横浜で外壁塗装屋をやっている非エンジニアです。コードはほぼ書けません。成長記録 #3、三部作の締めです。
#1は「作ったものを統計で殺した話」、#2は「作ったものがアホだった話」でした。今回は趣向が違います。AI(と僕)が、たった一日で4回も同じ転び方をして、そのたびに同じ方法で立ち直った話です。
最初は華やかな題材で遊んでいました——AIを**"夢の中"で訓練する**、というやつです。でも一日の本当の収穫は、ぜんぜん地味なところにありました。
TL;DR
- 日曜の朝、AIに**"夢の中で特訓"**させた(世界モデル / DreamerV3)。塗装屋が、ゲーム用のPCで。
- でも本当の学びは、AIが**「手近な要約・メモ・検索結果」を鵜呑みにして4回ズレ**、そのたびに**「現物(一次データ)を自分で取り直す」**ことで立ち直った、という規律の話。
- #1「疑う」→ #2「測る」→ #3「一次を見る」。三部作、ぜんぶ同じ一本の糸でした。
"夢の中で訓練"って何だ(華やかな入口)
「世界モデル」というのは、ざっくり言うとAIが頭の中にゲーム世界のミニチュアを持っていて、「次に何が起きるか」を予測できるやつです。その予測(=夢)の中で、AIは実際のゲームを動かさずに何万回も試行錯誤して上達します。これを "training in the dream"(夢の中で訓練)と呼ぶ研究があります(World Models / DreamerV3)。
面白かったのは、塗装屋の僕が素人考えで「AIに夢を見させて、その中で特訓させられないか」と思いついたら、それが偶然この最先端の発想と一致していたことでした。
- まず「棒を立て続けるゲーム」で自作のミニ版を回す → 夢の中だけの訓練で満点。
- 次に本物(マイクラ風の2Dサバイバル)で回す → AIの見る夢が砂嵐 → ぼんやりした世界 → くっきりと冴えていき、ゾンビと戦うところまで自分で上達しました。
ここまでは「AIすごい、楽しい」の話です。問題はこの裏で、静かに起きていました。
でも本当の話:AIは賢いほど"二次資料"に飛びつく
この一日、AI(と僕)は4回、同じ穴に落ちました。並べます。
- 目的を見失った:AIに「これ何のためにやってるんだっけ?」と聞いたら、過去メモの要約で「それは別物だよ」と答えた。でも本当の目的(最初の構想メモ)を読み直したら、ちゃんと繋がっていた。要約で答えて、目的の"源"を見ていなかった。
- 口調を取り違えた:AIが、設定ファイルに昔書かれていた"ぶっきらぼうな口調"を、僕本人の態度と勘違いして、僕にそのままぶっきらぼうに返してきた。実際の僕はそんな口調で接していません。"紙に書かれた口調"を、生身の僕と取り違えた。
- 数字を誤読した:検索の範囲が広すぎて、別の場所の数字を拾い「あと16分で終わる」と言った。設定の該当箇所だけ正確に見たら、上限は5倍違った(全然終わらない)。
- 「死んだ」を信じかけた:AIのスクリプトが「処理が死にました」と報告。でも実際にプロセス一覧を見たら、ピンピン生きていた。報告のほうがウソでした。
気づきますか。全部「要約・紙・検索範囲・自己申告」という"二次情報"で判断しかけ、「現物(一次データ)」を見て覆したんです。
なぜ起きる=先読みの裏返し
AIは察しがよくて、先読みが得意です。だから手近な"答えっぽい二次資料"に飛びつく。でも要約は現物の影で、肝心なところ(目的・口調・正確な数字・生死)が削れている。そこを二次情報で埋めると、表面はそれっぽいのに、根っこがズレる。
直し方は、毎回同じでした。「それ、現物を自分で見た? 要約で済ませてない?」——これだけです。
三部作の糸=検証規律
振り返ると、3本ぜんぶ同じことを言っていました。
- #1:綺麗なバックテスト(願望)を、統計で殴った=疑う
- #2:学習中の良い数字を信じず、初見データで試した=測る
- #3:要約や設定ファイルでなく、現物を取り直した=一次を見る
ぜんぶ「手元の"良さそうな情報"を、そのまま信じない」という、たった一つの規律の言い換えでした。AIに実装や調査を任せる時代でも——いや、任せる時代だからこそ——人間(と、AI自身)に必要なのは、この地味な一手間な気がしています。
まだ分かってないこと
世界モデルや DreamerV3 の数式は、AIに教わりながら追っている段階で、ゼロから説明はできません。この記事も専門解説ではなく、塗装屋がAIと一日遊んで転んだ実践記録として読んでください。
持ち帰り(同じ非エンジニアの人へ)
- AIに「なぜ?」を聞く時、要約で満足しない。源(一次)を一緒に見る。
- AIは賢いほど二次資料に飛びつく。「現物見た?」をセットにする。
- 華やかな題材(世界モデル)より、**地味な規律(一次を見る)**のほうが、その日ずっと効いていた。
夢の中でゾンビと戦うAIを横目に、僕は一日に4回「現物を見ろ」と自分(とAI)に言い聞かせていました。AIと深く掘る日の一番の道具は、賢い手法じゃなく、この一手間でした。