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ARグラスは日常を変えるか?

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ARグラスの日常とは

STYLYアドベントカレンダー2023年 25日目の記事です。
去年、私はINMO AirというARグラスを買い、そして、今年その最新版であるINMO Air2というARグラスを買いました。私はこのINMO Air2がすごく好きで、他の記事にも書いていますが、

  • 軽い!(99g)
  • スマホ不要!
  • Androidのアプリが動く!

という特徴があります。
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実際に装着した感じがどんな感じなのかは、YouTubeに動画があります。

リアルの世界を見つつも、ARグラスの映像も見れる。という体験はかなりSFで、このサイズと重さでAndroidアプリが動くのは本当にすごいです。
今回、日常でARグラスを使っているうちに思ったこと。をつらつらと書いていきたいと思います。
ARグラスを常時つけた生活とはどういったものでしょうか?

自分の生活にNot For Me

超残念なことを言うのですが、

現在の自分の基本的なライフスタイルにはARグラスが不要である。

というのが率直な感想です。とてもラディカルな意見を書きますが、1つ1つ説明をしていきます。
 少し、回りくどいかもしれませんが、私の素性と、1日の流れを説明します。私は30代独身おじさんです。昼前に起きて、朝昼兼用のごはんを食べ、リモートで仕事を始めます。基本的に、仕事はリモートなので、パソコンの前に座っています。会議をしたり、資料を作ったり、コードレビューなどが主な仕事です。そして、夕ご飯を食べ、また少し仕事をします。仕事が終わった夜には、大体1時間ぐらい外を散歩して、風呂に入って、プライベートの用事を済ませて、寝ます。
そうです。

 24時間のうち、外に出ている時間が1時間程度しかないのです。そして、家にいるときには基本的にPCの前に座っています。そのため、ARグラスをかけるタイミングが無いのです。

 いや、そうじゃないだろう。ARグラスは常にかけていればいいだろう。となるかもしれないのですが、 現行の技術だと圧倒的に見やすいのはディスプレイ です。だったら、ARグラスをかけるより、同じ値段でディスプレイを増やす方が明らかに情報の取得は楽で業務効率があがります。そのため、自分は日常でARグラスをかけるメリットが非常に薄い。となります。めちゃめちゃ残念なことを言うのですが、自宅で仕事をしている分においてはARグラスをかけるメリットがとても少ないのです。
 では、INMO Airはどのようなタイミングで役に立ったか?というと、個人的には出先のホテルで役に立ちました。INMO Airは単体でYouTubeが動くので、こんな感じで動画の視聴が可能になります。

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 鞄からPC出すのが面倒だったり、スマホだと画面が小さいなぁ。と思ったときの動画視聴としては良いものです。これは、実はXREAL Airなどでも、飛行機などの移動の時の動画視聴のユースケースで良い。と聞いています。ただしINMO Airは視野角が26°程度しかないので、見える画面は小さいです。両手を伸ばした先にA5サイズのディスプレイがあるぐらいの感じです。なので、動画視聴にはちょっと物足りないかなぁ。というサイズ感ではあります。

ホロスターに学ぶ

 前節では、INMO Airは自分のライフスタイルに合わない。という話をしました。では、ARグラスは全然無価値なのでしょうか。では、みなさん。ホロスターというARグラス?はご存じでしょうか?実は超軽量なARグラスが売り出されています。

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これが何か。というと、 AppleWatchを使って動かすARグラス です。どういうことかというと、画像中央部に見えているのがAppleWatchで、ケースにAppleWatchをマウントする形で利用します。

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AppleWatchから出た光を2回ミラーで反射させることによって、眼に投影する。というARグラスです。

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これ、ARグラスなのか・・・?と疑問に思うかもしれません。でも、実は超合理的です。

