はじめに
生成AIに相談すると、短時間でそれらしい答えを返してくれます。
仕事の進め方に迷ったときも、複数の選択肢を説明したうえで、
今回はAの方法がおすすめです
と、結論まで出してくれます。
すぐに方向性を決められるため、とても便利です。
しかし、AIを使っているうちに、少し気になることが増えてきました。
- AIへの指示がうまく書けない
- 会話を続けるほど話が広がっていく
- 自信のある回答を見ると正しいように感じる
- AIの結論をそのまま自分の判断にしてしまう
これらは別々の問題に見えます。
しかし、共通しているのは、自分の目的や判断基準が曖昧なまま、AIに答えを求めていることなのかもしれません。
AIへの指示が曖昧なのは、自分の考えが曖昧だからかもしれない
例えば、業務で行っている作業を効率化したいとします。
AIに、次のように相談します。
この作業を効率化する方法を考えてください。
この指示でも、AIはさまざまな改善案を出してくれます。
- 作業を自動化する
- テンプレートを作る
- チェックリストを用意する
- 新しいツールを導入する
- 作業の担当を分ける
どれも間違った提案ではありません。
しかし、自分が求めていたのは、作業全体の大きな改善ではなく、
毎回同じ内容を確認する手間だけを減らしたい
ということだったかもしれません。
この目的が整理できていなければ、AIは不足している部分を推測して回答します。
その結果を見てから、
そこまで大きな変更は考えていなかった
新しいツールを導入したいわけではなかった
今の運用を変えずに改善したかった
と気づくことがあります。
AIが意図を理解できなかったというより、自分自身が何を変えたいのかを具体的にできていなかったとも考えられます。
そこで、次のように目的を整理します。
現在の運用や使用ツールは変えずに、
毎回同じ内容を確認する手間を減らしたいです。
大きな仕組みの変更ではなく、
すぐに試せる小さな改善案を3つ出してください。
重要なのは、プロンプトを長くしたことではありません。
- 何を解決したいのか
- 何は変えたくないのか
- どのくらいの規模で改善したいのか
を、自分の中で整理できたことです。
AIへの指示を考えることは、AIを動かすためだけではなく、自分の考えの曖昧な部分を見つける作業でもあるのだと思います。
AIとの会話が長くなるほど、最初の目的を見失う
AIの回答を読むと、新しい疑問が生まれます。
追加で質問すると、さらに別の方法や関連する課題が出てきます。
最初は、
毎回の確認作業を少し減らしたい
という相談だったはずが、会話を続けているうちに、
- 業務フロー全体を見直す
- 新しい管理ツールを導入する
- チームの役割を変更する
- 手順書をすべて作り直す
といった話に広がることがあります。
提案そのものは役立つかもしれません。
しかし、話が広がるほど、今解決したかった問題から離れてしまいます。
AIは関連する情報を次々に出してくれるため、相談を続けること自体が目的になりやすいのだと思います。
会話が長くなったときは、一度立ち止まって、次のように整理してもらうと目的へ戻りやすくなります。
ここまでの会話を、次の3点で整理してください。
- 最初に解決したかったこと
- 現時点で決まっていること
- 今回は対応しなくてよいこと
AIとの会話では、情報を増やすことだけでなく、不要な情報を切り離すことも必要です。
AIの自信が、自分の判断に影響していないか
AIは、ときどき断定的な表現で回答します。
この方法が最適です
これが最も効率的です
この対応で問題ありません
このように言い切られると、内容を十分に確認していなくても、正しいように感じます。
反対に、
一般的には、この方法が考えられます
状況によって判断が異なります
と書かれていると、少し頼りなく感じることがあります。
しかし、AIの回答の口調と、内容の正確さは同じではありません。
AIが自信を持って答えていても、次のような情報をすべて把握しているとは限りません。
- 実際の業務環境
- 組織独自のルール
- 関係者との調整
- 過去の経緯
- 今回だけの例外
不足している情報を推測し、その前提で答えている可能性もあります。
そのため、自信のある回答が返ってきたときほど、次のように確認する必要があります。
この結論は、どのような前提で出していますか?
不足している情報と、
条件によって結論が変わる部分を教えてください。
これにより、AIの結論をそのまま採用するのではなく、自分の状況にも当てはまるのかを考えられます。
AIには答えより「比較するための軸」を作ってもらう
AIに、次のように質問したとします。
AとBでは、どちらがよいですか?
AIはそれぞれの特徴を説明し、どちらかをおすすめしてくれます。
しかし、その結論は、AIが置いた前提や重視した基準によって変わります。
AIは作業時間の短さを重視しているかもしれません。
一方で、実際の業務では、次のような点が重要になる場合もあります。
- 間違えた場合に元へ戻せるか
- 他の人でも同じ対応ができるか
- 関係者への確認が必要か
- 今後も継続して使えるか
- 作業後にどのような影響があるか
そこで、AIに結論を出してもらうのではなく、まず比較するための軸を出してもらいます。
AとBを比較するときに、
確認すべき観点を挙げてください。
結論は出さず、それぞれのメリット・デメリットと、
判断前に確認すべき情報を整理してください。
例えば、次のような比較軸が考えられます。
| 比較軸 | 確認する内容 |
|---|---|
| 作業時間 | 完了までにどれくらいかかるか |
| 難しさ | 必要な知識や権限は何か |
| 安全性 | 失敗した場合の影響はどの程度か |
| 復旧のしやすさ | 元の状態に戻せるか |
| 運用のしやすさ | 今後も継続して使えるか |
| 引き継ぎやすさ | 他の人でも同じ対応ができるか |
| 関係者への影響 | 事前確認や連絡が必要か |
比較軸が見えることで、
今回は速さを重視するのか
安全性を重視するのか
一度だけの対応なのか
今後も繰り返す作業なのか
を自分で考えられます。
AIに答えを決めてもらうより、自分が判断するための材料を整理してもらう方が、AIの回答に流されにくくなると感じます。
AIに任せる部分と、自分で持つ部分
AIには、次のようなことを任せられます。
- 選択肢を出してもらう
- メリットとデメリットを整理してもらう
- 見落としている観点を挙げてもらう
- 不足している情報を確認してもらう
- 長くなった会話を整理してもらう
一方で、自分で持つ必要があるのは、次の部分です。
- 何を解決したいのか
- 何を大切にするのか
- どこまでを今回の対象にするのか
- 最終的にどれを選ぶのか
- その判断に責任を持てるか
AIは答えを作ることはできます。
しかし、何を正解とするかは、置かれている状況によって異なります。
だからこそ、AIに判断をすべて任せるのではなく、自分の判断を支える役割として使うことが大切なのだと思います。
おわりに
AIへの指示が曖昧になるときは、自分の考えがまだ整理できていないのかもしれません。
会話が長くなって目的を見失うときは、何を解決したかったのかへ戻る必要があります。
AIが自信を持って答えているときも、その口調だけで正しいと判断するべきではありません。
そして、AIには最初から答えを求めるのではなく、
何を基準に比較すればよいか
判断するために、どの情報が足りないか
を考えてもらう。
AIを使ううえで重要なのは、良い答えを出してもらうことだけではありません。
自分の目的と判断基準を持ったまま、AIと会話を続けること。
それが、AIの答えに流されず、自分で判断するために必要なのではないでしょうか。