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はじめに

心理的安全性のある組織が、結果を出すために何が必要なのか?

を考えたところ、創発戦略 が浸透している事だと考えました。

ホンダって、最初は、草刈り機から始まったのをご存じですか?今回は、ハーレーダビッドソンのいかついバイク市場へ、「スーパーカブ」が受け入れられた成功事例から、創発戦略を紐解き、ホンダ「ワイガヤ」メルカリ「なんでも会」サイバーエージェント「アイディアソン」を確認して行きましょう。

トップの信念

  • 人間は金と信用、両方欲しい。

  • 人間はどこか抜けたところがないと面白くない。

  • 人間に好き嫌いのある人は真の指導者になれない。

  • 人間にとって大事なことは学歴などではなく、他人から愛され協力してもらえるような徳を積むことだ。

  • 開発というものは企業のためにやるんじゃない。世の中に貢献するという気持ちがなければいけない。
    本田宗一郎​​

新しいアイデアや創造的な解決策は、計画されたプロセスだけではなく、現場の経験や偶発的な発見から生まれることがあります。これは、トップの信念 によるものです。市場の動向、技術の進歩、消費者の嗜好の変化など、外部環境は常に変動しています。創発戦略は、これらの変化に柔軟に対応し、機会を捉えるために必要です。風通しの良い組織文化を促進し、上層部と現場の間のコミュニケーションを強化することで、組織全体の協力と連携を促進します。従業員が自らのアイデアを提案し、実行に移すことが奨励されるため、従業員のモチベーションとエンゲージメントが向上します。組織が固定的な計画に縛られずに、現場のフィードバックや新たな情報を取り入れながら戦略を進化させることができます。

そこで、今回は、創発戦略を紐解き、具体的な実践例をご紹介させて頂こうと思います。

目次

  1. はじめに
  2. 創発戦略とは
  3. 創発戦略の特徴
  4. 創発戦略の形成過程
  5. 創発戦略のメリット
  6. 創発戦略のデメリット
  7. 創発戦略を成功させるポイント
  8. ホンダから学ぶ創発戦略の成功事例
  9. ワイガヤ
  10. ワイガヤの特徴
  11. ワイガヤの効果
  12. ホンダにおけるワイガヤ
  13. ワイガヤの成功事例
  14. ワイガヤを成功させるポイント
  15. ホンダ以外の企業での導入事例
  16. まとめ

創発戦略とは

創発戦略(Emergent Strategy)は、組織やビジネスの戦略が計画されたものだけでなく、実際の経験や行動、外部環境の変化に応じて自然に形成されるという考え方です。この概念は、ヘンリー・ミンツバーグ(Henry Mintzberg)によって提唱され、計画的戦略(Deliberate Strategy)と対比されます。

創発戦略とは、事前に計画されたものではなく、現場の社員や顧客とのやり取りの中で、自然発生的に生まれてくる戦略のことです。

従来の戦略策定とは異なり、経営者が指示を出し、上から下へと戦略を伝えていくのではなく、現場の自主性と創造性を活かして戦略を創り上げていく点が特徴です。

創発戦略の特徴

自然発生的
創発戦略は、組織内外の予期せぬ出来事や変化に対する反応として自然に形成されます。
適応性
組織が外部環境の変化に柔軟に対応し、新たな機会を捉える能力を持つことを示します。
進化的
創発戦略は、組織が経験を積み重ねることで進化し、改善されていくプロセスを経ます。
未計画
事前に計画された戦略ではなく、組織の行動や意思決定の結果として現れる戦略です。

創発戦略の形成過程

組織内の実験
従業員が新しいアイデアを試し、その結果が組織全体の戦略に影響を与えることがあります。
外部環境の変化
市場の動向、技術の進歩、法規制の変更など、外部環境の変化が新たな戦略を生み出すきっかけになることがあります。
組織文化
組織の文化や価値観が、従業員の行動や意思決定に影響を与え、結果として新たな戦略が生まれることがあります。
偶発的な出来事
予期せぬ出来事や偶然の機会が、新たな戦略の方向性を決定することがあります。

創発戦略は、組織が環境の変化に対して柔軟に対応し、持続的な競争優位を確立するために重要な役割を果たします。計画された戦略と組み合わせることで組織はより効果的に市場で活動することができます。