私が感銘を受けたのはホロスターのおススメアプリを紹介している動画です。

私が、ホロスターのおススメアプリで注目したのは以下の4点です。

  1. 時計
  2. 通知
  3. 電話
  4. 地図

この内容は正直凄いな。と思いました。
これはARグラスを常時つけたものにしか分からないかもしれないですが、

常時、視界が遮られる形で情報が表示されるとうっとおしいんですよね。

 ARグラスを常時つけた生活とはどんなものか?と言っているのに、身も蓋もないことを言っています。しかし、ARグラスをかけて生活していると分かるのですが、常時視界が占有されているというのは意外にストレスです。先ほど、INMO Air2でYouTubeで動画再生している画像を貼り付けて、「見える画面は小さいです。両手を伸ばした先にA5サイズのディスプレイがあるぐらい」と言って、見える画面の小ささに不満を言っているように見えると思います。しかし、それを常時占有されると、モノが見えにくくなるので、ARグラスは基本的にアプリが表示されていない方が便利なのです。
 これはものすごくじれったい話なのですが、見たいときには大画面で視界全体で見たいのですが、見たくない時は端っこの方で小さくしていて欲しいのです。でも、便利さを考えると視界の端で常時ちょこっとだけ情報を提示して欲しいのです。この感覚は分かりにくいかもしれませんが、例えば、PCの右下に時刻と日時が出てたり、スマホの上部に、常に時刻が出てたりする、ちょっとした情報提示の便利さ。は欲しいのです。
 使っているとそういうワガママな要求が出てきます。そういう意味では、このホロスターのすごさ。は、(AppleWatchに依存するところが大きいのですが、)1つは常時点灯であることです。INMO Air2は常時点灯できません。画面をつけていると2時間程度で電池が切れてしまいます。そうすると、時間などを常に情報を提示する装置としてはINMO Airはいまいちな存在となってしまいます。
 もう1つは通知です。これは当たり前ですがAppleWatchはiPhoneなどとアプリを連携することで通知を表示する機能があります。この機能、INMO Air2にもあります。しかし、あまり作りが良くないためか、私の場合は、うまくスマホと連携出来ず、スマホの通知が見れません。また、INMO Air2側も常時通知アプリを起動しておく必要があり、INMO Air2でYouTubeを見ながら、アプリの通知を受ける。といったことも出来なさそうです。また、先ほどと同じ議論になりますが、常時ディスプレイを点灯し続けることが出来ないので、自分から電源をONにしないと通知が見れない。という状況なので、これって通知の意味があるのか?という話になります。そういう意味でもホロスターの方が便利である。という面があります。
 この2点すごく大事だと思っています。基本的にARグラスは視界を防がないで欲しいが、常に提示して欲しい情報がある。となると、常時点灯が必須になってきます。では、常時表示して欲しい情報は何か?というと、代表例として「時計」となるのです。しかし、一方で全体を覆ってでも強制的にユーザーに認知して欲しい情報。というものもあるのです。この代表例が「通知」になるのです。だから、基本は静かに「時刻」ぐらいを"常に"表示してくれていて、アプリからのアクションがあった「通知」は逃さず見れる。というのは、とても重要で、この辺をうまくバランスしているのがホロスターのため、とても良く出来ている。と思っています。昨今、ARグラスで注目されやすいのは、エンタメ寄りのもので3Dモデルを美麗に表示したりする。というユースケースが多いかもしれませんが、こと実用的なARグラスに欲しい機能は、実は結構ミニマルなものかもしれない。とも思います。
 あとは話としては結構趣味的になってしまいますが、単純に面白いのが「電話」です。これはINMO Airでも近いことはできて、色んな人にデモをしてみると好評です。INMO Airの場合、Zoomが動くので、相手のスマホとZoomでつないで、それをARグラスで話す。ということが出来ます。これは単純に面白い。という感じなので実用性は?ですが、ちゃんと未来感を感じることが出来ます。
 INMO Airからみて悔しいなぁ。と思うのは「地図」です。なぜか。というと、これは少し込み入った事情があります。INMO Airを作ったINMO社は中国の企業で、OSはAndroidですが、Googleの認定を受けていません。あまり普通は意識しませんが、日常で使っているスマホは基本的にGoogleからの認可を受けたものが多いです。この認可を受けることでスマホでGoogle PlayStoreが利用可能となります。そのため、Googleの認可を受けていないINMO Airでは基本的にGoogle PlayStoreが動かないため、アプリの選択肢がかなり狭まります。まぁ、アプリが少なくなるだけなら・・・と思われるかもしれないですが、結構致命的なものも多く、これはおそらくですが、GPSなどの位置情報サービスもGoogleからの認可が通らないと動きません。そうなのです。INMO Airでは「地図」が動かないのです。AppleWatchの場合は、正規の地図アプリが動くため、こういったナビゲーションが出来るのです。この辺がとても悔しい感じがあります。

