この記事は クラウドワークス グループ Advent Calendar 2025 シリーズ1の16日目の記事です。
こんにちは! crowdworks.jpでエンジニアをしている @kotarou1192 です!
クラウドワークスには 2023年の9月に転職という形で Join しました。
そして現在、私は社会人として、情報系の通信制大学(サイバー大学)に通っています。
中卒スタートで学歴コンプレックスが強かった自分が、なぜ通信制大学に入り、何を得たのか。
働いていて情報系の通信制大学に通おうか迷っている人向けに、自分語りも交えつつ、私の大学生活について書きます。
1. なぜ通信制大学に通おうと思ったのか
本当のきっかけは、無職から抜け出そうと、ソフトウェアエンジニアとして就職活動を行っていた頃に遡ります。
今から3年以上前、私が26歳だった時の話です。
当時の私の経歴は
- 最終学歴は高校中退(≒ 中卒)
- 高卒認定試験だけは合格済み
という状態でした。
今ならまずいと分かるのですが、社会を知らない当時の私は「技術があれば学歴なんて関係ない」などと思っていました。
しかし、就活してみて身にしみるほどよくわかりました。学歴(≒ 経歴)というのは、私が思っていたよりも遥かに大切だということが。
このような経歴だと、多くの場合、書類選考で門前払いされます。
書類選考を通過しても、だいたいはなぜ中卒なのかを聞かれます。
そこを超え、きちんと技術力があることを採用試験などで証明しても、最終面談の後に突然連絡が取れなくなった企業もありました。
採用する側からすれば、「この人は継続して働けそうか」「トラブルを起こさなさそうか」といった点がまず気になるのだと思います。
そして、経歴がそこそこ「普通」そうであれば、まともであると判断されやすいようです。
もちろんその点においては満場一致で私はまともではありませんでした。
色々あって、最終的には何とか採用していただけたので今がありますが、就職活動をしていた時期が人生で一番苦しかったです。
そうして2022年にソフトウェアエンジニアとしてのキャリアをスタートさせた私ですが、周りの方々を見ていると、せめて大学は出ておく必要があるなと感じる場面が多かったです。
例えば論理的な文章を書く能力であったり、学歴で浮いてしまうことであったり、キャリアのためであったり、色々です。
また、よりソフトウェアエンジニアとしてのスキルも磨きたいという思いもあり、せっかく大学に通うのであれば、情報を学べる大学にしようと考えました。
そのため、2023年春、完全オンラインで卒業できる『サイバー大学』に入学し、社会人大学生としての生活を始めました。
2. 社会人大学生としての生活
社会人大学生と聞いても、どのような生活を送っているのか、あまり想像がつかない方が多いかと思います。
例えば、
- 通信制大学ってそもそもどんな感じなのか
- 仕事と勉強をどう両立しているのか
といった点が気になるのかなと思います。
それぞれ一つずつ答えていきます。
1. 通信制大学ってそもそもどんな感じなのか
私が通っている通信制大学は、完全オンラインで完結するタイプの通信制大学です。スクーリング(オフラインで講義を受ける)はありません。
そのため、友達付き合いやサークルといったキャンパスライフはそこにはありません。
そういうことをやりたいと思えば、自分でサークルを立ち上げてみるだとか、積極的に他の学生を SNS などで見つけて交友関係を構築するだとか、色々方法はあると思います。
しかし、サイバー大学は7割近くの人が社会人だと言われており、当たり前ですが皆仕事をしていて、中には家庭を持っていらっしゃる方もいるので、そんな余裕はありません。
したがって、孤独な戦いになりがちです。ステレオタイプ的なキャンパスライフみたいなものとは無縁です。
講義は、20分程度の動画を数本視聴し、その後に小テストを解く形式になっています。
小テストは4択問題が中心で、その結果が成績にも反映されます。
難易度の高い科目では、別途レポートなどの提出物が求められることもあります。
サイバー大学における単位についてざっくりとまとめると、以下のような感じです。
- 卒業に必要: 124単位(ゼミナール含む)
- 教養科目: 1科目1単位
- 外国語・専門: 1科目2単位
- 4年で卒業したければ: 1学期あたり 15〜16単位が目安
なお、それぞれの科目(教養科目、応用科目)の難易度は、私の感覚ですが、正直ばらつきが激しいです。
