自己紹介
株式会社Good Labでエンジニアをしている コータロー です。
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はじめに
「動画編集ソフトを開いて、タイムラインにクリップを並べて、キーフレームを打って…」
After Effects は1993年、Premiere Pro は1991年リリース。30年以上、動画編集の基本構造は「タイムライン+レイヤー+キーフレーム」のまま変わっていません。GUI 前提のこの構造は、人間の編集者には最適化されていますが、AI エージェントには扱いづらい という弱点があります。
LLM の母語は何かと言えば、Web(HTML / CSS / JS) です。インターネット上の数十億ページを学習している LLM は、HTML をネイティブに書ける一方で、専用 DSL や独自フォーマットは苦手です。
だったら、動画も HTML で書けばいいのでは?
この発想を本気で形にしたのが、HeyGen が 2026年4月17日 にリリースしたオープンソース動画フレームワーク HyperFrames です。本記事ではその全体像と、実際に動かすところまでを解説します。
筆者は実際にこのフレームワークでポッドキャスト「TECH LOOSE」の12分動画を自動化しました。その経験も交えながら紹介します。
45秒の動画でざっくり世界観を掴みたい方はこちら(この動画自体も HyperFrames で書きました)。
1. HyperFrames とは
一言でいうと
HyperFrames は、HTML + CSS + JavaScript で動画を記述し、ヘッドレスChrome で1フレームずつレンダリングして MP4 を生成する OSS フレームワーク です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発元 | HeyGen(AI 動画生成サービスの大手) |
| 初回リリース | 2026年4月17日 |
| ライセンス | Apache License 2.0(商用利用無制限) |
| GitHub | https://github.com/heygen-com/hyperframes |
| 公式サイト | https://www.hyperframes.dev/ |
| 現バージョン | 0.4.x 系 |
| 動作要件 | Node.js 22+ / FFmpeg |
何が新しいのか
HyperFrames が一線を画すのは、「AI エージェント前提」で設計されている 点です。リポジトリには CLAUDE.md が同梱されており、Claude Code 用の Skills(スラッシュコマンド)まで公式提供されています。
つまり、「Claude Code に動画を作らせる」ことを最初から想定した動画フレームワーク が登場したということです。
2. なぜ HTML が「動画」になるのか
「HTML で動画?」と疑問に思うかもしれません。仕組みは驚くほどシンプルです。
data-属性をちょい足しするだけ
通常の HTML 要素に、HyperFrames 独自の data-start / data-duration / data-track-index などの属性を追加するだけで、そこがタイムライン上のクリップとして扱われます。
<div class="clip" data-start="0" data-duration="3">
最初の3秒間表示される要素
</div>
<div class="clip" data-start="3" data-duration="2">
3秒〜5秒に表示される要素
</div>
Web の全資産がそのまま使える
HTML+CSS+JS の世界に閉じているので、Web のエコシステムを丸ごと持ち込めます。
| ライブラリ | 用途 |
|---|---|
| GSAP | プロ品質のタイムラインアニメーション |
| Lottie | After Effects から書き出した JSON を再生 |
| Three.js | 3D グラフィックス |
| D3.js | データ可視化 |
| Tailwind CSS | スタイリング |
LLM 親和性
LLM は HTML / CSS / JS を ネイティブに大量学習済み です。そのため、Claude Code に「Instagram のフォロー誘導風アニメーションを2秒挿入して」と指示すると、まさに HTML を書く感覚でコード差分を出してきます。
3. 仕組み:決定論的レンダリング
HyperFrames の重要な特性が 決定論的(deterministic)レンダリング です。
レンダリングフロー
HTML(コンポジション定義)
↓
ヘッドレス Chrome で1フレームずつキャプチャ
↓
PNG シーケンス
↓
FFmpeg で MP4 に圧縮
↓
完成した動画ファイル
時刻ベースではなく「フレーム番号ベース」
HyperFrames はアニメーションを「現在時刻」ではなく 「フレーム番号」で制御 します。30fps で 5秒の動画なら、フレーム0〜149まで順番にレンダリングされます。
これにより、同じ入力からは常にビット単位で同じ出力が得られる ことが保証されます。
CI/CD に組み込める
決定論的なので、
- GitHub Actions で動画を自動ビルド
- Pull Request ごとに動画の差分を生成
- スナップショットテスト(前回と1ピクセルでも違ったら失敗)
といった「コードと同じ扱いの動画」が可能になります。
4. Remotion との違い
「動画を React で書ける Remotion ならもうあるじゃん」と思った方も多いはずです。両者の違いをまとめます。