ホロスターの良さをまとめると

  • 視界を占領しない
  • 常時点灯で、時刻が表示しつつ、通知が受けられる
  • アプリが豊富である

という形で"実用"を考えると、かなり良いものなんじゃないか。と思いました。そして、それは自分がINMO Air2に抱いている不満を解消するポイントがかなりあります。
そのため、視界を占有しない形で、常時点灯により視界の端から情報を受け取れて、アプリからの通知が表示され、アプリが豊富である。というのは、今後のARグラスには大事な要素だと思います。

ARグラスの入力インターフェース

ホロスターとINMO Airにおける両方の欠点は入力インターフェースの悪さ

だと思います。ホロスターの場合、AppleWatchを操作する必要があります。どのように操作するかというと、画像で親指で抑えられている部分に穴が開いており、下から指をツッコむ形で画面を触り操作をします。動画内でも、「操作は難しい」「慣れが必要」と書かれています。

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では、INMO Air2の場合どうなっているか。というとINMO Air2には左右のメガネのつるの部分がタッチパッドになっています。右のつるのタッチパッドが主に操作系で、基本は右左へのスワイプです。それ以外の操作はほぼしないようにメニューの設計がされています。また、上下方向も検知はできますが、ほとんど使いませんし、精度もあまりよくありません。この辺の割り切りも一部悪さをしており、既存のAndroidアプリがINMO Air2で使いにくい一因となっています。左のつるのタッチパッドは左右のスワイプは音量で、上下のスワイプはARグラスの光量を制御できます。

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初代INMO Airは右のつるにタッチパッドだけでしたが、INMO Air2は両方のつるにタッチパッドが付きました。それに加えて、INMO RingというBluetoothコントローラーが追加されました。

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このコントローラーはよくできています。上下左右のボタンと、真ん中の決定ボタン。手前の出っ張りが「戻る」ボタンになっており、計6ボタンあります。また、これ自身に加速度センサーが乗っており、「戻る」ボタンを長押しすることでコントローラーのモードが切り替えられ、3DoFのマウスとして利用できます。手前に傾けると、マウスが上方向に動き、奥方向に傾けるとマウスが下方向に動く。といった感じです。これが非常に良くて、今まで、既存のAndroidアプリは、つるのタッチパッドだけでは操作できないものが多数でしたが、これにより、かなりのアプリが利用可能な状況になりました。しかし、実用的か?と言われると微妙です。

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 INMO Ringは画像の様に指にひっかける形式で、外れやすいです。INMO Airの入手性自体が結構危ういので、INMO Ringを気軽につけてお出かけして、無くすと、ほぼ操作方法を失うことになるので致命的です。そのため、ある程度、装着したあと、外れない安心感が欲しいです。また、もう1つの問題として"サイズが大きい"です。画像では分かりにくいかと思いますが、コントローラーのボタン部分は縦2.5cm x 横2.5cm x 高さ 1.0cmの大きさがあります。大体、碁石ぐらいのデカさがあります。このサイズ感の指輪をつけて日常を過ごすのは結構煩わしいと思います。指輪のサイズが大きいため装着していると煩わしく、ひっかけタイプのため外れやすい。そして、コントローラーの入手性が悪い。というあたり、このコントローラーを外にもっていって常用を躊躇する要因になっています。
 では、今は技術的にはハンドトラッキングもあるので、選択肢としてハンドトラッキングはどうか。という議論になるかもしれませんが、個人的には、現行の技術だとARグラスのコントローラーとしてハンドトラッキングを使うのはノーです。理由は「消費電力が高すぎる」ということです。現行のハンドトラッキング技術だと画像認識を用いた機械学習を利用したモデルになります。INMO Air2が単純な動作でも2時間程度しか動かないので、それにハンドトラッキングの技術を使ってしまうと、稼働時間が短くなりすぎてしまい、実用に耐えなくなってしまいます。私としては、おそらくハンドトラッキングが低消費電力で出来る未来は結構先で、その間に別のインターフェースが流行するのではないか。と思います。その意味で言うと、INMO Air2は先進的で、両方のつるにタッチパッドを乗せたり、別でコントローラーを作ったりと結構先進的な試みをしていると思っています。
 INMO Airは基本的には0dofのARグラスです(ホロスターも)。一応、加速度センサーは乗っていますが、頭の方向や空間認識によって描画が変わったりするアプリはありません。一方で、Hololens2などは空間認識を売りにしているARグラスもありますが、ここ数年で出てくるARグラスが常用に耐える稼働時間と体験で空間認識をし続けることはできないのではないか。と思っています。ハンドトラッキングと同様に空間認識にも機械学習のモデルを常時動かす必要があるため、高消費電力になってしまい、電池が持たない。と思っています。そのため、電池の搭載量が多くなり、重量が重くなり長時間装着していることが辛いか、電池の容量を減らしてしまい、装着感は良いが極端に稼働時間が短い製品しか作れないと予想しています。この辺は、Apple Vision Proにみるビデオシースルー型HMDと光学式ARグラスの比較・考察というスライドを過去にまとめたのでご覧いただければと思います。そのため、ここ2,3年はどちらかというと0dofのスカウター型のARグラスの方が主流ではないか。と思っています。
 ここまで色々な議論もしてきましたが、機械学習の消費電力問題を含め、ARグラスの入力インターフェースをどうするのか。というのはまだまだ各社研究段階で、まだこれといった解が無いように思います。