正直、講義を受講しなくとも小テストで満点が取れる、みたいな科目もあれば、講義をしっかり聞いたうえで復習しても満点が取れない、といった科目もあります。
必修科目に関しては、ほとんどが前者寄り、もしくは前者と後者の中間あたりの難易度だと思います。
主に後者に該当するのは、自由選択の専門科目です。
後者の例を挙げるのであれば『ネットワーク技術応用』という科目です。
これは、かの有名なマスタリングTCP/IP応用編を教科書とした科目で、更に通信トラフィックのうまいさばき方を考えるために、大学数学(特に統計学)の基礎知識が必要になります。
興味がある方は、リンク先の体験授業を覗いてみてください。
サイバー大学は実質ボーダーフリーで入学できる大学なので、高校数学の内容すら怪しい私のような人間もいます。
そのような人のために高校数学の復習 + 大学数学の基礎を学べる科目や、データサイエンス系の講義や、先程挙げた『ネットワーク技術応用』といった科目で詰まないための、確率や統計学を学べる科目も用意されています。
『ネットワーク技術応用』だけでなく、他にも最低限それらを受けなければ内容すら理解できない講義がちらほらあります。
正直はじめのころは通信制大学を舐めていましたが、このような科目を受講することで認識を改めさせられました。
2. 仕事と勉強をどう両立しているのか
少なくとも、仕組みとして「楽に卒業できる魔法のルート」みたいなものはありません。
上でも述べましたが、孤独な戦いです。継続は力なりといいますが、まさにそれです。
人によってやり方は色々あると思いますが、私の場合は、平日は仕事が終わった後に元気があれば1日1科目受講し、残ってしまった分を土日祝日で倒す感じです。
毎学期16単位取る場合、ざっくり計算で毎週8科目に出席する必要があります。
1科目の1回の出席で、20分の動画が大体4本 + 小テスト10分の計90分とざっくり計算をすると、8科目で720分、12時間相当です。
実際はこんなに簡単に行くことはめったになく、科目の難易度によっては復習だったり、レポートやら課題やらが入ってくるので、体感2割増くらいです。
たまに平日疲れすぎて受講できず、全部土日に片付けねばならないこともあるのですが、その場合は土日がすべて潰れます。
そういう週を私は週休0日と呼んでいるのですが、ほんとにそういう感じです。疲労が抜けません。
よくそんなので続けられるなと思われた方もいるでしょうが、講義動画の内容が結構面白かったりするのです。
例えば RSA 暗号の鍵ペアを自分で手計算して作ってみよう、なんてものもあったりします。
もちろん人間なので、科目の好き嫌いはありますが、そこは面白い講義でモチベを保ちつつ、後は気合でなんとかしています。
また、単位を落とすと、払ってしまった学費〇万円損してしまう等と考えることで、だいぶ消極的な理由ですが、やる気が湧いてきます。
3. 得られたこと:スキル面
大学に入って得られたことは数え切れないくらいあります。
特に最近よく思うのは、コンピュータサイエンスの基礎というのはかなり大事なのだなということです。
どのような言語を扱っていても、深掘ろうとするとどうしてもコンピュータサイエンスの知識が必要になりがちです。
例えばコンピュータはどのように計算を行っていて、そのために言語側で高速化のためにどのような工夫をしているのか、といったことや、どのようにしてメモリの管理をしているのか、その効率はどうなのか、といった話であったりです。
カンファレンスなどでもそのような話題が上がることがあると思いますが、コンピュータサイエンスの基礎をわかっているとだいぶ違って聞こえます。
また、アカデミックな話だけではなく、実務でも意外と役に立ちます。
例えば何らかのライブラリに脆弱性があると言った場合に、セキュリティ方面の専門科目を受講していれば、これ進○ゼミでみたやつだ! となれる時があります。
また、ライブラリの更新時の調査などでよくわからないプロトコルが出てきても、そのプロトコルを RFC などで検索して全くわからない、ということはなくなります。
少なくともそれを読むのに必要な基礎知識は得られているためです。
そういった経験を通して、自分の弱みも見えてくるようになりました。
私の場合は、セキュリティ周りの知識が不足しがちであるとか、Linux などの OS のシステムコールをあまり理解していない(ので非同期 IO などが理解できていなかった)などという感じです。
4. 得られたこと:メンタル面 / 生活面
得られたことは技術面だけではありません。
