5/16 リンクが間違っていたので修正しました。
はじめに
1年ほど前、Amazon Prime Videoで映画『Winny』が配信されました。その中で、金子勇氏が熱く語る「誤差拡散法(ED法)」のシーンが印象的です。
この映画をきっかけに、「誤差拡散法」という言葉が多くの人の目に触れ、Qiita上でも大きな話題となりました。最初の盛り上がりのきっかけとなった記事はこちらです:
『Winny』の金子勇さんの失われたED法を求めて...いたら見つかりました
https://qiita.com/kanekanekaneko/items/901ee2837401750dfdad
この記事では、筆者がなかなか見つからなかった手がかりを粘り強く探し、最終的には別の方がWebアーカイブからコードを発見・再現しています。
これほどまでに苦労した背景には、金子氏の論文がリジェクトされ、正式に発表される機会がなかったという事情があるのでしょう。
そして今、もはや“幻”とされていた誤差拡散法が、ついに論文として公開されました。
A Basic Evaluation of Neural Networks Trained with the Error Diffusion Learning Algorithm
この論文はarXivに投稿されたもので、査読前ではあるものの、ED法がこうして世界に向けて共有されたことに感動を覚えます。
論文の著者について
本論文の著者は藤田 一寿氏(公立小松大学)です。リサーチマップはこちら:
https://researchmap.jp/read0128699
公立小松大学は私自身初めて聞く名前でしたが、それもそのはず。かつての私立短大や専門学校が統合され、2018年に開学した比較的新しい大学とのことです。
参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/公立小松大学
筆者による誤差拡散法のコードはGitHubでも公開されています。
https://github.com/KazuhisaFujita/EDLA
論文の内容(要約)
※以下はAIによる要約を元に、一部改変を加えた内容です。
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ED法は、以下の3つのタスクにおいて評価されています:
- パリティチェックタスク:論理演算の学習能力を評価
- 回帰タスク:連続値の予測精度を評価
- 画像分類タスク:視覚的特徴の抽出と分類性能を検証
また、ニューロン数、ネットワークの深さ、学習率といったハイパーパラメータを系統的に変更しながら、ED法の性能を詳しく分析しています。
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主な結果
- 高い精度を達成:全タスクで一貫して高い精度を示し、従来のバックプロパゲーション(BP)と同等の性能を発揮
- ハイパーパラメータの影響:学習率、ネットワークの深さなどが収束速度・学習効率に大きく影響することを確認
- 内部表現の分析:ネットワーク内部を可視化した結果、BPと同様に意味のある特徴抽出が行われていることが示された
最後に
最近、arXivではPDFだけでなくHTML形式でも論文を公開しており、ブラウザ上での翻訳がしやすく非常に助かっています。
例:https://arxiv.org/html/2504.14814v2
昨年4月頃からQiitaではED法が盛り上がりましたが、2か月ほどでそのブームは落ち着いてしまいました。そんな中、こうして論文という形で世界に向けて公開してくれる方がいることに感動しました。
これを機に、さまざまな研究者がED法について再び注目し、研究が進むことを願っています。
あ、私には無理ですが。