HMDの別の潮流

 前節では、「ARグラスをかけるタイミングが無い」という元も子もないことを言っていました。そう考えると、どういったものの方が自分のライフスタイルにあっているのか?という話があります。
そういう意味で個人的に注目しているのHMDがBigscreen Beyondです。
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有線であるものの片眼 2560x2560の解像度で127gという超軽量のHMDが売り出されています。ここ数年のHMDの流行はスタンドアローンが当たり前でした。一方で、それは本体に電池を乗せる必要があり、HMD自体の重量が増加傾向にありました。例えば、今年2023年に出たQuest3は重量が515gですが、一方で、もうディスコンになってしまったWindowsMRの2017年の古い機種であるAcer AH101だと414gです。当たり前ですが、スタンドアローンに比べて、本体側に計算能力や電池の要らないPC向けのHMDは軽い傾向にあります。そういう意味では、技術が進化した今では、超軽量なPC向けのHMDが、ディスプレイを置き換える方向の進化というのも実はあるのではないか。と思っています。
 そういう意味で、面白い方向の進化と言えば、本気を出すとXREAL Airはこんな感じで仕事はできます。

これはMacの画面をぶった切って、キーボード部のみ(ヘッドレス)にしています。それをNebula for MacというXREAL専用アプリを使うことでディスプレイをARグラス側に投影しています。これは実はけっこう合理的です。普通に考えると、Mac側のディスプレイは残した方が良いのではないか?という気持ちになります。しかし、やってみた人なら分かると思いますが、XREAL(当時私が試したのはNreal Light)だと透過度が低いため、XREAL越しにMacの画面を見るのは視認性が低いです。しかし、XREALは動画再生できるぐらいにくっきり見えるので、その意味だと画面は結構見えるので、思い切って、Mac側の画面を無くしてしまい、画面を見るのはXREAL側だけにしてしまう方が、割り切りとしては良いと思います。
 ただ文字サイズについては注意する必要があると思います。2つほど記事を読んでみると、文字が小さい。という言葉が散見されます。

 これはINMO Airも同じ悩みがありますが、おそらく原因は視野角なんじゃないかな。と思っています。Quest3は2048x2048の解像度、XREAL Air2は1920x1080の解像度と、縦の解像度の差こそあれ、横の解像度はそれほど変わりません。しかし、Quest3は水平110度、垂直96度の視野角があるものの、XREAL Air2は46度と狭くなっています。そのため画面がぎゅっと圧縮され、見える面積が狭くなってしまう分、文字が見にくくなってしまっているのではないか。と思います。記事では、解像度を下げることにより文字サイズを大きくする。という解決方法が提示されていますが、これもジレンマで、そうすると1画面に映る情報量が下がってしまうという欠点があるため、これはこれで難しい選択になると思います。
 光学シースルーはまだまだ一般のHMDと比べて視野角が広いものが無いので、テキストを書いたり読んだりするような作業においては、まだ厳しい状況だと思っています。そういった意味では、今の自分のライフスタイルに合う現実解は、実はPC向け超軽量のHMDかもしれない。と思いました。

ARグラスの別の活路

 XRealやRokidなど色々なARグラスが現在発売されています。それらはゲームだったり、動画視聴だったりの用途があります。では、それ以外の用途のARグラスはあるのか?というと結構マイナーながらあります。個人的に注目しているARグラスの領域は、ヘルメットです。

