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遠隔地との共同研究プロジェクトを推進する上で有用だったツールとは

Last updated at Posted at 2017-07-27

こんにちは中村公一です。

京都大学にいた時の大学院生さんの論文がアクセプトされました。私は途中参加して、データの論文化で協力しましたが、プロジェクトの途中で筆頭著者は学位を前に東京へ就職、さらに私は京大を辞してイギリスへポスドクとして戻り、京都にはプロジェクトの責任者が残る、という、論文作成の主要人物三名が地球上で散り散りになるという事態に見舞われました。

離れ離れで研究を続ける上では、当然のようにSkypeによるテレビ電話会議も何度か行いましたが、その他に遠隔地の共同作業で便利だったツールをご紹介します。

ConceptBoardは論文の図へのコメントと進捗の把握に超便利

ConceptBoardというウェブサービスがあります。
cb_logo_300ppi.png

基本的には有料サービスですが、free non-commercial planというのがあり、私たちはこれを利用していました。使えるホワイトボードの総面積に限りがありますが、論文一本ならば無料の範囲で十分対応できました。最初に登録した時は有料プランのトライアルになっていたので、自分で無料プランに切り替える必要がありました。

Non-commercial licenseの内訳

Basic plan
Number of users 1 user
Video & audio conferencing 10 hours per 30 days (0.00 hours used in the last 30 days)
Payment option Free
Whiteboard area 60 m2

こちらの招待のリンクからアカウントを登録頂くと私が 5 m2ばかり面積を追加して貰えるそうです。どうせなら人助けと思ってこちらからどうぞ。
http://app.conceptboard.com/ref/ozURNoOMwI

このサービス内容はどういうものかというとホワイトボードに図をピンで貼り付けておいて、そこへ色んな人がコメントを付箋で貼り付ける、という仕事の仕方をそのまま忠実にデジタルで再現したものです。

screenshot.png

実によく出来ていまして、論文の図をそこへ貼り付けておいて、付箋を貼る気持ちで矢印→を引っ張ってコメントします。それがクラウドに置いてあって、共著者全員が進捗状況を見ることができるわけです。異なるヴァージョンの図を横に並べて置いておくと、時間とともにどのように進捗してきたかが分かり、とても気持ちが良いです。

よく困るのはWordドキュメントに図が貼り付けてある場合で、「この図のこの部分をこういう風にして」という指示を文章で書いても分かりにくいですし、図の上に矢印→などを描くこともできますが、コメントとは別の機能ですから結構やりにくい印象を持っています。

Adobe Readerのコメント機能はもっと使い勝手が良いように思うので、ファイルをDropboxなどに置いて利用すれば実際にはConceptBoardと近い感覚で作業ができるかもしれません。それでも、異なるヴァージョンを横に並べて比べるのは難しいでしょう。

Bitbucketのイシュートラッカーは論文作成時のやりとりにぴったり

もうひとつ、使ってみて好感触だったのは、Bitbucketイシュートラッカーです。大学のメールアドレスで無料で利用できます。

bitbucket_rgb_slate.png

Bitbucketはもちろんプログラミングのコードのヴァージョン管理のためのツールで、レポジトリという保管庫にソースコードを入れてその変化を管理するというのが本来の機能です。同目的のGitHubと並び称されるような存在です。これに付属している機能としてイシュートラッカーというものがあります。プログラムの問題(イシュー)をひとつずつスレッドとして立てて議論する掲示板のようなものですが、問題が解決したかどうか、重要度などをイシュー毎に設定できます。非常に良く出来ており、元々プログラミング上の問題を自分一人でディスカッションするような形で、プログラミングの仕事における実験ノートとして個人使用しており、とても気に入っていました。

それを論文作成のチーム作業に使えるだろうと思って導入してみましたが、とても感触がよかったです。

issuepage-tutorials_issuelist-sidexpand.png

edit_issue.png

論文のやり取りで一番普通の通信手段は電子メールだと思いますが、電子メールで相談していると膨大な量になりがちで、しかもそのどれのどの話題がどう繋がっているのか関係が分かりにくくなりがちです。

Bitbucket本来のバージョン管理機能を一切使わず、イシュートラッカーや他の付属機能だけを使っていたのですが、その中で感じた利点を列挙します。

  • 同じ内容でも、イシュートラッカーを通じて通信を行うと、やり取りの様子が全部一画面に表示されて後が追いやすい
  • 電子メールと異なり、一箇所にチームが集まって話をしているような感覚になる。その点ではLineにちょっと似ています
  • markdown記法のおかげで、要点を箇条書きにするなど、構造化した文章で説明するのがとても容易
  • 話題毎に別々のイシューを立ててやり取りをすると、話題が埋もれにくい
  • 特にrevisionの際に、査読者の挙げた問題点毎にイシューを立てて対策しましたが、非常に作業がしやすかったと感じています
  • 当然ですが、プログラミングに関しては、markdownでソースコードの断片などを書くのがとても簡単です
  • 図を貼り付けることも出来ます
  • レポジトリには原稿や図などのファイルを共有目的で Downloadsのページに載せておくことが出来ます
  • レポジトリに付属のWikiを使ってmarkdown記法で資料をまとめることもできます

研究者の人はmarkdown記法をあまり知らない人が多いかもしれませんが、文章書きの際にプログラマーに多用されているだけあり、思考を整理するにはとても便利な記法です。当然ですがこの記事もmarkdownで書かれています。

なお、なぜ同じようなサービスを提供するGitHubのイシュートラッカーを使わなかったかというと、GitHubでは無料アカウントの場合、公開レポジトリしか作れないからです。投稿前の論文の情報を全部公開するわけに行きませんからBitbucketを採用しました。

なお、そういう立場の方がこの記事を見るチャンスがどれだけあるのかちょっと疑問ですが、新学術領域など、大型の研究プロジェクトで、申請時や成果報告のために領域メンバーが多岐に渡ってやり取りをしなければならない時に、五月雨のように幹部の先生方から電子メールが届きますが、電子メールよりもこのイシュートラッカーを利用して、話題別に情報をやり取りしたほうがずっと効率が良いだろうと思います。届くメールの数は変わりませんが話題別になって話が追いやすいだろうと思います。

まとめ

インターネットがあってよかった、というお話でした。

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