はじめに
Part4-1ではSTPの概要と2つの目的について見てきました。2つの目的とは以下のようなものでしたね!
- ブロードキャストストームを防ぐために、ループを構成するリンクを論理的に切断する
- リンクで障害が発生した際に、論理的に切断したリンクを再度接続状態に戻す
今回は、2つ目の目的を達成するための機能について見ていきたいと思います。
DPとRPのおさらい
Part4-1で触れたように、STPでは各ポートにDPやRPといった役割をつけるのでした。そして、RPはルートスイッチから送信されたBPDUを受信し、DPから転送するのでしたね!
さて、2つ目の目的を達成するためには、この動作が重要な要素となります。なぜなら、BPDUが送られてくるということは、ルートスイッチと接続していることが保証されるからです。そして、ネットワーク上に存在する各スイッチがルートスイッチと接続されていると保証されれば、そのネットワークでは通信障害が発生しません。逆に言えば、スイッチがBPDUを受け取らなくなったり、複数のポートからBPDU送られてきたりする場合には、何かしらのトポロジー変化、通信障害が発生していると考えることができます。
このことを踏まえて、STPの通信障害を自動復旧する機能について見ていきましょう!
論理削除したリンクの扱い
これまで深くは考えてこなかった論理削除したリンクの扱いについて解説します。実は論理削除したリンクにはBPDUが流れています。つまり、ルートスイッチと繋がっていることが意識されているということです。このことによって、NWトポロジーの状態が変わった場合に、論理削除していたリンクを再度接続することが可能となります。
例えば、L2SW1とL2SW3の間のリンクが断線しても、経路を迂回できるようになるわけですね!
このようにBPDUが通るか通らないかによってトポロジーに異常がないかを判断し、異常や障害を見つけた場合は論理削除したリンクを自動復旧させるというような形となります。これで2つ目の目的も達成しました!
論理削除したリンクのポートの扱い
では、論理削除したリンクを接続したポートの役割について見ていきましょう。先ほどの図で言えばL2SW2のfa0/2とL2SW4のfa0/1のところですね!これらのポートにはどのような役割が与えられるでしょうか?
まずL2SW2のfa0/2についてですが、こちらはすでに解説済みの内容です。L2SW2のfa0/2からはルートスイッチで送信されたBPDUを転送するので、このポートは指定ポート(DP)になります。
つぎにL2SW4のfa0/1についてですが、こちらについてはどうでしょうか?BPDUを受信するポートなどでルートポート(RP)になりそうですが、転送するDPはないですし、他のポートと同じ役割にしてしまうと論理削除したことが不明確になってしまいます。そのためこのポートにはDPやRPでない役割がつくことになり、これを非指定ポート(NDP)と言います。NDPの機能はBPDUを受信することだけです。BPDU以外のデータフレームが遅れらてきた場合には、そのフレームを破棄します。これにより、リンクの論理削除を実現しています。
以上で、全てのポートに役割を設定できました!
LAN内冗長化を試してみる!
STPについて理解が進んだところで、実際にLAN構成を組んで動作を確認してみます!
以下のようなネットワーク構成を組んでみました。
赤文字のリンクやポートはvlan1に所属、青文字のリンクやポートはvlan2に所属していることを示しています。また、L2SW1とL2SW2の間のリンクはトランクリンクに設定してあります。このような状況下でSTPはどのようにはたらくでしょうか?
まずはトランクリンクの部分を論理構成に変えてみましょう。以下のようになりますね!
トランクリンクは、全てのvlanに所属しているので仮想的には上の図のように表されます。さらにvlan1とvlan2でネットワークを分割して図にしてみます。
これらの図からvlan1とvlan2の双方においてスイッチ間のループが存在することがわかります。そのため両方のvlanでSTPが働くことになります。つまり各vlanでリンクが一つ論理削除されることになります。今回はvlan1のルートスイッチをL2SW1、vlan2のルートスイッチをL2SW2に設定したため、論理削除されたリンクは以下のようになりました。
つまり、両方のvlanでトランクリンクを用いて通信が行われるということです。図をまとめると以下のようになります。
上の図のようにSTPが動作することがわかりました!これにより、もしトランクリンクが断線した場合でも、各vlanがL2SW3またはL2SE4を通るルートに通信経路を変更し、通信障害の発生を防ぐことができますね!
まとめ
今回解説したことをまとめると以下のようになります。
- 論理削除したリンクにもBPDUが流れることによって、NWトポロジーの変更を監視できる
- ループを切断するポートは非指定ポート(NDP)の役割を持つ
- vlanが絡んだ構成でもSTPは正常に動作する