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 これはMOTOEYE E6&E6 SEという製品ですが、個人的にはめちゃめちゃ面白いなぁ。と思いました。ARグラスとかだとアプリが動くか。というところに目が行きがちですが、ヘルメットの後ろにカメラをつけることで視界の一部をバックモニターにするコンセプトであったり、これだけで通話ができるトランシーバーとしても使えるあたりも面白いなぁ。と思いました。この分野にあまり詳しくはないのですが、AppleCarPlayに対応しているので、意外にアプリ等にも汎用性があるのではないかな。思ってます。RokidやXREALはどちらかというと「動画視聴」という娯楽の毛色の強いものでしたが、このMOTOEYEはバックモニターという「実用」に近い部分に出してきた。というのは、個人的には刺さるポイントでした。見た目からだと初代GoogleGlassっぽいものなので、画角は結構狭いかと思いますが、ピンポイントでもユースケースを見つけられている。というのは、すごいことで意外にこういうところが発火点になるんじゃないかな。と思ったりしました。

ARグラスを殺す技術

 最近、AGI・BMIがARグラスを殺すのではないか。 そんなことを思うようになりました。今年、ChatGPTが非常に話題になり、企業・官庁問わず、導入のニュースが流れていました。ChatGPTがAGIか。という話題は横に置いておいて、そういった汎用人工知能のようなものの技術革新は非常に目まぐるしかったと思います。そんな中で思ったことは、いつまで人間は目から情報を取り入れて、判断するんだ? ということでした。
 自分は人間の記憶速度は7bps未満?という記事を2022年に書いて、そうか。人間はそれぐらいの速度でしか学習できないんだなぁ。という人間の記憶の物理限界を感じていました。そして、もう1つ面白い記事があって、デイリーポータルZさんのなんで練習するとうまくなるのか~「上達の法則」という記事があります。ここの文を引用すると、

僕が思ってた「練習って何なのか」っていうのは、結局練習は記憶である、と書いてあります。覚える作業。
だからギターのアルペジオをやるのも、アルペジオの指の動かし方とか使い方を覚えていく作業である、と。その覚えていく作業が上達するってことなんですよね

 私もちゃんと原文をあたって、正誤を確認すべきでありますが、単純に読むと、上達は記憶であると捉えることが出来ます。したがって、上達の限界とは記憶の限界と捉えることもできます。そうすると7bpsという脳に情報が入る限界以上の上達って人間にはかなり難しいのではないか。といえるかもしれません。なぜARグラスをかけて生きねばならないのか。というと、私たちはARグラスという情報提示装置を見て、それにより学習をしたり、状況を把握することによって、何かを判断して、行動を起こす。ということをします。しかし、そういった学習や判断は、眼を通した7bpsが限界値になるわけです。そうすると、人間の物理の体の限界を超えた情報量を処理可能で、リアルタイムに判定できる存在が汎用人工知能であるとすれば、人間がARグラスかける意味は必要があるのでしょうか。
 先ほどのAGIの話は、人間の眼というセンサーから情報を得ることに物理限界があり、それが限界値となってARグラスをかけたとしても、人間はAGIに対抗できないのではないか。という議論でした。今は、おそらく視覚から情報を入れて判断するのが最速ですが、では、もっと高速に人間の脳に情報を入れる方法はあるのか?という話になります。そうすると、BMI=Brain machine Interfaceという話になってきます。サイトによると

BMIとは、脳波などを読み取りその命令でコンピューターを動かしたり、それとは逆に、コンピューターから神経に直接刺激を送ることで、感覚器を介さずに人に視覚や味覚等を与える技術や機器のこと。「Brain machine Interface(ブレイン・マシン・インタフェース)」の略称である。ブレイン・コンピューター・インタフェース(BCI)と呼ぶ場合もある。高齢者や障害者など、体が不自由な人のコミュニケーションデバイスとしての期待が高く、社会実装に向けた技術開発が進んでいる。

