カメラのブレをなくしたくて、85mm Whoopを作ったら全部載せになった話
はじまりは「映像のブレ、どうにかしたい」
小型ドローンで空撮すると、映像がプルプル震える。いわゆるジェロです。
モーターとプロペラの振動がフレームを伝ってカメラに届いて、映像を揺らす。
Gyroで補正をかけても高周波振動はどうしても消せない。
ということで、「振動対策を最優先に設計する」と決めて85mm Whoopを作りました。
この記事はそんな機体の話です。
ちなみに85mmサイズを選んだのは、狭いところでも飛ばせることと、軽く仕上げられること。
ダクト付きなので多少ぶつけても平気だし、小さいぶん重量にも余裕が生まれます。
バッテリー、どこに積む?
Whoopに空撮カメラを積むときのよくある構成は、こうです。
- バッテリー → フレームに直付け(重いものは機体の中心へ)
- カメラ → ダンパーで浮かせる
カメラは付属品なので、バッテリーは機体側に付けるのが常です。
しかしダンパーで浮かせた部分が軽すぎると、モーターの細かい振動に対して一緒に細かく揺れてしまうんです。軽いものは小さな力でも簡単に動く。カメラだけをちょこんと浮かせる構成は、実は振動を受け流しきれていない。だからジェロが残る。
じゃあどうするか。浮かせる側を重くすればいい。
結論: バッテリーをカメラと一緒にダンパーの上へ
この機体では、ダンパーの上のプレートに、HDカメラとバッテリーをまとめて載せました。機体で一番重い部類のバッテリーを「あえて」浮いている側に積む。そんな戦略です。
理屈はシンプルで、重いものは細かい振動では動かないから。ダンパーの上の質量が増えるほど、高い周波数の振動に対してプレート全体が「どっしり」して、揺れが伝わらなくなります。
この機体のモーターはEX1103(KV11000)、ペラは2.3インチ。高回転型なので、ホバー中のモーター由来の振動はおおむね600Hz以上というかなり高い帯域にいます。細かく速い振動ほど、重くしたプレートには伝わりにくい。つまりこの機体の構成は、防振にとって相性のいい組み合わせになるはず。


防振はあくまで映像のため、制御は制御で別。役割がきれいに切り分けられています。
注意点をひとつだけ。この構成は細かい振動には強い一方、急な舵や突風のような「ゆっくり大きい」入力ではプレートがゆらっと揺れることがあります。たくさん飛ばして過渡応答を確認する必要がありますね。
せっかく撮るなら、安心して飛ばせる機体がいい
さて、ブレ対策の目処は立ちました。でも、もうひとつ気になることがあります。
撮影しながら飛ばすって、地味に難しい。
いつものアクロ飛行なら機体の挙動だけ見ていればいいけれど、何かを撮ろうとすると意識が分散します。「もう少し右かな」「この高さでいいかな」と考えているうちに、機体が思ったより流れていたり、じわじわ高度が下がっていたり。
しかも、撮りたいものが予定どおり動いてくれるとは限りません。急に止まったり、逆方向に行ったり。そのたびに慌てて操縦するのは、なかなかしんどい。
だったら、機体側が勝手に安定していてくれればいいのでは。
その発想でセンサーを積んでいったら、いつのまにか全部載せになっていました。
載せたセンサーと、それぞれの役割
| センサー | 役割 |
|---|---|
| ジャイロ・加速度計 | 姿勢制御(FC内蔵) |
| GPS + コンパス + 気圧計 | 位置・方位・高度(1モジュールに集約) |
| レーザー距離計 + 光学フロー | 地面までの距離と、センチ単位の動き(2in1でわずか1.5g) |
合計7種類。ふつうの同サイズWhoopはジャイロと加速度計だけで飛んでいるので、かなり欲張りです。

これでできるようになること:
- Altitude Hold: 高度をキープ。よそ見していても勝手に下がらない
- Position Hold: その場にとどまる。撮りたいものが急に止まっても慌てなくていい
- GPS Rescue: 電波が切れたら自動で帰ってくる。お守りみたいなもの
- 光学フロー: 地面の模様を見て、低空でのじわじわした流れを抑える
85mmに詰め込むための工夫
とはいえ、小さい機体に全部載せるのはパズルでした。ポイントは3つ。
その1: AIO FCでUARTを節約。 受信機(ExpressLRS)がFC内蔵なので、通信ポートを1本も食いません。空いたポートを光学フロー・VTX制御・GPSに割り振れました。
その2: 軽いセンサーを選ぶ。 距離計と光学フローの2in1センサーで1.5g。GPS・コンパス・気圧計も1モジュールにまとまったものを選択。
その3: 処理能力に余裕のあるFC。 STM32G474は旧世代より演算に余裕があって、7センサー+OSDを同時に回してもCPU負荷は6割弱に収まっています。
おまけ: 身軽にもなれる
センサー類は取り外せる構成にしてあります。HDカメラ・GPS・距離センサーなどを外した軽量形態なら100gを切るので、航空法上の無人航空機にあたらない、いわゆるU99として気軽に飛ばすこともできます。
まとめ: 安心して飛ばせる機体がほしかった
ふりかえると、この機体はぜんぶ「気持ちよく撮りたい」から始まっていました。
- 映像のブレをなくしたい → バッテリーをダンパーの上へ
- 撮ることに気を取られても大丈夫にしたい → 安心のためにセンサー全部載せ
欲張った結果に見えるかもしれませんが、どれも同じところから出てきた選択です。
Betaflightの航法機能はいままさに進化中で、光学フローを使ったGPSなし位置キープなんかも視野に入ってきています。センサーを全部載せてあるこの機体は、ファームが進化した瞬間にそのまま恩恵を受けられる。そういう「先回り」も含めて、育てがいのある一機になりました。
次回予告: この機体、完成までにけっこうハマりました。電源を入れるとセンサーが消える怪現象、謎の「LOAD」表示、うんともすんとも言わない光学フローセンサー……。解決までの道のりは別記事で書きます。







