メンバーシップ型雇用は過去の遺物か
メンバーシップ型の雇用といえば、どちらかというと古臭くネガティブなイメージで語られることが多いと思います。
ここ数年は欧米のジョブ型雇用が増えている傾向にありました。
メンバーシップ型のデメリットはもちろんあると考えていますが、一方で現在やこれからのことを考えると、馬鹿にできないなと思うようになりました。
これからの仕事は作業をこなすだけではないから
仕事の内容が明確で専門性の高いものであれば、ジョブ型雇用が適していることが多いでしょう。しかし、その専門性の高い仕事が継続的に求められる保証はあるでしょうか。
作業者の仕事はなくなる
技術の発達によって、私たちの働き方は急速に変化しました。
四肢の代わりとなるハードウェアが必要なブルーカラー職の代替は時間がかかりそうですが、ネコ型配膳ロボットのように最適な形を模索しながら、少しずつ社会に浸透していくでしょう。
一方で、ホワイトカラー職の人間から機械への代替は複雑なハードウェア制御が不要な分、ブルーカラー職より早いスピードで起きると予想できます。
「なんだか助かる便利なおっちゃんになりたい」の“人工知能が仕事を奪う”でも記載したとおり、プログラムを作成する、設計書を書くなどの業務もかたちを変えて人間の作業負担は大きく削減されるでしょう。
このときに「これが私の専門分野だから」と、自分の想定していた仕事の範疇にとらわれるとうまく最適化が出来ません。
私たちが取り組むべきことは、あくまで価値の提供であり、作業は手段でしかない認識が必要です。
腹落ちしているかどうかは必ずパフォーマンスに直結するから
納得していない、不満がある、こんなことをやりたいわけではない、意味がない、このような考えのもと行う仕事はコミュニケーションや成果物などに必ず悪い影響があります。
周りの士気を下げる言動や、自分勝手な要求、ただやっただけな意味のない成果物としてポロポロとこぼれ落ちます。
組織やチーム全体が同じ理念、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を持ち、価値観を合わせていかなければ高いパフォーマンスを発揮できません。
踏ん張りどころは発生する
「いけたらいく」「やれたらやる」ではなかなか物事はうまくいきませんし、周りも仕事の依頼ができなくなります。
例えば、新しい引き合いがあって、調査分析と提案までの期間が1週間しかない、プレゼンが◯◯日◯◯時ときまっていたら、必ずそこに合わせる必要があります。
目的を達成するには、少し踏ん張るタイミングというのは単純作業のお仕事でない限り発生するものです。
役割の境界線は曖昧だから
誰がどの役割の帽子をかぶるべきかは、状況によって変わります。
手段が目的になってしまわないためには、皆が必要とあらばどの役割の帽子でも被れる覚悟が必要です。
また、相手の仕事や立場を理解しなければなりません。
しかし、お気持ちだけでは不十分
とはいっても、気持ちだけではなんともなりません。
専門性を求められる仕事の中での経験や学びが地層のように重なり、それが要求される課題解決とマッチすることで価値を創ります。
急速な環境変化に合わせて組織はピボットする必要がありますし、汎用的な問題解決能力や専門知識が求められるケースもあります。
それぞれの道
中途採用は行わず新卒一括採用でメンバーシップ型に振り切ったSIerで高い営業利益率の有名な会社がありますが、そのような戦略をとる会社があることは理解できます。
もちろん、ジョブ型雇用の会社のことも。
ジョブ型、メンバーシップ型のそれぞれの良い部分を合わせた柔軟な組織を模索するというのも考えられるでしょう。
古くからの日本企業ならではのメンバーシップ型雇用を馬鹿にせず、今一度ここにヒントを見出すのも良いかもしれません。