創発戦略が定着するためには、インターナルマーケティングのサイクルが回っていて、結果を出す、サービスプロフィットチェーンが確立出来ている事が基盤となります。

インターナルマーケティングのサイクル

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サービスプロフィットチェーンの確立

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創発戦略のメリット

変化への迅速な対応
予期せぬ環境変化にも、迅速かつ柔軟に対応することができます。
社員のモチベーション向上
現場の社員一人ひとりが主体的に戦略策定に関わることで、モチベーションが向上します。
イノベーションの創出
現場の社員から自由な発想が生まれ、イノベーションが創出しやすくなります。
組織全体の活性化
組織全体が活性化し、創造性豊かな組織へと成長することができます。
実践的
実際の経験に基づいて形成されるため、理論よりも実践的な戦略になります。

創発戦略のデメリット

方向性が定まらない
事前に計画されていないため、方向性が定まらず、一貫性に欠ける戦略になってしまう可能性があります。
意思決定が遅れる
関係者間の調整に時間がかかり、意思決定が遅れてしまう可能性があります。
評価が難しい
定量的な指標で評価することが難しく、効果測定が難しい場合があります。
リーダーの資質が求められる
現場の社員や顧客の意見をまとめ、方向性を示すリーダーシップを発揮する必要があります。

創発戦略を成功させるポイント

経営者のビジョンを明確にする
経営者は、自社の目指す方向性を明確に示し、社員と共有する必要があります。
現場の社員に権限を与える
現場の社員が自由にアイデアを出し、行動できる環境を作る必要があります。
情報共有を徹底する
関係者間で情報を共有し、円滑なコミュニケーションを図る必要があります。
失敗を恐れない
失敗を恐れずにチャレンジし、そこから学ぶことが重要です。
長期的な視点を持つ
短期的な利益だけでなく、長期的な視点を持って戦略を立案する必要があります。
双方向のコミュニケーション
経営者と現場の社員の間で、双方向のコミュニケーションが円滑に行われることが重要です。

これらの要素が相互に作用し、状況に応じて柔軟に変化する戦略が創発されていくのです。

ホンダから学ぶ創発戦略の成功事例

草刈り機のエンジンを応用してバイクを開発。

独創的なバイクや自動車を開発し、世界的な企業へと成長しました。社員一人ひとりが自由にアイデアを出し、試行錯誤できる環境を整備することで、数多くの革新的な製品を生み出してきました。

ホンダの原付は、「創発的戦略」に昇華され、アメリカのバイク市場で驚くべき成功を収めました。1959年、日本が敗戦から立ち直り高度経済成長期に突入してしばらく経った頃、アメリカのバイク市場のシェアは約半分がイギリス企業によって占められていました。しかし、それから1966年までの数年間で、ホンダはイギリス企業を追い落とし、一社単独でアメリカバイク市場の60%超のシェアを獲得しました。

ホンダの成功の裏には「創発的戦略」があります。創発的戦略は、本来の経営計画や意図した戦略を実行している途中で起きた問題や出来事に対処する中で形成される戦略を指します。

ホンダは、アメリカ市場で大型バイクに対抗する形で新規参入しましたが、大型のハーレーに比べるとホンダのバイクは低価格で性能や外見で劣っていました。しかし、現地の従業員が移動用に小型の原付バイク「スーパーカブ」を持ち込み、休日になると日頃のストレスを解消する目的で西海岸を走るようになりました。それを見た現地のアメリカ人たちから「そのバイク自分も欲しい」と声をかけられ、小型バイクにもニーズがあることを突き止めました。 ホンダは小型バイクの販売を進め、小売りチェーン店から取り扱いの申し出が出てきて売り上げを伸ばし、アメリカの大型バイク市場から撤退し、小型車に焦点を当てた戦略を実行しました。この成功の背後には、現地社員と事業責任者間での適切なコミュニケーションと、現場の意見を積極的に受け入れる風通しの良い組織体制がありました。

ホンダの原付が「創発的戦略」という経営理論に昇華されるまでのストーリーは、経営戦略の柔軟性と現場からのフィードバックの重要性を示す興味深い事例です。

この市場での成功は、当初の経営計画にはなかったもので、現場での試行錯誤と機会の発見によって生まれたものでした。ホンダは、現場の声を聞き、新たな市場ニッチを見つけ、それに応じて戦略を修正しました。このプロセスは、創発的戦略の典型例として、後に経営学の理論に取り入れられました。

創発的戦略は、計画された戦略が現場の実情に合わせて進化し、新たな戦略が形成されるプロセスを指します。この戦略は、上司と部下のコミュニケーションが大切であり、現場社員が予期せぬ問題に対処するためには、上司と部下の円滑なコミュニケーションが必要です。

