賃貸マンションのダウンライト12個をHome Assistantから操作したかった。リビングに8個、寝室に4個。口金はGX53。
結論から書くと、できなかった。しかも「難しかった」ではなく「物理的に不可能」だった。
調べ尽くして不可能を確定させるまでにやったことと、その過程で分かった日本のGX53事情を残しておく。
目次
- 前提:うちのダウンライト
- ルート1:GX53のスマート電球に交換する
- 11mmの余裕があるのに入らない
- 業界標準はΦ74だった
- ルート2:延長アダプタで逃がす
- ルート3:GX53からE26に変換する
- そもそもの前提が間違っていた
- ルート4:壁スイッチ側をスマート化する
- 残ったもの
- まとめ
前提:うちのダウンライト
- 器具:Panasonic NNN61511WZ(埋込φ85)
- ランプ:Panasonic フラットランプ LLD2000LCB1(GX53、Ra83、531lm、2700K)
- 個数:リビング8個、寝室4個
- スイッチ:ロータリー調光ダイヤル+押し込みスイッチ(いわゆるライコン)
- 住居:賃貸
スイッチはダイヤルを回して明るさを変え、押し込むとON/OFFする方式。リビングにはリビング8個用のダイヤル、寝室には寝室4個用のダイヤルと、リビングのダウンライトを消せる押し込みスイッチがある。
やりたかったのは「HAから調光とON/OFFを制御する」だけ。単純な話に見えた。
ルート1:GX53のスマート電球に交換する
まず考えるのはこれだろう。器具はそのままで、ランプだけスマート電球に替える。トイレや脱衣所ではPhilips Hue、キッチンではIKEAのTRÅDFRIで同じことをして、問題なく動いていた。
GX53のスマート電球はAliExpressにある Moes ZB-TD6-RCW-GX53-MS。Zigbee2MQTTの対応デバイスDBにも登録されていて、動作は確定している。6W/540lm、2700-6500K、RGB対応。1個700円ちょっと。
4個買った。
11mmの余裕があるのに入らない
届いて、天井に持っていって、入らなかった。
最初は意味が分からなかった。埋込穴はφ85で、Moesの公称はΦ74。11mmも余裕があるはずなのに、明らかに途中で止まる。
測ってみると
Panasonic フラットランプ:全体がずっとΦ70
Moes GX53 :差し込み部Φ70 → 段差 → 本体Φ73-74
原因はこれだった。
φ85というのは天井に開ける穴のサイズであって、器具の化粧枠の内径ではない。枠の内径はΦ70しかない。パナソニックは自社のフラットランプ(Φ70)専用に、余裕を持たせずツライチで設計している。
Moesの方は、GX53の差し込み部こそΦ70で規格通りだが、その奥の放熱部がΦ73-74ある。この段差が枠の入口に当たって止まる。
つまりGX53という口金規格には合っているのに、器具に入らない。
業界標準はΦ74だった
「じゃあ細いGX53スマート電球を探せばいい」と思って探した。結果、業界全体がΦ74前後だった。
| 製品 | 直径 |
|---|---|
| Moes ZB-TD6-RCW-GX53-MS | Φ74 |
| AUIOMUTO GX53 スマート | 2.91インチ = Φ73.9 |
| KOJIMA GX53-RGB-WW-CW-7W-ZGB | Tuya系OEM、同系統 |
| eBay汎用 GX53 7W | Φ74 × 28 |
| K JINGKELAI GX53 | Φ74 × 30 |
| Amazon汎用 GX53 | Φ75 × 25 |
| Litevance GX53 | 2.9インチ = Φ73.7 |
| Norman Lamps LED-GX53-7W | 2.95インチ = Φ74.9 |
スマート電球も普通のLEDも、Zigbeeも Wi-Fiも、例外なくΦ74前後。Φ70に収まるGX53電球という製品カテゴリが存在しない。
見方を変えると、業界標準がΦ74で、パナソニックのΦ70の方が独自寸法ということになる。GX53はヨーロッパやロシアで普及した規格で、日本ではパナソニックが自社のフラットランプ用に採用した。そのとき器具側を自社ランプにぴったり合わせてしまった。
このΦ4mmの差が、12個のダウンライトをスマート化不能にしている。
ちなみにMoesは寸法通りの製品で、何も悪くない。公称Φ74で実測Φ73-74だった。
ルート2:延長アダプタで逃がす
器具の中を覗くと、ソケットから奥は外広がりになっていた。10mmほど下げられれば、太い部分が広い空間に収まって入る。
そう思って「GX53 延長アダプタ」を探した。
存在しない。
見つかるのは全部「口金変換」アダプタだった。
- E26/E27 → GX53(E26ソケットにGX53電球を挿す)
- GX53 → E26/E27(後述)
E26には「約5cm延長ソケット」のような製品があるのに、GX53には無い。ニッチすぎて商品化されていないのだろう。