 自分の周りにセンサー類を用意し、電極を脳にぶっ刺して、センサーの情報をインプットする。という方向性になります。そうすると、今度はなぜ目という遅い情報伝達手段を使って判断する必要があるのか?という話になります。こうなるとやっぱりARグラスが要らない世界観になってきます。
 BMIの方は割とSFチックな話を書いていて割と眉唾な部分もありますが、AGIについては若干笑えないかなぁ。という感触はあります。ここには思うことがあって、人間の記憶能力の価値というものがどんどん減っていた30年があったな。と思っています。人間は今まで目から情報を得て、それを記憶して、行動していました。だから、本を読んだりして、それを覚えたうえで行動していました。しかし、この30年、ネットが発達したことによって、記憶する価値は相当減ったように思います。例えば、今からケーキを作ろう。と思って、ケーキのレシピを検索して、近くの空いているスーパーを探して材料に買いに行く。といったことがネットですぐに出来るようになりました。ネットのない世界だと、家にレシピの本が必要であったり、本を図書館に探しに行く必要があったり、自宅の近くの地図を持っている必要があったり、それぞれのスーパーの営業時間を把握している必要があったりしました。そういう意味で記憶の必要性があったり、情報へのアクセスコストが高い世界だったのが、ネットによって、それらのコストや記憶の必要性がかなり減りました。そして、コロナの情勢になり、人間の学習というものもデジタルシフトして、今まで学校に行って対面が一番良い。と思われていた学習も、ネット上で完結する部分が多くなり、高速に整備されていきました。その意味で、記憶や知識の取り扱いはこの30年でネットおよび検索エンジン等の発達で大きく変わったように思います。しかし、最終的な行為者は人間で、YouTubeやなんなりで人間が学習し、頭の中に入れた知識をもとに、状況判断を行い、問題を解決してきた。ということは30年間変わりませんでした。しかし、今回、ChatGPTなどの勃興によって、おそらく「頭の中に知識を入れる」「状況判断を行う」「知識を実問題に適用する」という行為のかなりの部分が無くなるのではないか。ネット検索による知識のディストラプとのようなことが再度起こる予感があります。そうすると人間がやるべきことは何なんだろうか。その世界観ではARグラスで私たちは何をするのだろうか?ということを思っています。

ARグラスで何が視えるのだろうか

 今、自分が思っているARグラスに関することをつらつらと書いていきました。今はまだスマホほど便利ではない。という気持ちは正直な話としてありますし、どうすればもっと楽しくなるのだろうか。何をするとよいのだろうか。とも思います。また、実はARグラスが自分の生活にあってなかったなぁ。うーん。と悩ましい部分もありました。あまり明文化されて議論されることは少ないのですが、入力インターフェースの精度が悪い問題は割とクリティカルかな。と思っています。少し前にXで、「日本でiPhoneは作れたか?」というものが話題になっており、「日本はソフトウェアやエコシステム作りがダメだから無理だろう。」という話をよく見かけました。一方で、別の話もあって、それは「タッチパネルの精度が足りてなかった。」という話も見ていました。私もそれは納得するポイントがあって、iPhoneより前のタッチパネルはかなり精度が悪く、かなり使い勝手が悪かったです。私も、IS03などかなり初期のAndroidを使っていましたが、今のタッチパネルの精度を考えるとかなり低い精度でしたし、当時はやっぱり使いにくかった。そう考えると、コンピュータと人間を繋ぐ入力機器、入力インターフェースの精度にこだわる。というのはかなり重要な要素ではないか。ARグラスもこの辺りがブレイクスルーになるのではないか。と感じることがあります。その意味で、AppleVisionProがハンドトラッキングなのかーそうなのかー。と思うこともあります。これはこれで、家の中。というユースケースなので、少し毛色の違うものなのかもしれませんが。
 一方でINMO Air2を使っている私からするとアプリが少ないのは辛い・・・とすごく思います。そういう意味ではホロスターは魅力的にも見えますし、なんならINMO Air2はGoogle認可とってくれてARCoreとか動かしたいな・・・とは正直思います。私自身、だいぶ初代INMO Airは解析したので、自分で加速度からの積分と地磁気センサーの値から疑似6dofなども組んでみましたが、まだまだなかなかうまいこといってません。その辺もぼちぼち気合で組んでみなくては。と思っています。
 私自身、もう30代で、ポケモンは初代・金銀の世代でした。ポケモン金銀では主人公がポケギアというガジェットを持っていて、「電話」「地図」「ラジオ」などの機能がついているとても高性能な小型の端末で、当時からすると夢のガジェットでした。でも、現実がSFを追い越してしまい、それらの機能ってほぼ「スマホ」ってもので完結しちゃうんですよね。当時は夢のデバイスでキラキラしていて、そんなガジェットあったらいいなぁ。という感じだったのですが、それが20年ぐらいで当たり前になりました。ARグラスというのは、今私達からするとキラキラしたデバイスではあるのですが、結構すぐに普段の当たり前になるのかもしれませんね。私たちはそういうキラキラの過渡期にいるので、そういうデバイスの進化も楽しみつつプログラミングしていければよいな。と思っています。

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