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Ateam LifeDesignAdvent Calendar 2024

Day 21

プロダクトの品質を判断するときに考えていること

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この記事の概要

私は会社でデザイナー・エンジニア混成の部の部長とリードデザイナーとを兼務しています。
どちらの立場でも「これを世に出して良いか」「どこまでのクオリティを求めるか」といった判断をすることは多いです。

同じ時期に部長とリードデザイナーとを兼務している人は少ないと思うので、両方の視点をあわせて言語化したら面白いのではないか?と思い記事にしてみました。

そのときどき作るものによってレビュー内容は変わるわけですが、根幹にはこういった視点がある、というのをまとめています。
書いてあるテキストをそのまま展開できるような記事ではないですが、考え方の参考になれば幸いです。

品質全般について

部長として

使い勝手や美しさなどものづくりとしての品質と、かける時間やお金に対してどれだけのリターンが見込めるかという事業的な品質のバランスを重要視しています。
「良いもの」として存在できる閾値を見極めて、それを超える範囲で速くリリースできて効果が高い施策を考える、といったイメージです。

部長なのでもちろん数値的な責任は発生しますが、それに固執しすぎないよう気をつけています。
極端な話、私の在籍期間中だけ数値目標がクリアできて、数年後にプロダクト自体がボロボロになっては意味がありません。
「制作部門の部門長が数値だけに固執してしまったら、誰が会社としてプロダクトの品質に責任を持つんだ?」と自分に問いかけながらバランスを考えています。

リードデザイナーとして

プロダクトそのものの使い勝手や美しさにほぼ全ベットしています。
もちろん時間のかかりすぎる計画やリターンの見込めない機能には力をかけません。
しかし大抵のものは「私が○日で終わらせるので、このクオリティを必須としましょう」です。

また、Webサービスは作って終わりではなく運用・改善してナンボです。
そのため「今日仕上がったものが良ければそれで良い」という空気にならないよう気をつけています。
数ヶ月後に自分達が見てあやふやになりそうであれば、デザインデータ・コード・ドキュメントなど何でもちゃんと整備します。

リードが現実的な計画やクオリティで仕事を進めていては、後輩達も「これくらいで良いんだ」と思ってしまうでしょう。
多少は「クオリティ高過ぎ」を目指すくらいで良いと思っています。

使用感について

部長として

100人いたら100人とも、好きでいてくれて、不満や文句がなくて、十全に使える、というのは無理な話です。
何を作るにしても「今回のメインターゲットは〇〇の層」といったセグメントがあります。
ですから、メインの人達が一番快適な状態をまず考え、それを実現するための期間やお金を見積もって判断します。

すべての人にとって良いものを目指していると、いつまでも世に出すことができません。
世に出せないと、利益を出すことができず、自分たちの会社が存続できません。

まずはメインとなる層が満足してくれるレベルを重視し、そこから生まれた顧客の活動や我々の知見、利益を元手に段階的にアップデートするようなイメージで判断しています。

リードデザイナーとして

「今自分が作っているものは、100人いたら80人は満足してくれるだろう。しかし、81人にするにはどうしたら良いのか。」
といったことを締め切りまで考えています。

リードを任されている以上、期日いっぱいを使って当初目標(例えば100人中80人の満足)を達成するのでは遅いです。
できるだけ早く合格ラインは達成した上で「残り一週間でどこをどう良くできるか」といった努力ができるよう、調整しています。

ただし、中には「最低限できれば1日でも早く出した方が良い」というプロジェクトもあります。
そういうときは、期日いっぱい使うことはしません(というか、その手のプロジェクトなら色々を調整して2, 3日で出すようにしますが)。

見た目について

部長として

「安定してこのクオリティが出ている」と言えるラインを意識します。

作り手としては日々たくさん色々なものを作っているので、たまに少しクオリティの下がったものが出ても「平均的に言えばOK」と感じてしまいがちです。
しかし顧客との出会いは「今日が初めての利用」「たまたま目にしたのが今回」など、どんな出会い方をしているか分かりません。

一度低下した印象はなかなか回復しません。
下振れたときのクオリティで印象づいてしまうのは非常にもったいないです。

また、ブランド的な観点でも常に一定水準を保つことは大事です。
一口にブランドといっても構成要素は様々ですが、モノの見た目がブランドに寄与していないわけはありません。
ブランド価値のために、同じ水準で一貫したルック&フィールを提供し続けることも意識しています。

