概要
この記事は、Java 8 時代で止まっている人やこれから Java のアップグレードを検討している人向けに整理した Qiita 記事です。
- Java のリリースモデルはどう変わったのか
- 実務で効きそうな言語・標準ライブラリの進化
- Java 8 から移行する際にハマりやすいポイント(調査ベース)
を中心にまとめています。
また、Java 8 は Oracle による商用利用向けの有償延長サポートが2030 年 12 月までとなっています。
筆者自身も、分かってはいるけどなかなか手を付けられていないという状態で、少しずつ焦り始めています。
注記
※ 筆者自身はまだ大規模なJava 8 → 最新 LTS への移行を実践したわけではなく、本記事の内容は主に「調査・情報収集・事例整理」を元にしています。
同じように 「レガシーな環境を前にして、どこから手を付ければいいか悩んでいる」という方と、一緒に状況を整理し、前に進むための記事になればと思っています。
対象読者
- Java 8 を長く使ってきた人
- Java 17 / 21 / 25 への移行を検討中の人
- 「最近の Java って何が変わったの?」を一気に把握したい人
Java のリリースモデルの変化
Java 9 以降は「半年ごとの定期リリース」
Java 8 までは、数年に一度の大型アップデートが主流でしたが、
Java 9(2017 年)以降は 6 ヶ月ごとの定期リリースに変更されました。
| 時代 | リリースモデル | 特徴 |
|---|---|---|
| Java 8 以前 | 数年に 1 回 | 大規模アップデートがたまに |
| Java 9 以降 | 半年ごと | 小刻みで継続的な進化 |
メリットは新機能・性能改善をすぐ使えること。
一方で、「結局いつアップグレードすればいいの?」という問題が出てきました。
LTS
この問題の答えが LTS(Long Term Support) です。
実運用では、基本的に LTS バージョンをアップグレードの基準にします。
| LTS 版バージョン | リリース | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Java 8 | 2014 | 安定だが古典的(現役が多い) |
| Java 11 | 2018 | HTTP Client 刷新など |
| Java 17 | 2021 | record / sealed / pattern matching |
| Java 21 | 2023 | 仮想スレッド(Virtual Threads) |
| Java 25 | 2025 | 最新 LTS・並行処理モデルの成熟 |
言語仕様の進化ピックアップ
var による型推論(Java 10)
- 冗長な型指定が減り、可読性向上
- 静的型付けは維持(型はコンパイル時に確定)
- メソッドローカル変数のみ使用可
- 生成 AI がフル活用される現在、むしろ可読性が落ちるので嬉しくないかも
- 「var 使う派 / 使わない派」で宗派が分かれそう
// Java 8
List<String> names = new ArrayList<>();
// 最新Java
var names = new ArrayList<String>();
テキストブロック(Java 13)
- SQL / JSON / HTML をそのまま書けるようになります
- StringBuilder 地獄から解放されそうで嬉しい
var json = """
{
"job": "engineer"
}
""";
Switch 式(Java 14)
- switch が「式」になり、戻り値を返せる
- break 不要
- 旧 switch 文で break 位置による微調整に親しんできた身としては正直ちょっと不安になるが、果たして慣れるのだろうか
// Java 8
switch (i) {
case 1: s = "Hello World"; break;
}
// 最新Java
var s = switch (i) {
case 1 -> "Hello World";
};
sealed クラス(Java 15)
- 継承できるクラスを制限できる
- enum+クラスの中間的表現で、switch 式との相性が非常に良いらしい
public sealed interface Employee permits FullTime, PartTime {}
instanceof のパターンマッチング(Java 16)
- キャスト不要で型チェックと変数定義を同時にできる
- 地味に嬉しい
// Java 8
if (obj instanceof String) {
String s = (String) obj;
}
// 最新Java
if (obj instanceof String s) {
System.out.println(s.length());
}
record クラス(Java 16)
- コンストラクタ / getter / equals / hashCode / toString を自動生成してくれる
- DTO / 値オブジェクト用途で便利そう
record Company(String name, int headcount) {}
標準ライブラリの強化ピックアップ
不変コレクションファクトリ(Java 9)
- 不変がデフォルト(!!)
