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「ジョブ型人事制度の教科書」を読んで

Last updated at Posted at 2022-05-28

はじめに

6月より入社させて頂く会社にて、ジョブ型制度関連の開発に携わることとなりましたので、概要を知るために本書を読みました。概要と感想を書き残したいと思います。

第1章 なぜジョブ型人事制度が求められるのか

  • 第3次ジョブ型人事制度ブームの到来
    • 日本における職務型人事制度は、成果主義ブーム、グローバル人事ブームと遷移し、現在ジョブ型人事制度ブームが到来している。
  • ジョブ型制度が求められる背景
    • 変化の激しい事業環境への対応
    • 同一労働賃金の養成
    • 高齢化社会の到来
    • 海外経験を持つ経営者の増加

第2章 ジョブ型制度の普及拡大の実態

  • 職能型制度とジョブ型制度の向き不向き
    • 職能型制度
      • 社員の能力を基軸とする。個人力で付加価値を提供するタイプのビジネスモデルを持つ企業に向いている。
    • ジョブ型制度
      • 仕事そのものを基軸とする。確立したビジネスプロセスをもとに組織力で事業を推進する企業に向いている。
  • 役割等級制度の限界から、ジョブ型制度である職務等級制度への検討が進んでいる。
  • 日本企業がジョブ型制度を導入する狙いとして、下記の3つが挙げられる。
    • 年功序列の打破
    • 適所適材の実現
    • スペシャリスト人材の活用
  • ジョブ型導入に二の足を踏む企業はかつて多かった。その理由は下記の3つである。
    • 企業文化の変容
    • 移動の柔軟性の阻害
    • 運用負荷の増大

第3章 日本の労働慣行とのギャップ

  • 日本企業
    • 終身雇用・新卒一括採用・ゼネラリスト型キャリアという労働慣行を持つ。
  • 海外企業
    • 実力主義・実績重視採用・スペシャリスト型キャリアという労働慣行になる。
  • ジョブ型制度では、類似した職種の異動が原則となる=スペシャリスト型キャリアが本流となる。
  • 一方で、ジョブ型においても、将来の経営幹部となる人材に対してはゼネラリスト型キャリアを育成していくことが重要である。
  • 日本企業でジョブ型制度を導入するうえでは、新卒一括採用やゼネラリスト育成とうまく折り合いをつける必要がある。
  • 下位等級では職能型、上位等級ではジョブ型へシフトしていくハイブリット型が日本企業にマッチするジョブ型制度の運用の仕方である。

第4章 ジョブ型制度における等級制度

  • ジョブ型制度における等級制度は一般に職務等級と呼ばれる。
    • 職務等級とは、個々のポストを職務価値に応じて序列化し、等級に格付けるというもの。
    • 一方で職能型制度では、職能の高低によって等級への格付けを決める職能等級が採用されている。
  • 職務価値には2つの視点がある。
    • 社内における重要性
    • 人材市場での希少性
  • 各ポストの職務価値を測定する行為を職務評価と呼ぶ。職務評価の方法は、直観的に職務の価値を判断する直観法と、職務の価値を構成する要素を分解し、要素ごとに基準に照らして職務価値を測定する要素比較法の2つが存在する。
  • 現在世の中に流布している職務評価の方法論は、ヘイ・ガイドチャート法が期限となっている。
  • ヘイ・ガイドチャート法は、ガイドチャート機能とプロファイル機能の2つから構成される。
  • 3つのガイドチャートの基本となる評価要素があり、その中で更に8つの評価軸が存在する。
    • 求められる知識と経験
      • 実務的・専門的・科学的ノウハウ
      • マネジリアル・ノウハウ
      • 対人関係のスキル
    • 問題解決
      • 思考環境
      • 思考の挑戦度
    • 達成責任
      • 行動の自由度
      • 職務規模
      • インパクト
  • ガイドチャートでは、上記3つの評価要素ごとに点数を算出する。
  • プロファイルは、ガイドチャートで算出した職務価値の点数=ジョブサイズの妥当性の検証するための機能である。
  • あるポストの職務評価を行うには、通常は下記の4段階のプロセスを経る。
    1. 職務情報の収集
    2. 職務記述書の作成
    3. 職務評価案の作成
    4. 職務評価の確定
  • 職務評価の留意点は下記となる。
    • ポストと人の未分離
    • 期待値と実態地の剥離
  • 職務等級を作り上げるためには、職務記述書が必要となる。職務記述書の項目は下記となる。
    1. 職務要件
      • 成果責任
    2. 能力要件
      • 必要な知識・経験
      • 必要なコンピテンシー
    3. 職務評価に向けた職務情報
      • 定量データ
      • 直面する困難なテーマ
      • 決定権限
      • 組織図
      • その他特記事項