リードデザイナーとして

「今回のクオリティが一番高い」と言えるラインを意識します。

リードともなれば前回と同じクオリティを作るのは当然とも言えます。
存在意義からして、常に最高を更新し続ける必要すらあるのではないでしょうか。

ある程度慣れてくれば、そこまで考えずとも半自動で手を動かして完成させることもできます。
しかしそんなことではいけないので、毎回ちゃんと悩み、最高を更新するための苦労をあえてしています1

ただし、デザイナーとしての観点だけで気合いを入れ過ぎると、不必要に尖ったり、玄人好み(?)になりすぎてしまったりもします。
気合いを入れて最高レベルを更新するつもりではいつつも、あくまで提供する場や人にとって一番フィットする2のを重視します。

技術について

部長として

組織として、初めて取り組むような企画であれば手に馴染んだ技術を。
慣れた企画であれば技術的なチャレンジを。
といったバランスで考えています。

企画も技術も新しいと、変数が多くリリースまでの計画が不確実になります。
とは言え安定ばかりを取り続けていると組織として停滞してしまいます。
そのため、安定している場所を多くしつつ、1, 2つの新技術を取り入れる方針でいます。

傾向の話で言えば新しい技術3を使用した方が品質も高まることが多いです。
しかしときには「若干古いけど自分達に馴染んでいる、知見がある」ようなものの方がフィットしている場面もあるため、柔軟に考えるようにしています。

リードデザイナーとして

新しい企画であれば、現代的な技術かつ捨てやすいもの。
PoCやプロトタイプなどに一人でアサインされているのであれば、最大限の速さで作れるもの。
既存のプロダクト・現在の延長線上にあるものであれば、今あるものを踏襲しつつ構成だけブラッシュアップする。

など、性質にあわせて変えています。

いずれにしても「これが馴染んでいるから」といった判断はあまりしません。
自分一人がアサインされているときであれば、さっさと慣れれば良いだけなので現状の馴染み度合いは無視できます。
チーム制作の場合でも、今後の組織のことを考えると、ある程度世の標準的なものをメンバーに知ってもらった方が良いので「今の自分達がどうか」よりは「今の潮流4がどうか」で判断します。

作る人について

若干話は逸れますが、プロダクトそのものだけでなく、人選も品質に関わるので記載します。

部長として

「ベテランのAさんに任せると絶対安心だけど、そろそろ新人のBさんにも良い機会として挑戦してもらいたい」というときはあります。
この場合は非常に悩みます。

画一的な正解というか、常々頼れるメソッドは生み出せていません。
そのときどきのバランスを見ながら「今回はこっちの選択をする」と決めています。

ただ少なくとも、選択が最善だったと思えるだけのアシストをしたり、場づくりをしたり、そういったことは意識しています。

リードデザイナーとして

素直な心としては「私が作ります」ばかり思っています。
ただ、それは組織としてサスティナブルではありません。

リード的な考えや手の動かし方は、一度にたくさんの人に教えづらいと思っています。
そのため、一緒に活動する場合でも1, 2名までにしてます。
師弟関係のようなイメージです。

まとめ

部長としての役割のときと、リードデザイナーとしての役割のときで、随分考えていることが違います。

全体をざっくりまとめると次のようになります。

  • 部長
    • プロダクトに責任を持ちつつも、予算や組織など広い範囲のことを見る必要がある
    • そのため、プロダクト品質一点突破ではなく、もっともバランスの良い選択肢を取れるように考える
  • リードデザイナー
    • 後輩育成などの観点はありつつ、基本的には自分がどれだけ動くかが重要
    • そのため、常識レベルを超えたクオリティやスピードを実現するための方法にフォーカスする
  1. 念のため記載しますが、無論締め切りは守った上で、です。

  2. こういった話をするとたまに「一般の人にはデザイナー様のセンスは分からないって言いたいのね」と言われてしまうことがあるのですが、そういうことではありません。文学的で格好いいコピーでも、小さい子供がターゲットの企画ならフィットしないとか、非常に見目いい淡めのカラーパレットが作れたとして、ご年配の方がターゲットならフィットしないとか、そういうのを意識するということです。

  3. 最新という意味ではなく、現代くらいのニュアンスです。

  4. 「これが流行っていてイケてる」という意味ではなく「世の中全体がおおよそこういう動きをしている」みたいなニュアンスです。ごく簡単な例えで言えば、個別フレームワークの良し悪しはともかく、昨今であれば命令的UIではなく宣言的UIを実現できるようにしよう、といったことです。

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