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話題を設定しない1on1の設計と、それでも対話が生まれる理由

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1on1は、簡単にできるミーティング形式です。カレンダーに30分を抑えて、相手を招待すればいい。

ただし、目的を持たずに始めると効果がないどころか、悪影響になりえます。というのは、ほとんどのケースで1on1が「日常のコミュニケーションで解決しなかった問題を持ち込む場」になり、業務上のやりとりのセーフティネットとして機能し始めるからです。

これ自体は悪いことでもないかもしれませんが、そのうえで「悪影響になりうる」と書いたのは、こうした形式の1on1だとしても週次でやってさえいれば「マネージャーとしてやるべきことをやっている」ということになってしまうからです。つまり実施している両者の間の相互理解が深まるどころか、むしろ言葉にしづらい小さな違和感が蓄積することになります。

私自身、上長との1on1でこれを経験したり、一方で部下に経験させただろうこともあります。話したいことが頭の中にちらほら浮かんでも、上長が先に設定していた業務の話が優先され、自分の問題整理の時間になりませんでした。仕事は多少進んでも、上長に対する不信感のようなものが少しずつ溜まっていく。言葉にしづらい、小さな違和感です。

私が1on1でやりたいのは、信頼関係の構築と相互理解です。進捗確認は他のミーティングでできるため優先度が低く、1on1には持ち込みません。この前提を明確にした上で、どう設計し、どう運用するかを書きます。

ルールを明文化して、安心を先に渡す

1on1を始める前に、以下のルールをまとめた文書をメンバーに渡しています。テキストで渡すのは少し堅苦しいかもしれませんが、逆にそれがこの1on1に対するこちらの熱意を伝える補足になることを期待しています。

  • 仕事の進捗確認等は原則行わない
  • 話題はメンバーに決めてもらう
  • 仕事関連・雑談など、なんでもOK
  • こちらから話題があるときは事前に連絡する
  • Geminiの文字起こしを利用する
  • 1on1の内容を許可なく関係者・上長に報告しない

特に重要なのは、「進捗確認はしない。この時間はあなたのためのもの」ということです。自分が話しきれなかった話をする場ではなく、相手が(黙ることすらも含めて)好きに時間を使えばよい、ということを何度も伝えています。

「特に話すことはない」と言われたとき

そのため1on1が始まったら、アジェンダはこちらから設定せず、「今日は何を話しましょうか」とメンバーに振るところから始めます。どの1on1でも、一言一句たがわず、このフレーズからスタートします。

ただ相手がすぐにテーマを出してくれるケースは体感で20%ほどで、残りの80%は「なにか話すことあったかな...」とか「特に話すことはないです」という返答になります。これは自然な応答でしょう。念のためですが、テーマを設定しなかったことを叱責することはあってはなりません。

ところで、この「話すことがない」という返答は、人や状況によってまったく異なる意味を持ちます。

本当に充実していてポジティブな意味でのことなのか。さまざまなモヤモヤを抱えているものの言語化できていないのか。あるいはマネージャーに対する信頼感がまだ小さいために「コミュニケーションを取りたくない」という意思表明なのか。

そのため、その返答が来たときの次の問いをあらかじめ用意しておく必要があります。私が使っている問いはこれです。

「あなたが今、テーマを持っていないと答えたのは、ポジティブな意味ですか?それともネガティブな意味ですか?」

ネガティブな場合、よくあるのは課題や違和感が頭の中にぼんやりあるのだが整理できていないため話題として提供できない、というケースです。この場合は、その中の一つでもよいので一緒に言語化しながら進めます。問題の特定に至ることもあれば、その解決策を探すこともあります。結局よくわからなかったという結末を迎えることだってありますが、それでも十分に素晴らしい時間のはずです。

ポジティブな場合は、ここでいよいよマネージャー側から話題を提供してみます。避けるべきとした業務の話も、この状況でするのは悪くなさそうですし、とくにメンバーに話してよい程度にマネージャー目線の悩みを話すと、よい自己開示になると感じています。

この形式を続けて変わったこと

この進め方を定着させると、1on1として失敗するケースがなくなりました。話すテーマがなくてもとりあえず参加し、その中で感じたことを一緒に言語化すればよいということをメンバーも理解してくれます。テーマがない状況は続きつつも、「今日は何を話しましょうか」とかならず聞くので、ドキュメントまでは用意せずとも無意識的にテーマを探したり頭の中では設定してくれているケースも増えてきます。

加えて、実施する側の心理的な負担も減りました。最初の流れを決めているため、一定のフォーマットに沿って始められます。


1on1は簡単に始められるからこそ、始める前に「何のための時間か」を決めておくことが重要です。そしてその目的がゆえに、話題までは決めることができません。だからこそ相手と自由なコミュニケーションができるのであり、「話題がない」という状況さえも対話のきっかけに捉え直すことで、むしろ相互理解のチャンスになることを知ってもらえたら幸いです。

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