| 項目 | Remotion | HyperFrames |
|---|---|---|
| 記法 | React / TypeScript(TSX) | プレーン HTML + CSS + JS |
| LLM 親和性 | TSX の構造を理解させる必要あり | HTML は全 LLM がネイティブ |
| 商用ライセンス | 個人 $15/月〜、企業は年商連動 | Apache 2.0(完全無料) |
| 学習コスト | React / TS 知識が前提 | HTML が書ければ OK |
| エコシステム | 4年以上で成熟、企業導入多数 | リリース直後 |
| エージェント前提設計 | 後付け | 公式 CLAUDE.md / Skills 同梱 |
| 決定論的レンダリング | 対応 | 対応 |
どっちが優れているか? という話ではありません。React の世界で動画を扱いたいなら Remotion、AI エージェントに動画生成を委ねたいなら HyperFrames、という棲み分けです。
5. 環境構築は3つだけ
必要なものは以下の3つだけです。
| ツール | 用途 |
|---|---|
| Node.js 22+ | HyperFrames 本体の実行環境 |
| FFmpeg | フレームを MP4 に変換 |
| Claude Code(推奨) | AI 駆動で動画コードを書く |
macOS なら Homebrew で一発です。
brew install node ffmpeg
6. Hello World:5秒の最小コンポジション
実際に動かしてみましょう。
プロジェクトを作成
npx hyperframes init my-video --non-interactive --example blank
cd my-video
blank テンプレートは最小構成です。index.html がコンポジション定義ファイルになります。
index.html を編集
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<meta charset="UTF-8">
<script src="https://cdn.jsdelivr.net/npm/gsap@3.12.5/dist/gsap.min.js"></script>
<style>
body { margin: 0; background: #111; }
</style>
</head>
<body>
<div id="root"
data-composition-id="my-video"
data-start="0" data-duration="5"
data-width="1920" data-height="1080">
<h1 id="title" class="clip"
data-start="0" data-duration="5" data-track-index="0"
style="font-size: 200px; color: white; text-align: center; margin-top: 400px;">
Hello, Hyperframes!
</h1>
<script>
window.__timelines = window.__timelines || {};
const tl = gsap.timeline({ paused: true });
tl.from("#title", { opacity: 0, y: -50, duration: 1 }, 0);
window.__timelines["my-video"] = tl;
</script>
</div>
</body>
</html>
ポイントは3つ。
- ルート要素に
data-composition-id/data-duration/data-width/data-heightを指定 - アニメーションさせたい要素は
class="clip"+data-start/data-duration - GSAP のタイムラインを
window.__timelines["コンポジションID"]に登録
レンダリング
npx hyperframes render --output hello.mp4
これで 5秒の MP4 ファイルが出力されます。1080p なら数十秒で完了するはずです。
7. 9種のスタータープロジェクト + 42種のブロック
「白紙から書くのはハードルが高い」という人向けに、HyperFrames は実用的なスターターを多数提供しています。
スタータープロジェクト(抜粋)
| 名前 | 用途・スタイル |
|---|---|
| warm-grain | コーポレート向け(落ち着いたトーン) |
| play-mode | SNS 派手系(ポップな色とモーション) |
| swiss-grid | スイスデザイン風の整然レイアウト |
| kinetic-type | プロモーション・タイポグラフィ |
| decision-tree | 解説動画(フローチャート系) |
| product-promo | 商品紹介 |
| nyt-graph | データ可視化(NYT 風) |
| vignelli | 縦型 9:16(Shorts / Reels 向け) |
| blank | 白紙テンプレート |
ブロック(部品)
42種類以上のブロックが提供されており、1コマンドで導入できます。
npx hyperframes add instagram-follow
npx hyperframes add youtube-lower-third
npx hyperframes add spotify-now-playing
代表例:
