取引先に送るWordファイル。本文も体裁も整えたし、これで完成……と思っていても、文書の中には画面に見えていない情報が残っている場合があります。
例えば、レビュー時のコメント、修正前の文章、作成者名などです。
Wordにはそれらを確認・削除する機能が標準で用意されています。今回は、何が残り得るのか、Wordでどう確認するのか、そしてブラウザ内で処理する別の方法を整理します。
1. 「非表示」と「削除」は別物
Wordの変更履歴やコメントは、表示設定によって見えなくできます。しかし、見えなくしただけでは文書から削除されたとは限りません。
例えば、修正前の文言や校閲者のコメントを、受け取った人が再表示できる場合があります。Microsoftの公式サポートでも、変更履歴を削除するには承諾・拒否の操作が必要だと案内されています。
参考:Microsoft サポート「Word で変更履歴を記録する」
2. 社外共有前に確認したい6つの情報
| 項目 | 何が残る? | 確認する理由 |
|---|---|---|
| コメント | レビュー中の指摘やメモ | 社内向けのやりとりを渡さないため |
| 変更履歴 | 挿入・削除などの修正記録 | 修正前の文言が残っていないか確認するため |
| 文書プロパティ | 作成者、最終更新者、会社名、テンプレート情報など | 意図しない氏名や所属情報を渡さないため |
| カスタムプロパティ | 独自に設定された管理用の情報 | 文書管理情報を不用意に共有しないため |
| 編集セッションID(RSID) | Word内部の編集識別子 | 編集の痕跡を必要に応じて整理するため |
| 非表示文字 | 非表示属性を付けた文字列 | 表示されていない本文が含まれていないか確認するため |
RSIDは、それだけで直ちに個人を特定できる情報という意味ではありません。ここでは、文書内に残り得る内部情報の一つとして挙げています。
3. まずはWord標準の「ドキュメント検査」を使う
Microsoft Wordを使える場合、最初に試したいのは標準機能です。
- 対象のWord文書をコピーして保存する
- **[ファイル]→[情報]→[問題のチェック]→[ドキュメント検査]**を開く
- 検査する項目を選択して実行する
- 結果を確認し、必要な情報だけ削除する
検査できる情報の種類はWordのバージョンや文書の内容によって異なります。また、削除した情報を元に戻せない場合があるため、元ファイルを残しておくことが大切です。
参考:Microsoft サポート「ドキュメントを検査して非表示のデータと個人情報を削除する」
4. なぜDOCXには「見えない情報」があるのか
.docx は、本文を記録した単一のテキストファイルではありません。実体は複数のXMLファイルなどをZIP形式でまとめたものです。
例えば、文書によっては次のようなファイルが含まれています。
sample.docx
├── word/
│ ├── document.xml # 本文や変更履歴など
│ └── comments.xml # コメント(存在する場合)
└── docProps/
├── core.xml # 作成者・最終更新者など
├── app.xml # アプリケーション関連のプロパティ
└── custom.xml # カスタムプロパティ(存在する場合)
つまり、画面に表示する本文とは別に、校閲情報や文書プロパティが保存されていることがあります。
この仕組みを理解すると、「Wordの画面がきれいだから情報も消えている」とは言い切れない理由が見えてきます。
5. ファイルをアップロードせずに確認する方法もある
標準のドキュメント検査とは別に、ブラウザ内でDOCXを解析・整理するツールとして、私が開発している Word Finalizer も公開しています。
このツールは、DOCXをブラウザで読み込み、対象のXMLを検査して、選んだ情報を処理した新しいファイルを生成する仕組みです。
処理の流れは次のとおりです。
-
.docxファイルをドラッグ&ドロップする(30MBまで) - コメント、変更履歴、作成者情報などの検出結果を確認する
- 処理したい項目だけチェックする
- **「選択項目を処理して最終版を保存」**を押す
- 元の名前に
_finalを付けたDOCXを保存し、Wordで内容を再確認する
ファイルの読み込み、ZIP展開、XMLの解析・編集、再圧縮はブラウザ内で実行します。DOCXの内容を処理のためにサーバーへアップロードしない設計です。
実装のポイント
JavaScriptからfflateを使ってDOCXを展開し、DOMParserでXMLを解析、対象箇所を変更してからDOCXへ再圧縮しています。
変更履歴の処理では、基本的に挿入した内容を残し、削除した内容を除く方向で最終稿を生成します。非表示文字の削除は、直接非表示属性が設定された文字列を対象としており、初期状態では選択しないようにしています。
利用上の注意
- 対応形式は DOCX です。古い
.doc形式や、暗号化されたファイルなどは対象外です。 - Wordの複雑なレイアウトや校閲情報すべてについて、完全な除去や表示の再現を保証するものではありません。
- 非表示文字を削除すると本文そのものが消えるため、必要性を確認してから選択してください。
- 元ファイルは変更しませんが、生成したファイルを必ずWordで開き直し、内容・レイアウト・残存情報を確認してください。
Wordの標準機能で十分な場合は、もちろんそちらを使って問題ありません。ツールは「アプリを開かず、ブラウザ内で対象項目を選んで処理したい」ときの選択肢です。
まとめ
Wordを外部へ渡す前には、本文の見た目だけでなく、コメント・変更履歴・文書プロパティまで確認しておくと安心です。
まずはWord標準のドキュメント検査を活用し、必要であれば Word Finalizer のようなブラウザ内処理の方法も試してみてください。
大切なのは、「見えていない」と「残っていない」を混同しないことです。
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