よかれと思って提案をしたのに、相手からなかなか返事が来ない。あるいは、こちらの想定と違う方向に進んでいく。
そういう経験は、周囲に働きかけることが増えるほど多くなります。
私が思う原因の一つは、提案を「質問」として投げてしまっていることです。
考えるコストの高い意思決定は放置される
提案するということは、イエスかノーかを相手側に判断させることを意味し、つまり相手にボールを渡しています。
受け取った側は、その提案が何を意味するのか、費用はどうなのか、何を確認すれば判断できるのかを一から考えることになります。そのコストが高いと判断は後回しになり、当初は「返事しよう」と思われていても、だんだんと意識は別の課題に流れていきます。
悪意があるわけではありません。ただ、受け取った側にとって「考えるコスト」が高いと、結論は先延ばしになりやすい、ということです。 1
ゴールを決めてしまう
別の方法があります。
提案を送る前に、ゴールを自分で決めてしまうことです。「この提案は通る」という前提でコミュニケーションを設計します。相手がイエスかノーかを判断するのではなく、こちらがあらかじめ結論を決めておき、必要な材料を揃えて、相手がイエスしか言わないような流れにしてしまいます。
たとえば、誰かをご飯に誘うとき、「いつか一緒に食事でもいきませんか」という誘い方と、「来週水曜の19時に予約しようと思っているんですが、都合どうですか」という誘い方は違います。後者は、相手が「食事に行くかどうか」を判断する余地をいくらか削り、「食事に行く前提」になっています。
過去に担当した新しいツールの導入検討も似た感じでした。「いずれ全員が使うようになるだろう」と思っていたので、「検討して判断する」という体裁を保ちつつ、基本的には「導入する」というゴールをこっそりと先に決めていました。
そこで「このツールを導入しましょう」と承認を求めるのではなく、「まず試してみましょう」という小さな提案にしました。実際に使ってもらい、メリットを体感してもらいます。承認を取る前に、すでにその方向に動いています。最終的には全体に広がりました。
これを意図的にやります。ゴールにたどり着くために、一番スムーズなやり取りは何かを逆算します。相手に判断させるものを、極力スコープを削っておきます。まるで相手がボールを持って判断したかのようにさせてあげる、というのがその感覚です。
ずるいが、必要な手法だ
これはずるいことを言っている自覚があります。
誠実にやる人ほど、相手の同意を取ってから動こうとします。きちんと提案して、相手の判断を待って、OKが出てから進める。それは正しいステップです。ただ、そのステップを守りながらも、相手がふむふむとしか言わないような材料を事前に揃えておくことは、誠実さと矛盾しません。最終的には同意を取ります。ただ、その同意がイエスにしかならないような流れを、こちらで先に設計しておく。
もちろん嘘をつかないことだけは重要でしょう。ソースのない事実で相手を説得しようとするのは、誘導ではなく欺きになります。
誘導という言葉はネガティブな響きを持つかもしれませんが、であっても私はこれを必要な手法だと思っています。言葉が気に入らなければ「根回し」でもいい。周りを巻き込んで何かを動かしたいと思うなら、提案を投げて待つだけでは思い通りに進まないことが多いです。
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何を隠そう、私が意思決定を止めてしまい配下のメンバーに迷惑をかけたことから、本記事は書いています。 ↩