- Instagram Follow / TikTok Follow / YouTube Lower Third
- Spotify Now Playing
- シェーダートランジション 14種
- CSS トランジション 13カテゴリ
これらを組み合わせれば、SNS 動画程度なら1時間でテンプレが完成します。
8. Claude Code Skills 連携が爆速
HyperFrames の真価が出るのが Claude Code 連携です。
npx skills add heygen-com/hyperframes --all --global
これだけで Claude Code に 13個の専用スキル が登録されます。
| スキル | 役割 |
|---|---|
hyperframes |
フレームワーク本体の知識 |
hyperframes-cli |
CLI コマンドの使い方 |
hyperframes-media |
画像・動画素材の扱い |
hyperframes-registry |
ブロックの追加 |
gsap |
GSAP アニメーション |
lottie |
Lottie 再生 |
three |
Three.js 3D |
tailwind |
Tailwind CSS |
css-animations |
CSS アニメーション |
animejs |
anime.js |
waapi |
Web Animations API |
remotion-to-hyperframes |
Remotion から移行 |
website-to-hyperframes |
既存サイトを動画化 |
Claude Code 内で /hyperframes /hyperframes-cli /gsap といったスラッシュコマンドが使えるようになり、「2秒のフェードインを冒頭に追加して」 のような自然言語指示で正確な差分を出してくれます。
9. どんな用途に向くか / 向かないか
何でもできるわけではありません。素直に向き不向きがあります。
向くもの
- トーク系:解説動画、ニュース、ポッドキャストの動画化
- 画面録画 + ナレーション:チュートリアル、開発ログ
- スライド型:プレゼン動画、製品説明
- データ可視化動画:グラフがアニメーションする系
- SNS Shorts / Reels:定型フォーマットの量産
向かないもの
- Vlog:人物の感情表現や映像の機微が中心のコンテンツ
- 複雑なモーショングラフィックス:After Effects のパーティクル・3Dカメラの世界
- 実写編集中心:カット編集や色補正が主な作業
「Web で表現できることなら何でも動画にできる、その先は専用ツールに任せる」という割り切りが大切です。
10. 実体験:ポッドキャスト動画化を自動化してみた
筆者は週次配信しているポッドキャスト「TECH LOOSE」の動画版を、HyperFrames で自動化しました。具体的な数値はこんな感じです。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 動画の長さ | 12分 |
| レンダリング時間 | 約 8〜10分(実時間とほぼ同じ) |
| 出力ファイルサイズ | 35MB(旧 iMovie 版は 245MB) |
| 環境構築〜初回出力まで | 約 2〜3時間 |
| Hello World 自体 | 約 10分 |
ファイルサイズが 約1/7 になったのが個人的に衝撃でした。エンコード設定を細かく制御できるので、配信に最適化したファイルが作れます。
毎週のオペレーションが「原稿を書く → コマンドを叩く」だけになったので、運用負荷が劇的に下がりました。
11. まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| HyperFrames とは | HTML+CSS+JS で動画を書く OSS フレームワーク |
| 開発元 | HeyGen(2026年4月17日 リリース) |
| ライセンス | Apache 2.0(商用利用無制限) |
| 強み | LLM ネイティブ・決定論的レンダリング・Claude Code 公式連携 |
| Remotion との差 | プレーン HTML / Apache 2.0 / エージェント前提設計 |
| 向く用途 | トーク系・解説・スライド・データ可視化・SNS Shorts |
| 向かない用途 | Vlog・複雑なモーショングラフィックス |
リリース直後ということもあり、日本語の情報がまだ非常に少ない のが現状です(本記事執筆時点)。逆にいえば、今触っておけば日本のエコシステムで先行者になれる タイミングでもあります。
「動画もコードと同じように Git 管理し、CI で自動ビルドし、AI エージェントに任せる」――そんな世界を覗いてみたい人は、ぜひ npx hyperframes init から始めてみてください。
参考
- HyperFrames 公式サイト: https://www.hyperframes.dev/
- GitHub リポジトリ: https://github.com/heygen-com/hyperframes
- Apache License 2.0: https://www.apache.org/licenses/LICENSE-2.0
- Remotion 公式サイト(比較対象): https://www.remotion.dev/
- GSAP(HyperFrames で利用するアニメーションライブラリ): https://gsap.com/
最終更新日: 2026-05-06
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