第5章 ジョブ型制度における評価制度

  • ジョブ型制度における評価の意味合いは、「各ポストにおける職務の全う度合い」と「職務を遂行する上で必要な能力の開発度合い」を評価することにある。
    • 職務の全う度合い:目標管理による業績評価
    • 能力の開発度合い:行動評価(コンピテンシー評価)
      • 職能型制度における能力評価は保有能力を指す一方で、ジョブ型制度における能力評価は発揮能力を指す。
  • 評価運用をうまくすすめるための3つの要点は下記である。
    1. 業績評価における目標設定力の向上
    2. 行動特性評価における評価基準の具体化
    3. 評価者感の目線合わせ

第6章 ジョブ型制度における報酬制度

  • ジョブ型の報酬制度においては、等級制度の区分ごとに異なる報酬水準・報酬幅を設計することになる。
  • 報酬設計上の4つのポイントは下記である。
    1. 報酬水準の設定
    2. 貢献・職責に対する処遇
    3. 社外報酬水準との整合
    4. 社外報酬水準の目安
  • 職務給の報酬幅は下記の3つのタイプに分かれる。
    1. マルチレート型(重複型)
    2. マルチレート型(階差型)
    3. シングルレート型
  • 昇降給の設計において、まず報酬カーブのあり方を検討する必要がある。大きな論点は報酬カーブの屈折点を持つかどうかであり、単一カーブもしくは屈折カーブとなる。
  • ジョブ型制度においては、報酬は仕事に応じて支払われるべきであるという大方針があるため、住宅手当や家族手当など、属人的な手当はジョブ型制度導入に際しては見直しになることが多い。
  • 多くの企業は、全社業績と個人業績を賞与に反映している。

第7章 導入コミュニケーション

  • ジョブ型制度では、成果主義や人件費抑制といったネガティブな印象がつきやすいため、いかにポジティブな空気を作れるかが重要である。
  • 人事制度の導入をおこなう際には、全体と個別に対するコミュニケーションを考える必要がある。全体に対するコミュニケーションとは、社員全員に対する啓蒙活動であり、個別に対するコミュニケーションとは、ピンポイントに対象を絞り込んだ施策である。
    • 個別のコミュニケーションにおいては、「誰が」「どのような」コミュニケーションをおこなうかが重要である。
  • 導入・運用に当たり、社員への人事制度の開示レベルを決める必要がある。

第8章 ジョブ型制度における運用体制・プロセス

  • ジョブ型制度の運用体制・プロセスを定めるうえで、最も重要なポイントは、組織設計と人事異動及び人事処遇について、どこに権限をもたせ、どのようなプロセスにすれば、最も戦略的かつ公正性が保たれるかを決めていくことである。
  • ジョブ型人事制度を導入すると、人事部の役割・機能も変化する。
    • 「人事機能を効率的かつ円滑に回す役割」から「多様な社員を動機づけ、活性化させる役割」へ
  • 人事部のジョブ型制度ノウハウを維持し続けるための3つのポイントは下記である。
    1. 導入時のノウハウをドキュメント化しておく
    2. 人事部内に複数のノウハウ継承者を置いておく
    3. 定期的にノウハウを学ぶ機会を持つ

第9章 ジョブ型制度の導入事例

事例集のため省略

第10章 ジョブ型制度の導入における課題

  • 経営陣の意識改革の必要性
  • 日本的組織変更と人事異動の問題
  • 人事部門に求められる能力は、社内調整力から「組織設計の知見」「人材の見極め能力」への変化している。

感想

最近になってジョブ型という言葉を聞くことが増えてはきたものの、それがどういった働き方を指すのかはぼんやりとしかわかっていなかったため、本書をよんでその概要を理解することができました。高齢化等により人材が不足する日本において、これからのグローバル化に対応していくためには、仕事に対して人材を充てるジョブ型制度が不可欠で、導入する企業も今後増えていくと感じました。その一方で、本書内でも指摘されているように、日本には新卒一括採用など独自の採用制度が根付いているため、欧米のジョブ型制度をそのまま採用するのではなく、日本の働きかたにあった形でアレンジをしながら必要があると感じました。

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