(1)はじめに
応用情報技術者試験・高度情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の答案、特に記述式・論述式の午後試験に自分が何を書いたか知りたいと思いませんか。記述式試験の解答は、時間が余ればメモできますが、論述式(小論文)の試験は時間的に不可能です。
そこで、情報処理推進機構(IPA)に対して保有個人情報開示請求を使って、自分の答案を取り寄せてみました。手続方法は、IPAのサイト https://www.ipa.go.jp/privacy/seikyu.html に書かれていますが、実際にやったことを書いておきます。
ちなみに、試験対策参考書の小論文解答例は、著者が何日もかけて考え、PCで推敲を重ねて書いたもので、ある意味「完璧な」答案です。これに対して、試験本番は2時間で手書きするものですから、完璧な答案は望むべくもありませんし、完璧でなくても合格できるのです。自分の見直しや、社内勉強会の参考資料として、小論文の現物を活用するのもいいでしょう。参考書を執筆している私が言うのもなんですが…
(2)いつ請求すればいいか
- 春期試験(4月)なら、6月の合格発表後~翌年4月中旬まで
- 秋期試験(10月)なら、12月の合格発表後~翌年10月上旬まで
まず、合格発表までは採点処理や事務処理が終わっていませんので、開示されない可能性があります。
また、答案用紙の保存期間は試験実施日から1年とされていますので、早めにしましょう。1年経過すると、物理的には未廃棄でも、事務手続上は「廃棄済み」扱いで不開示になるかもしれません。
(3)開示請求
「保有個人情報開示請求書」の作成
IPAサイトの「保有個人情報開示請求書」をダウンロードして作成します。PDFファイルを印刷して手書きでも、RTFファイルにWordで入力して印刷でもかまいません。
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開示を請求する保有個人情報
「情報処理技術者試験の下記受験番号の答案(午前Ⅰ・午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱ)に係る本人の個人情報 令和●年度春期 ST123-4567/令和●年度秋期 PM987-6543」のように書きます。
受験票がなければ、情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験のマイページにログインして、受験番号を確認しましょう。 -
求める開示の実施方法等
ふつうは、「イ 写しの送付を希望する。」でよいでしょう。
IPAの窓口に行きたい人は、アを選択してください。 -
手数料の支払い方法
どれかにチェックを付けてください。
手数料は試験1回ごとに300円です。つまり、春期試験と秋期試験の2回分を請求するなら、600円がかかります。また、午後試験の答案だけ開示請求するような場合でも、手数料は同じです。 -
本人確認等
同封する本人確認書類(のコピー)にチェックを付けてください。
本人確認書類とは別に、住民票の写しも必要です。
必要書類の準備と送付
以下の書類を、IPAへ送付してください。
〒113-6591
東京都文京区本駒込2-28-8 文京グリーンコートセンターオフィス
独立行政法人情報処理推進機構 個人情報保護グループ
- 作成した「保有個人情報開示請求書」
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住民票の写し(200~400円程度)
市役所で発行してください。自治体によっては、マイナンバーカードを使って、コンビニのマルチコピー機で発行できます。 -
本人確認書類
運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなどのうち、一つをコピーしてください。 -
定額小為替(手数料を定額小為替で払う場合のみ)
郵便局で購入してください。詳しくは、ゆうちょ銀行のサイトへ。
手数料を銀行振込で払う場合は、書類送付と同時に、開示請求書に書かれている銀行口座へ振り込んでください。
(4)通知書の到着
送付から2~3週間程度で、通知書が簡易書留で届きます。日数がかかりますが、気長に待ちましょう。手数料300円だと、郵送料(84円+350円)だけで赤字なのですが、いいのでしょうか。
開示決定通知書
開示請求が認められると「保有個人情報開示決定通知書」が届きます。なお、午後試験の答案については、合計点以外の採点結果(問題、設問ごとの正否、点数など)は不開示となります。
不開示決定通知書
開示請求が認められなかったときは、「保有個人情報不開示決定通知書」が届きます。不開示となったときでも、支払った手数料の返金はありません。
2021年秋のプロジェクトマネージャ試験、2022年春のシステムアーキテクト試験の答案は、廃棄済みで不開示でした。両方とも合格しているので、小論文の解答を見たかったのですが、1年早く請求するべきでした。
(5)開示の実施方法等の申出
申出書の作成
「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」を、記入例に従って記入します。この紙は開示決定通知書に同封されていますが、上記のIPAのサイトからもダウンロードできます。
- 保有個人情報開示決定通知書の番号等
開示決定通知書の文書番号と日付を転記します。 - 求める開示の実施方法
開示決定通知書の「開示請求に係る保有個人情報の名称等」を転記します。
「実施の方法」は、「複写したものの交付」の「全部」を選びます。 - 「写しの送付」の希望の有無
「有」を選び、「同封する郵便切手等の額」に、「開示決定通知書」の最後に書かれている「送付に要する費用(見込み額)」を転記します。この金額分の返信用切手を用意します。
※通知書には、普通郵便の金額だけ書かれていますが、IPA負担で簡易書留で送られてきます。申し訳ないので、350円切手も同封したほうがよいでしょう。
350円切手を同封しても、返却されるとの情報をいただきました。
申出書と返信用切手の送付
開示決定通知書を受け取ってから30日以内に、IPAへ申出書に返信用切手を同封して送付します。宛先は、開示請求のときと同じです。
申出の期限が過ぎると、開示請求の手続からやり直しになります。
(6)答案の到着
申出書の送付から2週間ほどで、簡易書留で答案のカラーコピーが届きました。答案用紙の現物は、試験会場でしか見ることがないので、写真に撮って見ると新鮮な感じがします。正方形・長方形の黒塗りは、不開示とされている設問ごとの採点結果です(角丸の黒塗りは、私が受験番号と生年月日を隠したものです)。小論文を読み直すと、こんなことを書いたのかと思い出したりします。ここに写っている2022年秋のデータベーススペシャリスト試験と、2023年春のITサービスマネージャ試験は、両方とも合格しました。
(7)費用まとめ
試験1~2回分の開示で、1,000~2,000円程度となります。
- 開示手数料 300円(試験2回分なら600円)
- 定額小為替の手数料(1枚につき200円)、又は銀行振込手数料(場合による)
- 住民票 200~400円程度
- 送付用切手84円×2
- 返信用切手120~210円(受け取る答案の枚数や重さによる)
- 封筒代、コピー代