ホンダの事例は、創発的戦略がイノベーションを生み出し、競合との差別化を図る上で重要であることを示しています。ホンダは、小型バイク市場でのシェア獲得と市場そのものの拡大のために、次々と合理的な施策を打ち出し、大成功を収めました。

この成功は、現場の意見が積極的に受け入れられる風通しの良い組織体制があったことが大きな要因です。ホンダは 「ワイガヤ」 と呼ばれる制度を導入し、役職や年齢、性別に関係なく自由に意見を交換する風土を作り、創発的戦略を実行しやすい環境を整えました。

この事例から、組織が市場の変化に柔軟に対応し、現場からのフィードバックを活かして戦略を修正することの重要性が理解できます。創発的戦略は、計画された戦略と組み合わせることで、組織はより効果的に市場で活動することができるのです。

ワイガヤ

「ワイガヤ」は、主に本田技研工業株式会社で培われてきた、自由で活発な意見交換を通して、新たなアイデアや価値を生み出すことを目的としたコミュニケーション手法です。

ワイガヤの特徴

自由な発言

参加者全員が、肩書や役職にとらわれず、自由に発言することができます。

多様な視点

年齢、性別、経験、職種などが異なるメンバーが参加することで、多様な視点を取り入れることができます。

活発な議論

意見交換を活発化させるために、ファシリテーターが議論を促進したり、様々なツールを活用したりします。

フラットな関係

上下関係に囚われず、フラットな関係の中で意見交換を行うことができます。

ワイガヤの効果

創造性の向上

自由な発想と活発な議論から、新たなアイデアや価値を生み出すことができます。

問題解決能力の向上

多様な視点から問題を検討することで、より効果的な解決策を見つけることができます。

組織活性化

従業員のエンゲージメントを高め、組織全体の活性化につながります。

風通しの良い組織文化

意見が言いやすい風通しの良い組織文化を醸成することができます。

ホンダにおけるワイガヤ

ホンダでは、1980年代から「ワイガヤ」と呼ばれる社内コミュニケーション手法を積極的に取り入れ、組織文化の活性化とイノベーション創出に繋げてきました。

ワイガヤミーティング

定期的に開催される、テーマを決めた自由な意見交換会

アイデアコンテスト

社員から革新的なアイデアを募集するコンテスト

社内交流イベント

部門や職種を超えた社員が交流できるイベント

これらの取り組みを通じて、ホンダは数々の革新的な製品やサービスを生み出してきました。

ワイガヤの成功事例

スーパーカブの開発

当時としては画期的なオートバイ「スーパーカブ」は、ワイガヤミーティングを通じて生まれたアイデアから開発されました。

ASIMOの開発

人型ロボット「ASIMO」も、ワイガヤミーティングを通じて生まれたアイデアから開発されました。

ワイガヤを成功させるポイント

経営層のコミットメント

経営層がワイガヤの重要性を理解し、積極的に推進することが重要です。

参加者の意識

参加者が積極的に意見を発言し、議論に参加することが重要です。

ファシリテーターの役割

ファシリテーターが議論を円滑に進め、参加者全員が発言できるようにすることが重要です。

継続的な改善

ワイガヤの効果を測定し、必要に応じて改善していくことが重要です。

ワイガヤは、組織の活性化とイノベーション創出に効果的な手法ですが、円滑な運営には経営層のコミットメント、参加者の意識、ファシリテーターの役割、継続的な改善が重要となります。

ホンダ以外の企業での導入事例

近年、「ワイガヤ」の考え方に共感し、類似の制度を導入する企業も増えています。

株式会社メルカリ

「メルカリカルチャー」と呼ばれる社内コミュニケーション制度の中で、「なんでも会」と呼ばれる自由な意見交換の場を設けている。

株式会社CyberAgent

「アイデアソン」と呼ばれる社内イベントを開催し、社員から自由にアイデアを募集している。

「ワイガヤ」は、ホンダ独自の制度ですが、その自由闊達な議論のスタイルは、多くの企業にとって参考になる点が多いと言えるでしょう。組織の活性化やイノベーション創出を目指す企業にとって、有効な制度と言えるでしょう。

まとめ

創発戦略は、変化の激しい現代社会において、企業が生き残るために重要な戦略です。デメリットもありますが、メリットを活かすことで、大きな成果を上げることができます。

創発戦略を成功させるためには、経営者のリーダーシップ、現場の社員の自主性、情報共有、失敗への寛容さ、長期的な視点などが重要となります。

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