシームレスに操作できます。
4.「作る系」― AIパイプラインを組み立てる機能たち
このカテゴリは、開発者やデータエンジニアがAI処理を構築する ための機能群です。
AI Studio
AI Studioは、Cortex AIの各サービスを GUIで作成・管理するための入口 です。Cortex Searchサービスの作成やセマンティックモデルの設定など、SQLコマンドを使わずにブラウザ上で操作できます。
機能(Cortex AI Functions)
SQLやPythonから呼び出せる AI関数群 です。2025年11月に多くの関数が一般提供(GA)されました。代表的な関数は以下の通りです。
| 関数名 | できること |
|---|---|
AI_COMPLETE |
LLMによるテキスト生成(要約・質問応答など) |
AI_CLASSIFY |
テキストや画像をカテゴリに自動分類 |
AI_EXTRACT |
テキスト・ドキュメント・画像から情報を抽出 |
AI_TRANSLATE |
テキストの多言語翻訳 |
AI_EMBED |
テキストや画像のエンベディング(ベクトル化) |
AI_SIMILARITY |
2つの入力間の類似度を計算 |
AI_TRANSCRIBE |
音声・動画の文字起こし |
AI_REDACT |
PII(個人情報)の自動検出・マスキング |
これらをSQLの中で呼び出すだけで、構造化データと非構造化データを同一クエリで横断分析するマルチモーダルAIパイプラインを構築できます。
関数(カスタムUDF / プロシージャ)
ユーザーが独自に定義した UDF(ユーザー定義関数)やストアドプロシージャ を管理する画面です。ここで作成した関数は、Cortex Agentsに「カスタムツール」として登録でき、エージェントから自動的に呼び出されるようになります。
💡 活用シナリオ:顧客レビューの自動分析パイプライン
-
AI_CLASSIFYで顧客レビューをポジティブ/ネガティブに分類 -
AI_EXTRACTで不満の原因キーワードを抽出 - SQLで集計・可視化
- カスタムプロシージャでSlack/Teamsに自動通知
すべてSnowflake内で完結し、データを外部に出す必要がありません。
5.「育てる系」― 従来のMLモデルの管理・改善を支える機能たち
このカテゴリは、AIモデルのライフサイクル全体を管理・改善する ための機能です。
モデル
Snowflake内で利用可能なLLMやMLモデルの 一覧管理とアクセス制御 を行う画面です。OpenAI、Anthropic(Claude)、Meta(Llama)、Mistral AI、DeepSeekなど、複数のプロバイダーのモデルがSnowflake内にホストされています。
アカウントレベルの許可リスト(CORTEX_MODELS_ALLOWLIST)やRBAC(ロールベースのアクセス制御)を使って、「どのロールがどのモデルを使えるか」を細かく管理できます。
機械学習(Cortex ML)
需要予測や異常検知といった 従来型のML機能 をサーバーレスで提供します。LLM(生成AI)とは異なり、時系列データの予測など数値ベースのタスクに向いています。エージェントからも呼び出すことが可能です。
実験
MLモデルの開発プロセスにおける 実験管理 の機能です。異なるハイパーパラメータや特徴量の組み合わせで行った試行を記録・比較し、最適なモデルを効率的に選定できます。
評価
エージェントやモデルの パフォーマンスを監視し、継続的に改善する ための機能です。TruLens等のAI Observabilityツールと連携し、精度や応答品質をトラッキングできます。
💡 活用シナリオ:小売業の在庫最適化
- 機械学習(Cortex ML) で商品別の需要予測モデルを構築
- 実験 機能でパラメータの異なる複数モデルを比較
- 最も精度の高いモデルを本番デプロイ
- 評価 機能で予測精度を定期モニタリングし、劣化を検知したら再学習
6. まとめ ― まず何から始める?
各機能の役割を改めて整理します。
| やりたいこと | 使う機能 |
|---|---|
| 自然言語でデータを分析したい | アナリスト / インテリジェンス |
| 社内文書をAIで検索したい | 検索(Cortex Search) |
| 構造化 × 非構造化を横断分析したい | エージェント |
| SQLの中でAI処理を組み込みたい | 機能(AI Functions) |
| 利用モデルを制御・管理したい | モデル |
| 需要予測・異常検知をしたい | 機械学習(Cortex ML) |
| モデルの精度を継続監視したい | 評価 |
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事がSnowflake Cortex AIの全体像を掴む助けになれば幸いです。
