はじめに
Webアプリケーションを開発する際、サーバーから取得した情報をローカルに保存しておく必要がある場面があります。そのような場合に利用するのがストレージです。ストレージには主に2つの種類があり、それぞれ特徴や利用用途が異なります。本記事では、CookieとWeb Storageについて詳しく解説します。
Cookieとは
Cookieは、JavaScriptの初期から存在するストレージであり、利用が容易である一方、汎用的なストレージとしての利用は推奨されません。Cookieは、サーバーからset-cookieレスポンスヘッダを使ってブラウザに送信される小さなデータで、その内容はブラウザ内に保存されます。ページを遷移したり、ブラウザを再起動しても維持するように設定することができます。ブラウザはサーバーと通信する際に、そのサーバーが保存したCookieがあれば、その内容をリクエストヘッダに含めて送信します。
Cookieの主な利用用途は、セッションの管理やHTTPリクエストのグループ化です。例えば、ログインのためにIDとパスワードを入力しても、次のリクエストの時には持ち越すことができません。Cookieは基本的にサーバー側で利用する情報を保持するためのものであり、クライアント側だけで必要な情報を保持する用途には向いていません。
Cookieには、以下のような属性を設定することができます:
- path:Cookieを適用するパスを指定します。
- domain:Cookieを適用するドメインを指定します。
- max-age:Cookieの有効期限を秒単位で指定します。
- expires:Cookieの有効期限を日付で指定します。
- samesite:Cookieの送信条件を指定します。
// Cookieに保存する値を設定
const value = 'example_value';
// Cookieの有効期限を設定(1日後に設定)
const maxAge = 24 * 60 * 60;
const expires = new Date();
expires.setTime(expires.getTime() + maxAge * 1000);
// Cookieを設定
document.cookie = `my_cookie=${value}; path=/; domain=example.com; max-age=${maxAge}; expires=${expires.toUTCString()}; samesite=lax`;
Cookieは同期的に動作し、小容量のデータを扱うのに適しています。ただし、データ容量に制限があり、一般的には4KBまでとされています。また、Cookieはすべてのリクエストに付加されるため、大量のデータを保存するとパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
Web Storageとは
Web Storageは、HTML5で導入されたストレージであり、CookieよりもデータのKB制限が大きく、ドメインごとに5〜10MB程度のデータを保存できます。Web Storageには、Local StorageとSession Storageの2種類があります。
Local Storageは、保存したデータが永続的に保持されます。一方、Session Storageは、ブラウザを終了する(タブを閉じる)とデータが削除されます。それぞれのストレージには、グローバル変数のlocalStorageとsessionStorageを通じてアクセスすることができます。
Web Storageは、クライアント側でしか利用されないデータの保持に適しています。例えば、ユーザーの設定情報やアプリケーションの状態などを保存するのに便利です。ただし、Web Storageは値として文字列しか受け付けないため、オブジェクトを保存する場合はJSON.stringify()を使ってシリアライズする必要があります。
Web Storageでは、以下のようなメソッドを使ってデータの読み書きを行います:
- getItem(key):指定したキーに対応する値を取得します。
- setItem(key, value):指定したキーと値のペアを保存します。
- removeItem(key):指定したキーとその値を削除します。
- clear():すべてのキーと値のペアを削除します。
CookieとWeb Storageの使い分け
CookieとWeb Storageは、それぞれ特徴や利用用途が異なるため、適切に使い分ける必要があります。以下に、それぞれの特徴をまとめます:
- Cookie
- サーバーとクライアントの間で情報を共有する
- 小容量のデータを扱う
- すべてのリクエストに付加される
- 有効期限を設定できる
- Web Storage
- クライアント側だけで情報を保持する
- 大容量のデータを扱う
- リクエストに付加されない
- 有効期限を設定できない(Session Storageを除く)
一般的に、サーバー側で利用する情報を保持する場合はCookieを、クライアント側だけで利用する情報を保持する場合はWeb Storageを使用します。ただし、セキュリティ上の理由から、機密性の高い情報をWeb Storageに保存することは避けるべきです。
まとめ
本記事では、WebアプリケーションにおけるストレージのうちCookieとWeb Storage(Local StorageとSession Storage)について解説しました。Cookieはサーバーとクライアントの間で情報を共有するのに適しており、Web Storageはクライアント側だけで情報を保持するのに適しています。それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けることが重要です。
ストレージの選択には、データの容量、保存期間、利用目的などを考慮する必要があります。アプリケーションの要件に合わせて適切なストレージを選択し、データの保存と管理を効果的に行いましょう。