以下では、Flask を使ったサーバー構成として、
- Flask(単独)
- Nginx + Flask
- uWSGI + Flask
の三つを比較し、それぞれ「何ができるのか」「どんな用途に向いているか」をまとめています。
1. Flask(単独)
概要
- Python のコマンド (
python app.py
) 等で起動する、Flask 標準の簡易サーバーをそのまま使う形。 - 開発用サーバーとして想定されており、本番運用(プロダクション)には推奨されません。
できること
- 開発やテスト : ローカル環境でアプリの動作確認を行う際には手軽で便利。
- 非常にシンプル : 追加の設定が不要なため、とにかく素早く起動できる。
制限 / 注意点
- パフォーマンスやスケーラビリティが低い : シングルスレッド・シングルプロセスが基本で、高い負荷には対応が難しい。
- セキュリティ面での懸念 : SSL 終端やリクエストのフィルタリング等を自前でカバーしづらい。
- 本番運用非推奨 : Flask 開発者自身も「開発・デバッグ向け」としており、負荷試験や大量アクセス対応は想定外。
2. Nginx + Flask
概要
-
Nginx をフロントエンドとして、Flask の簡易サーバーをバックエンドとして動かす構成。
- たとえば、
location / { proxy_pass http://127.0.0.1:5000; }
のようにリバースプロキシ設定を行い、Flask に接続する。
- たとえば、
できること
- 静的ファイルの配信を Nginx が担当 : 画像や CSS/JS を高速に配信可能。Flask の負荷を軽減できる。
- SSL/TLS 終端 : HTTPS の処理を Nginx が担当するので、Flask は HTTP (ローカル通信) だけで動く。
- 基本的なリバースプロキシ機能 : IP 制限、ロードバランシング(複数 Flask インスタンスを立ち上げる場合)などを Nginx で設定可能。
制限 / 注意点
- Flask の簡易サーバー自体は本番向けでない : 依然として Flask 側の並列処理能力は限定的。
- 高負荷時の対応力は限定的 : Nginx がプロキシとして踏ん張っても、Flask の開発サーバーは限界が来やすい。
- 本格的なプロダクション対応には uWSGI や Gunicorn などのアプリケーションサーバが望ましい : Nginx + Flask (dev server) はテストまたは限定的な運用向き。
3. uWSGI + Flask
概要
- uWSGI (Python 用の WSGI サーバ) と Flask アプリケーションを直接連携する構成。
- Nginx は使わない(もしくは別途導入しない)ため、uWSGI が直接クライアントからの接続を受け付けるケースもあり得る。
できること
- 並列処理・高負荷対応 : uWSGI はマルチプロセス/マルチスレッドをサポートし、Flask を本番運用するための性能向上が図れる。
- WSGI 標準 : Flask などの Python フレームワークとの相性が良い。
制限 / 注意点
- SSL/TLS や静的ファイル配信は uWSGI で設定する : Nginx に比べ設定が複雑になりがち。
- 負荷分散などの機能は限定的 : Nginx ほど豊富なリバースプロキシ機能がないため、大規模運用では物足りない場合がある。
- 通常は Nginx と組み合わせる : 安定した本番環境では、やはり Nginx + uWSGI + Flask の 3 つを組み合わせる構成が一般的。
まとめ
構成 | メリット | デメリット | 主な用途 |
---|---|---|---|
1. Flask (単独) | - 設定不要ですぐ起動 - 開発・テストに最適 |
- 高負荷に弱い - SSL や静的ファイル配信などの機能不足 |
ローカル開発/デバッグ |
2. Nginx + Flask | - 静的ファイル・SSL を Nginx に任せられる - リバースプロキシとして柔軟な設定可 |
- Flask 側のサーバは開発用 - 本格的な並列処理が苦手 |
比較的軽いサービスや試験運用 |
3. uWSGI + Flask | - uWSGI による並列処理性能の向上 - WSGI 規格に準拠 |
- SSL/静的ファイルなどを自力または uWSGI に任せる必要 - 負荷分散機能は限定的 |
小〜中規模のプロダクション運用 (ただし Nginx なし) |
本番運用でより高い安定性やパフォーマンスを求めるなら、実際には Nginx + uWSGI + Flask の 3 構成(プラス、場合によってはコンテナ技術やロードバランサなど)を使うのが王道です。
- Nginx : フロントエンドでリバースプロキシや静的ファイル、SSL/TLS を担当
- uWSGI : WSGI サーバとして Flask アプリを多数のリクエストに対応させる
- Flask : アプリケーションロジックを実装するフレームワーク
ただし、構成をシンプルにしたい場合や、トラフィックが少ない小規模サービスでは、本回答の比較表を目安に、どの程度の構成が必要か検討してみてください。