- Arrays.asList の罠を回避
- Java 8 の民からするとこの書き方で宣言できるのは革新的
var list = List.of(1, 2, 3);
var map = Map.of("A", 1, "B", 2);
JShell(Java 9)
- クラスを書かずに Java を試せる
- 実務での使用シーンは思い浮かばなかったが、学習用途には良さそう
$ jshell
jshell> System.out.println("Hello world")
String クラスの改善(Java 11)
- 文字列処理の「よくあるやつ」がほぼ標準で揃いました。
" ".isBlank();
"abc\ndef".lines();
" hello ".strip();
"hello".repeat(3);
HTTP クライアント刷新(Java 11)
- HTTP/2 / 非同期 / WebSocket 対応
- HttpURLConnection からの卒業
HttpClient client = HttpClient.newHttpClient();
HttpRequest request = HttpRequest.newBuilder()
.uri(URI.create("https://example.com"))
.build();
実行環境・VM の変化ピックアップ
GC・ランタイム・セキュリティの変化
-
デフォルト GC
- Java 8:Parallel GC
- Java 9 以降:G1GC(停止時間予測重視)
-
UTF-8 の完全デフォルト化(Java 18)
- OS 依存の文字コード問題が大幅に減少
-
SHA-1 署名 JAR の無効化(Java 21 以降)
- セキュリティ観点でアップグレード必須なケースあり
-
jlink による軽量ランタイム生成
- Docker / K8s 環境での起動時間・サイズ削減に有効
並行処理モデルの進化(Java 21 → 25)
Java 21 で導入された 仮想スレッド(Virtual Threads) は、Java 25 時点では実運用での利用がかなり現実的になっているらしい
…が、そもそも 21 も使っていないのでよくわかりませんでした。
(ちゃんと使ったら、また別の記事でまとめたいです)
Java 8 から移行する際の注意点
移行時よくあるポイント
| 症状 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| Unsupported class file | 古い依存ライブラリ | 依存関係更新 |
| InaccessibleObjectException | アクセス制御強化 | --add-opens(暫定) |
| 文字化け | UTF-8 固定化 | 入出力確認 |
| GC が効かない | G1GC 自動調整 | 古い GC オプション削除 |
方針
- まず 依存ライブラリ更新 を最優先
- JVM オプションは一旦デフォルトで検証
個人的におすすめだと思う指針(2025 年時点)
- 新規開発 → Java 25(最新 LTS)
- 既存アプリの段階的移行 → Java 17 を中継点にするのが安全
なぜ「Java 17 を中継点」にする話がよく出てくるのか?
理由 ①:Java 17 は「最初のモダン Java の完成形」
上で挙げたような言語仕様の変化など、Java 9〜16 で段階的に導入された多くの要素は、Java 17 で一通り安定しました。
そのため Java 17 は、「古い Java」と「今どきの Java」の境界線として非常に分かりやすいバージョンのようです。
理由 ②:エコシステム(ライブラリ・フレームワーク)の対応が最も厚い
多くの主要ライブラリ・フレームワークは、Java 17を長くサポート対象の中心に据えてきたようです。
- 各種 ORM / テストライブラリ
- ビルドツール(Maven / Gradle)
結果として、
- 依存関係の更新が比較的スムーズ
- 移行時の情報・事例が豊富
という実務上のメリットがあります。
理由 ③:8 → 25 の変化量を分割できる
Java 8 から Java 25 までを一気に上げると、
- モジュールシステム導入の影響
- JVM 内部挙動の変化
- セキュリティ強化による例外
などが 同時多発的に起きがちです。
Java 17 を中継点にすることで、
- 8 → 17:言語仕様・ライブラリ中心の変化
- 17 → 25:並行処理・VM・運用面の進化
と段階的に検証できます。
とはいえ「必須」ではない
以下の条件が揃っている場合は、
Java 8 → 25 へ直接アップグレードする判断も十分に現実的です。
- 依存ライブラリが Java 25 対応済み
- テストが自動化されている
- JVM オプションや GC 設定に強く依存していない
実務向け結論
- 慎重に進めたい既存システム → 8 → 17 → 25
- 体力・検証環境があるチーム → 8 → 25 も選択肢
まとめ
- Java は Java8 以降も 着実に進化していた
- 一概に「Java は古い!」と言えるものでもないんだなぁと思いました
- 調査・依存関係整理・段階的アップグレードが重要
筆者自身も、「いつかやらねば…」と思いながら Java 8 を使い続けている側の人間です。
まだ移行を完遂した成功談を書ける立場ではありませんが、同じように レガシーな Java 環境と向き合っている人たちと一緒に、少しずつでも前に進むための材料 になれば嬉しいです。
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※ 本記事は社内向け資料をベースに、情報を加えて再構成しています。