準委任契約は「時間の提供」が対価
準委任契約(民法656条)は委任の規定を準用する準委任として、業務への従事を対価とする契約だ。請負(受託開発)と違い、成果物の完成責任は負わない。クライアントの指示のもとで一定時間稼働することへの報酬が発生する。
報酬計算のベースが「時間」になるため、月何時間稼働するかという前提条件が報酬に直結する。この部分の精算方式を確認せずに引き受けると、実際の収入が見込みとずれる。
精算方式1:中央割(中抜き方式)
月の稼働時間が「精算幅」の範囲内であれば月額固定という方式。
例: 月額50万円、精算幅 140〜180時間
| 実稼働 | 支払額 |
|---|---|
| 130時間 | 50万円(幅を下回っても固定) |
| 160時間 | 50万円 |
| 190時間 | 50万円(超過分はカウントされない) |
特徴:
- 精算幅内であれば安定した収入が確保できる
- 精算幅を超えた稼働は追加報酬ゼロ(超過分が実質タダになる)
- 精算幅を下回っても減額されない
繁忙で超過しやすい案件に中央割で入ると、超過分の労働が報酬に反映されない。「忙しかった割に普通月と同じ」という状況が起きる。
精算方式2:上下割(超過・不足精算方式)
標準稼働時間との差分を時間単価で精算する方式。
例: 月額50万円、標準160時間、時間単価3,000円/時
| 実稼働 | 計算 | 支払額 |
|---|---|---|
| 170時間 | +10時間 × 3,000円 | 53万円 |
| 160時間 | 差分ゼロ | 50万円 |
| 150時間 | -10時間 × 3,000円 | 47万円 |
特徴:
- 稼働が多い月は正直に報酬増
- 稼働が少ない月は減額が発生する
- 月ごとの収入が変動する
フリーランスで複数案件を掛け持ちしている場合、別の案件の繁忙で準委任の稼働が削られた月は、上下割では減額になる。
月ごとの稼働時間が変動する要因
稼働時間は以下の要因で毎月変わる。契約時の「月160時間想定」が実際には成立しない月が必ず出てくる。
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 祝日 | 5月・1月・9月などは営業日が少ない |
| 有給休暇 | 取得した場合の扱いは契約による |
| 別案件の繁忙 | 受託納期重なりで準委任時間が削られる |
| 体調不良・予期せぬ欠勤 | 上下割では減額要因になる |
特に「祝日は稼働時間にカウントするか否か」は見落としやすい。カウントしない場合、祝日の多い月は通常稼働しても標準に届かず、上下割なら自動的に減額になる。
契約前確認チェックリスト
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 精算方式 | 中央割 / 上下割 / その他 |
| 標準稼働時間 | 月何時間が基準か |
| 精算幅(中央割の場合) | 上下何時間が許容範囲か |
| 時間単価(上下割の場合) | 超過・不足1時間あたりいくらか |
| 祝日の扱い | 稼働時間カウントに含むか否か |
| 有給・休暇の扱い | 取得時の稼働時間カウント |
| 精算サイクル | 月次 / その他 |
| 上限時間の設定 | 過労防止の上限があるか |
これを「だいたい月160時間で」と口頭確認だけで済ませると、契約書に書かれた条件が想定と乖離していても気づかないまま引き受けることになる。
まとめ
準委任の単価交渉と同じくらい、精算方式の確認は重要だ。中央割か上下割かで、忙しい月・暇な月の収入への影響がまったく異なる。また月の稼働時間は祝日・有給・別案件の影響で必ず変動するため、精算幅・時間単価・祝日の扱いを事前に確認することが損を防ぐ最も確実な方法だと思ってる。