GX53ソケット単体(スガツネ工業のSKT-GX53型など)を買って自作する道はあるが、AC100Vで、天井で、12個分やることになる。電気工事士の資格も要る。落としどころとして現実的ではない。しかし、ちょっと電気工事士の資格でも取ってみようかなとは思った(笑)
ルート3:GX53からE26に変換する
次に考えたのがこれ。GX53ソケットに変換アダプタを挿して、E26のスマート電球を使う。E26なら選択肢は無限にあるし、手持ちのHueやTRÅDFRIも使える。アダプタの分だけ下に出るので、太さの問題も解決する。
Yahoo!知恵袋に、まさに同じことを聞いている人がいた。回答はこうだった。
一般に良く使われている「E26口金→GX53口金に変換出来るアダプター」はありますが、逆のダウンライトの「GX53口金→E26口金に変換出来るアダプター」はありません
検索結果に出てくるのは全部 E26 → GX53 の方向で、逆方向は流通していない。
同じ知恵袋の回答では、GX53ダウンライトを他の照明に替えたければ、器具を天井から外して穴を塞ぎ、クロスを貼り直して引掛シーリングを付ける工事が必要で、賃貸ならやめておけと書かれていた。その通りだと思う。
ルート4:壁スイッチ側をスマート化する
電球が駄目なら、スイッチを替えればいい。ここが最後の望みだった。
国内で使えそうな候補はいくつかあった。
LinkJapan 照明スイッチ SWZ。国内メーカーで技適・PSE取得済み、Zigbee 3.0、110V対応、日本の一般スイッチと交換前提。ダウンライトのスマート化を明確に謳っている。ただしON/OFFスイッチであって調光器ではないし、専用ハブが必須でHAとの直接連携は望めない。
SONOFF ZBMINI-L2。3×4×2cmのZigbeeモジュールを既存スイッチの裏に入れる方式。中性線不要、Z2M直結、2,000円程度。国内で使っている人のブログもある。ただしON/OFFのみ。
Moes / Zemismart の中性線不要Zigbee壁スイッチ。100V対応、パナと同サイズで既存スイッチと交換できる、という実機レビューがある。これもON/OFFのみ。
調光対応のものを探すと、今度は別の壁にぶつかる。同じことを調べた人がこう書いていた。
Dimmer付は私もだいぶ探しましたがNo Neutral製品がなく、壁内にDimmerスイッチをつけると既存の物理調光器とのダブルDimmer状態になってしまう。一方で、調光器付きのスマート壁スイッチを探すと日本の壁スイッチサイズに合わないので壁穴サイズを触る必要がある
さらに、
白熱電球の時代からある調光器でLED照明を使うためには、位相制御調光器対応のLED器具である必要がある。またZigbee対応dimmerを探してみるとどれも中性線が必要なようです
中性線、JISサイズ、位相制御とLEDの相性。この3つを同時に満たすスマート調光スイッチが、日本には無い。
そして最後に、賃貸という条件がある。壁の中の配線を変更すれば、退去時に元に戻す必要がある。仮に資格があっても賃貸で配線をいじるのは別の話だ。
ここで断念した。
残ったもの
12個のダウンライトは手動のまま運用することにした。
代わりに、フィンガーロボット(物理的にボタンを押すデバイス)を試すつもりでいる。スイッチには押し込みのON/OFFがあるので、それを押させればON/OFFだけはHAから制御できる。調光はダイヤルで好みの位置に固定しておく。
不格好だが、配線を一切触らずに済む。賃貸で使える唯一の手段がこれだった。
Zigbee版のFingerbot Plus(Tuya TS0001_fingerbot)ならZ2Mに直接繋がるので、既存のZigbeeネットワークに乗せられる。ストローク12mm、トルク2kgf。SwitchBotのBluetooth版と違ってメッシュに乗るぶん、距離と応答で有利になるはずだ。
まとめ
日本のパナソニック製GX53ダウンライトをスマート化しようとして分かったこと。
- 器具の枠の内径はΦ70。埋込穴φ85とは別物
- GX53スマート電球の業界標準はΦ74前後。Φ70に入るものは存在しない
- GX53の延長アダプタは製品として存在しない
- GX53→E26の変換アダプタも存在しない(逆方向はある)
- 調光器とスマート電球の併用は危険。寸法以前の問題
- 日本のJISサイズに合うスマート調光壁スイッチが存在しない。中性線の問題もある
- 賃貸だと配線変更という最後の手段も使えない
海外のスマートホーム製品は、当然ながら海外の住宅設備を前提に作られている。GX53という同じ名前の規格でも、日本のパナソニック製品は寸法が違う。壁スイッチのサイズも、中性線の有無も、電圧も違う。
E26のような世界共通の口金なら何の問題もなくスマート化できるのに、ダウンライトになった途端に詰む。日本の住宅でスマートホームをやる難しさは、たぶんこういう細部に集中している。
前の家ではE17電球と深い埋め込み穴でダウンライトとして機能させていた。それはそれでかっこよかったので、もし注文住宅を建てる際はわざわざGX53を選ぶのではなくそちらでもいいのかもしれない。