この記事の概要
最近、技術コミュニティでは「解像度を上げる」「言語化力を高める」といったアウトプットの質に関する話題をよく見かけます。
自分の思考を明確に言語化し、他者に伝える力はとても重要です。
しかし、アウトプットに注目が集まる一方で、インプットの質、つまり「読解力」についてはあまり語られていないように感じます。
どれだけ言語化力を磨いても、他者の発言やドキュメントを正確に理解できなければ、コミュニケーションは成立しません。
私はデザイナーとエンジニアの両方を経験してきた中で、読解力の重要性を痛感する場面が多くありました。
この記事では、私自身の経験を振り返りながら、読解力とは何か、どう高めていくかについて考えていることをまとめます。
読解力とは何か
読解力というと「文字を読む力」と思われるかもしれませんが、この記事ではもっと広く扱います。
文章を読んで理解することだけでなく、会議やミーティングでの口頭の発言を聞いて理解することも含みます。
私が考える読解力は、次の4つの要素から成り立っています。
- 書かれている(語られている)内容を理解する
- 書かれていない(語られていない)文脈を読む
- 構造やパターンを見抜く
- 情報を批判的に吟味する
単に文字を追ったり言葉を聞いたりするだけでなく、その背景にある意図や情報の構造を捉え、それが妥当かを検証する力が読解力だと考えています。
私の仕事における読解力
4つの要素それぞれについて、実際の仕事でどう活用しているかを紹介します。
内容を理解する
デザインガイドラインやフレームワークの公式ドキュメントを読んでチームに説明したり、外で聞いてきた話を社内に展開したりする機会があります。
専門用語や抽象的な概念を、具体例を交えて噛み砕いて伝える作業です。
まずは文字として、言葉として表されている表面的な内容を正確に把握することが、すべての起点になります。
文脈を読む
デザインレビューで「このUIで何ができるか一目で分かりづらいから説明してほしい」というフィードバックを受けたとき、字面通りの分かりやすさの指摘だけでなく、「どういう過程で考えたのか、他に考えたものはあるのか」という質問の可能性も考えます。
また、既存のコンポーネントライブラリを見たとき、単にコンポーネントの仕様を追うだけでなく、なぜその設計が選ばれたのか、どんな課題を解決しようとしたのか、経緯を推測しようとする習慣があります。
書かれていない背景や意図を読み取ることで、より深い理解に繋がります。
ただし、書かれていないことに勝手に自分のバイアスで文脈を足して、勝手に怒るようなことはしてはいけません。
構造を見抜く
長い会議やSlackのスレッドを読んで要点をまとめる作業では、脱線した話を削ぎ落とし、中心となる論点だけを抽出します。
散在する情報を階層的に整理し、「結局何が決まったのか」「何が未解決なのか」を明確にします。
新しく入るプロジェクトのデザインデータを読み解くときも、個別のコンポーネントではなく、全体の構造やトークンの階層、命名規則のパターンを見抜くことを意識しています。
情報の構造を理解し再構成する作業です。
批判的に吟味する
よく似た2つのデザインパターンやアプローチの違いを理解するとき、それぞれの定義を理解するだけでなく、「本当にこの説明は正しいか」「別の解釈はないか」と自問します。
複数の記事を比較したり、実際にプロトタイプを作ってみたりして、両者の関係性や使い分けの基準を自分なりに検証します。
情報をそのまま受け入れるのではなく、常に吟味する習慣が理解を深めます。
読解力を高めるために実践していること
何度も読む
一度読んで分かった気になるのではなく、重要な文書は何度も読み返します。
一度目は全体の流れを掴むため、二度目は細部を理解するため、といったイメージです。
相手の立場と情報を想像する
文章や発言を読むとき、「この人はどんな立場で、どんな情報を持っているのか」を想像します。
例えばデザインガイドラインを書いた人が前提としている知識、クライアントが求めているビジュアルの方向性、デザインシステムを作った人が直面していた制約など。
相手が持っている情報と自分が持っている情報の差分を意識することで、なぜこの表現になったのか、なぜこの説明が省略されているのかが理解できます。
文脈的に補完されるであろう情報を想像する
書かれていないことを推測しながら読みます。
「この判断の背景には何があったのか」「このデザインを選んだ理由は何か」「この説明で省略されている前提は何か」。
文脈から補完される情報を想像することで、表面的な理解を超えて、より深い理解に到達できます。
ただし、想像した内容が正しいとは限らないので、可能であれば確認するようにしています。
読解力と言語化力の関係
読解力と言語化力は表裏一体の関係にあります。
読んで理解した内容を言語化することで理解が深まり、言語化の過程で理解の穴に気づきます。
逆に、自分で言語化する苦労を知ることで、他者の言語化の背後にある意図や苦労が理解しやすくなります。
ツールを使う場面でも、最終的には人間の読解力と言語化力が本質だと考えています。
まとめ
言語化力が注目される今、読解力についてもっと語られるべきだと思います。
読解力は次のような要素から成り立っています。
- 書かれている内容を理解する
- 書かれていない文脈を読む
- 構造やパターンを見抜く
- 情報を批判的に吟味する
そして、読解力を高めるには次のような実践が有効です。
- 何度も読む
- 相手の立場と情報を想像する
- 文脈的に補完されるであろう情報を想像する
読解力は「相手を理解する力」であり、言語化力は「自分を伝える力」です。
この両輪があってこそ、真のコミュニケーションが成立します。
どちらも一生をかけて磨き続けられる、終わりのないスキルだと考えています。