まず、学割はデカいです。Apple の学生ストアを堂々と利用できます。
また、Apple Music などの各種サービスでも学割が使える場合が多くあり、お金を節約できます。
他には、少しだけですが、自信がつきました。
ソフトウェアエンジニアとして中卒で働いているのは変わらないのですが、大学に入学する前と後では、私はしっかりとコンピュータの基礎を学んでいるのだから、何もそこまで臆することはないだろう、という風に考えられるようになり、仕事でなにか意見を言う際も、堂々と発言できるようになりました。
また、何かと悩みがちな性格なのですが、とりあえず常にやることがある状況に身を置くことになり、悩む暇もなくなるので、そういう面では逆にメンタルが安定したりもしました。
5. 今働いていて、通信制大学を検討している人へ
もしあなたが私のように学歴に不安があるのであれば、通ってみるのは良いことだと思います。
上に挙げたように、得られることもかなりあるはずです。
自信もつくと思います。
もしあなたがすでに情報系以外の大学を卒業していて、情報に関する知識への不足を感じているのであれば、情報系の通信制大学は良い学習の機会になるはずです。
すでに大学を出ていれば、申請することで、多くの通信制大学においては単位を半分ほど免除してもらえます。
よりエンジニアとしての技術を伸ばしたいのであれば、選択肢の一つとして考慮しても良いはずです。
懸念点も挙げておきます。
まず、金銭面ですが、私が通っているサイバー大学の場合、学費が非常に高いです。
卒業までに124単位が必要だという話をしましたが、1単位あたり約2万円です。
その他諸経費を合わせると、卒業までには300万円程度かかります。
(参考までに:サイバー大学の学費ページ)
仮に単位免除を利用した場合でも、60単位ほどは取らなければならないはずなので、140万円程度はかかるでしょう。
次に、趣味に割く時間が消えてなくなることです。
もちろんうまく時間を活用して受講すれば、理論上は、今の仕事や趣味や家のことを続けながら大学も卒業できます。
しかし、現実はそう甘くありません。誰にだって体調の波や仕事が突然忙しくなったり、ライフイベントなどが急に訪れることもあります。
正直、社会人で大学に初めて入るという方は、最短の4年で卒業することはおすすめしません。
4年という時間は、社会人にとってはあまりに短すぎます。仕事の合間に毎週12時間以上を確保するのは至難の業だと思います。
一人暮らしでフルリモートの仕事であったり、時間に融通のきく仕事であればよいですが、家族がいて家のことをしなければならないという場合は、4年で卒業などというのは無謀です。
なので、自分がどれくらい時間をかけられるのかということも、入る前に考えるのが良いと思います。
金銭面に関しては、様々な補助があるので、うまく探して活用してください。
学費を出すのが難しいなと思う方もおられるかもしれませんが、各種奨学金などを活用すれば、十分に実現可能だと思います。
また、情報系の通信制大学はサイバー大学以外にもあります。
自分の目的と予算と時間にあった大学を探してみるのも良いことだと思います。
6. まとめ
時間を取ることができて、ソフトウェアエンジニアリングのことが好きな人であれば、通信制大学に通うのは良い選択肢だと思います。
逆に時間を取ることができない何らかの理由があったり、ソフトウェアエンジニアリングがそこまで好きではないのであれば、今通う必要性はあまりないかもしれません。
私は今のところ、社会人大学生としての生活に満足しています。
残す単位もあと40単位ほどとなり、あと1年と少しで卒業できる見込みです。
まだ卒業こそしていませんが、得られたものも多いです。
ただ、何度も言いますが、社会人大学生というのは本当にきついです。
特に通信制大学は孤独です。継続するだけでも難しいことです。
個人的には、続くかどうかはソフトウェアエンジニアリングが好きかどうかだと思っています。
学ぶ内容に興味があれば、自然と学ぶことが苦ではなくなってきます。
最後に、迷っている人に向けて。
迷っているうちに時間だけが過ぎていく、というのは学び直しあるあるだと思います。
数年後に「あの時始めていれば」と考え続けるくらいなら、少なくとも情報収集をして出願条件や学費を調べてみるところから始めてしまったほうが早いです。
やるにしても、やらないにしても、「考えた結果」として決めたほうが後悔は少ないはずです。
そのうえで私は「やる側」を選んだので、この記事がその判断材料のひとつになれば嬉しいです。