道筋をたて推進する力とは何か
ここ数日、QiitaやWantedlyの記事の中で決まった作業を行うニーズは減って、不定形のルーチンワークではない仕事、道筋をたてて推進する力、一般的にいうプロジェクトマネジメントが求められる旨の内容を記載しています。
そもそも自分自身はそのような仕事ができているのか。
具体的にはそれはどういうことなのか。
どうすれば知見を共有できるのか。
どこかにヒントがないか。
このような事を考える時間が増えました。
過去を振り返る
自分のこれまでの仕事を振り返ると、何もアウトラインが引かれていない、誰も答えをもっていない仕事に対して、プロジェクトマネージャーという肩書の有無に限らず立たされる経験が幾度となくありました。
それらの仕事がうまくいったケースもあれば、うまくいかなったケースもあります。
そもそも、プロジェクトがうまくいったかどうかの定義も曖昧で判断が難しいです。
様々な要因でゴールが変わったり、進むべき道ややり方は変化するからです。
プロジェクト初期は目的地さえはっきりしません。
私は強いて定義するならば、「顧客の信頼を獲得できたかどうか」がわかりやすい基準だと考えています。
その定義を適用して改めて考えてみても、はやりうまくいったケースもあり、うまくいかなかったケースもあります。
自己無能感に苛まれる
20代の頃は特に今より物事がうまくいかない状態が多かったです。
何をどうするべきかもわからず、正しい方向に進むイメージが全くわかない。
自分が適任者とは思えない。
外部からの「あなたに何ができるんだ」と内部からの「あなたがやるんだ」の間に挟まれ押しつぶされそうになる。
正しく助けを求めるほど情報の整流もできず、解決の道筋をたてれない。
もし自分に問題点を挙げて、出来ないことを説明する力があれば、目の前の仕事をうまく進行もできるという矛盾から抜け出せない。
なにが駄目なのかすら言語化できない。
知識も経験も胆力も、すべてが足りていない。
このような自己無能感はまるで深い暗闇に閉じ込められた感覚に陥ります。
「HARD THINGS」の苦闘の記述では、経営者の苦悩として視点が違うもののこれまでの経験と重なり涙が止まらなくなります。
苦闘とは、そもそもなぜ会社を始めたのだろうと思うこと。苦闘とは、あなたはなぜ辞めないのかと聞かれ、その答えを自分もわからないこと。苦闘とは、社員があなたはウソをついていると思い、あなたも彼らがたぶん正しいと思うこと。
苦闘とは、料理の味がわからなくなること。苦闘とは、自分自身がCEOであるべきだと思えないこと。苦闘とは、自分の能力を超えた状況だとわかっていながら、代わりが誰もいないこと。苦闘とは、全員があなたをろくでなしだと思っているのに、誰もあなたをクビにしないこと。苦闘とは、自信喪失が自己嫌悪に変わること。苦闘とは、苦しい話ばかり聞こえて、会話していても相手の声が聞こえないこと。苦闘とは、痛みが消えてほしいと思うとき。苦闘とは、不幸である。苦闘とは、気晴らしのために休暇を取って、前より落ち込んでしまうこと。苦闘とは、多くの人たちに囲まれていながら孤独なこと。苦闘は無慈悲である。
苦闘とは、破られた約束と壊れた夢がいっぱいの地。苦闘とは冷汗である。苦闘とは、はらわたが煮えくり返りすぎて血を吐きそうになること。苦闘は失敗ではないが、失敗を起こさせる。特にあなたが弱っているときにはそうだ。弱っているときは必ず。Benjamin Abraham Horowitz『HARD THINGS』
誰も完璧にプロジェクトを推進できない
歳を重ねてわかってきたことは、「完璧に」プロジェクトを推進することは誰もできないということです。
いつか、どこかで、教科書的にうまくいっているプロジェクトにメンバーとして参画して学びを得たいと若い頃から思っていましたが、未知の要素が多く含まれるプロジェクト型の業務は課題が山積みで皆が疲弊していることが常です。そうでない仕事があるとするとルーチンワーク化された作業だけでした。
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』(前田考歩、後藤洋平)では、いかにプロジェクトが困難で失敗の連続か書かれていますし、『アジャイルサムライ − 達人開発者への道』(Jonathan Rasmusson)では筆者自身が時には失敗し、プロジェクトをクビになる経験についても記載されています。
打率が違えども、だれも「完璧」にはできないのです。
比較的うまくいったケースは何が違ったか
私は多くのプロジェクトで失敗や反省、力不足を感じましたが一方で、困難と感じる状況でも結果的に顧客の信頼を得たこともあります。
何が状況を好転させたのか、どう振る舞うと評価されるのか。
今は若手の頃と比べて、少しだけ安定感が出てきたのは何がポイントだったかを振り返ってみたいと思います。
腹をくくる
腹をくくる。覚悟を持ち、矢面に立つ。
これは文字通りです。
これまでの経験上、うまくいっていないプロジェクトで矢面に立つと多くの批判や批難、ときには罵声のようなものを浴びることになります。
沢山の矢が体に刺さることになりますが、怖じけず逃げず、問題と向き合う。
覚悟を見せると、顧客は自分の強力な味方になってくれます。
一番に当事者意識をもつ
顧客よりも顧客のことを考える。
だれよりもプロジェクトのことを考える。
朝から晩まで、なんなら夢の中ですら考えている。
その状態で、どのように道をひくべきか、何を目指すべきか。自分が一番の公約数に近い解を求められる状態になります。
対象プロジェクトの外の人や、そのことを深く考えていない人に答えを求めても精度の高い適切な解は期待できません。
状況を知らない周りの意見を採用して、懸念してたとおりに問題が起きることは多々あります。
一番に当事者意識をもっている自分自身がやるべきことを知っています。
誠実であること
出来ないことは出来ない。
不安であることは、不安であると伝える。
しかし、後ろ向きな発言ではなく、どのようにしたら出来るか前向きに意見交換する。
誠実さは必ずにじみ出るものです。話が上手な人でもごまかしは相手に伝わります。
一方、口下手でも誠実さは一挙手一投足から伝わります。
これは信頼に繋がり、信頼は潤滑油になります。
深く考える
銀の弾丸なんてものはありません。迷いや苦悩と向き合い考えるしかないです。
プロジェクト管理のツールや問題解決のフレームワークはあくまで道具でしかありません。自分の思考や関係者の思考を整理できたり、合意形成につなげたり、作業として分解できれば、それは単にホワイトボードへの記載でも手書きのラフでも良いわけです。
どうすれば自分の考えがまとまりのあるものになるか、どうすれば相手にコミュニケーションコストを与えずに意思疎通できるか、など。そもそもの起点となる欲求がない限り、道具は意味を持ちません。
深く考え、起点となる欲求から意味のある成果物や手法が生まれます。
呼吸を整えながら
先に挙げたうまくいったケースのポイントは言葉では簡単でも、実際に行うには労力がかかり、痛みや苦痛が伴うこともあるでしょう。
長い間、息を止めて苦痛に耐え続けると呼吸困難に陥ります。
ときには、一呼吸おいて、息を整えながらすすめていくのが良いでしょう。